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貴方と君と、ときどきうさぎ

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一応報告ね」
俺は紀田君ににっこりと笑って見せた。彼は信じられないと言った顔で俺を凝視している。間抜け面だなあって笑ってやろうとした瞬間怖いぐらい真剣な眼差しになった。
「遊びのつもりなら帝人から身を引いて下さい。今すぐに」
帝人を傷つけてみろ。そんな事は絶対に許さないと、その目は語っている。
「遊びじゃないさ」
「あいつは、あいつは…臨也さんが興味を持つようなやつじゃない、
ただ、特殊な体質なだけで普通の高校生なんですよ、冗談にしても笑えないです」
「普通の高校生、ね」
俺の横を一人二人と、来良の制服に身を包んだ生徒達が通り始めた。
「わかんないかなあ、冗談じゃないって言ってるじゃないか」
「いい加減にして下さい…俺、本気で怒りますよ」
「もう怒ってるくせに」
紀田君は口を開き何か言いかけたがその口からは何も出てはこなかった。
「君に俺の何がわかるの」
「わかりません。わかりたくもないです」
「別れないよ、逃がしてなんてあげない。だって帝人君は俺を選んだんだから」
「臨也さん!!!」
紀田君の怒声に周囲の注目を一斉に浴びる。こちらを伺って内緒話を始める女子二人組。
「喧嘩?」と男子高校生の声も耳に届いた。
「そんな怖い顔で睨んだって駄目だよ。それじゃ、学校頑張ってね」
俺は踵を返し紀田君に背を向けて歩き出す。再び彼の口から俺の名前を呼ばれる事は
なかった。


***


帝人君と恋人同士になってから早一月。手を出しても許される関係なのに
まだ早過ぎるかと懸念していたらあっという間に一月過ぎた。
嘘だろ。早すぎる。一月とか何。いや、しかし何も進展がなかったわけじゃない。
二人で買い物に出かけたり、休日にはデートだってした。
手を繋いで、キスだってしてる。頬かでこ止まりだけど。
最初の頃は初々しく腰に手を回しただけでビクリと体を震わせ緊張しまくりで
俺の背に手を回してきたくせに最近では慣れてきたのか帝人君から
積極的にハグやキスをしてくるようになってきていた。
二日前仕事に没頭していて事務所で待ちぼうけを食らっていた
帝人君は「臨也さん」と後ろから不意打ちハグに頬にキス。
「早く構って下さい」と、言いずらそうに上目遣いで言われ
勢い余って唇を奪ってしまったのは一度や二度ではない。
せっかくの努力も水の泡だ。そのくせ眠りこけた彼をベッドに運んだら、
うっすらと瞳を開けて嬉しそうに「臨也さんの匂いがして落ち着きます」とか
犯すぞ天然。

昼間の約束通り帝人君は日が暮れる頃事務所にやってきた。二人で夕飯を済まして
雑談をしながら今はソファーに座って寛ぎテレビを見ていた。勿論二人きりで。
うん、幸せだ。隣に帝人君がいるだけですごい幸せ。
こればかりは慣らされる事じゃない。何度見ても何度でも言える。
やっぱり帝人君は可愛い。ソファーの上で体育座りしてクッションを
胸に抱きかかえている。足元にはうさぎのスリッパが揃えて置いてあった。
このまま二人で寛いでしばらくしたら帝人君の事だ。
終電までには帰ると言いだすだろう。悔しい事に明日も平日だ。


「ねえ帝人君」
「はい?」
「俺達今日で一月経つよね」
「はい、そうですね。早いですよね、本当に」
「そろそろいいと思ってるんだけど」
沈黙。
「…………………は、はい」
何を?と聞いてくるなんて野暮だ。
「俺は割と淡白な方なんだけどさ、やっぱ男だしこうして一緒にいれば
ムラッときちゃうわけだよね」
「…む、むむむ…!!」
帝人君は一気に赤面する。ぼふとクッションに顔を埋めてしまった。
いちいち可愛い反応するよな本当に。
「今すぐ押し倒したくなるなんて数え切れないほどあったんだけど
無理強いはしたくないし、やるからには同意を得てからと」
「……我慢、してました、よね?」
ちらりとこちらを見て、帝人君はぼそぼそと小さな声で呟いた。
「相当。今まで襲わなかっただけ感謝して欲しい位」
「べ、別にそれは襲ってくれても構わなかったんですけど」
「は?」
「え?」
がばりと顔を上げた帝人君と目が合う。やや間があって
自分で言った言葉の意味を理解したのだろう。
ただでさえ赤く染まっていた顔はもの凄いスピードで耳から首筋まで真っ赤になった。
「え、えっと!!そ、そのあの、違くて!えっとでもあのっ僕もその、色々…」
「不満だったんだ」
「キス、したいですよ…僕だって」
「キスだけ?」
「……二度も、言わせないで下さい」
俺は帝人君の肩を掴み、ソファーに押し倒した。彼の顔の横にある
少し小さな掌を握り指を絡めると応えるように握り返してきた。
「いい、んだ」
「臨也、さん…」
逸らされてしまう視線。
「何で顔逸らしちゃうのかなあ、俺を見てよ」
「……さ、察して下さい」
知っている。俺の顔を直視できない程
君の心臓は張り裂けてしまいそうに早鐘のごとくドキドキ鳴っているに違いない。
ちらりと青い瞳が再び俺を見た。
「あ、あの、やっぱり僕が、下、なんですよね」
「え、何。帝人君上がいいの。無理、却下。俺は君を抱きたい。
もっとも帝人君が力付くで俺を組み敷く事ができるなら観念するかもしれないけど」
「無理だってわかってるくせに!その気なんてないくせに!」
反攻的な態度だが帝人君の声は震えていて。あ、これはまずい。
「帝人君、愛してる」
彼の体がビクンと震えた。真っ赤な頬に、青い瞳が揺れている。
やばい、これはやばい。もっと、もっと触れたい。
気持ちばかりが進んでいく。


「だからさ、抱かれろよ」


小さく頷いたのを合図に彼の首筋に唇を当てる。
跡を残すのを嫌がるのだが今日ばかりは聞いてあげられない。
「…ッ」
ちゅ、と吸い上げてキスの跡を残す。俺のものだという印を。俺の、帝人君。
顔を離すと視線が合って、微笑む。帝人君はぎゅ、と瞳を瞑ってしまい
だんまりのままだ。俺はそんな彼をひょい、と抱きかかえた。いわゆるお姫様抱っこだ。
「え!?あ、あのちょっと待─」
「あ、こら暴れない暴れない」
「お、降ろして下さい!は、恥かしいです嫌です!!」
足をバタつかせて抵抗していたが階段に足を掛けて上り始めた所で
危ないと観念したのか俺の首に腕を回してきた。
すぐ近くにある体温。彼に触れられているだけで興奮を覚えて速足になっていく。
「恐ろしい程軽いよね」
「い、臨也さんて見た目によらず力ありますよね」
「伊達に修羅場を潜り抜けていないよ」
自室の前まで来ると帝人君の腕にぎゅ、と力が篭った。
「初めてなんだからベッドの方がいいでしょ」
「……!!!」
声にならない声に魚のように口をぱくぱくさせている。
「緊張してるんだ、大丈夫。優しくするよ」
「あ、明日!明日平日なんです学校とかもあって、そのだからえっと」
「くだらない事考えるなよ」
「大切な事です!」
今すぐその唇に噛みついて塞いでしまいたい。
「はいはい、じゃあ明日は学校お休みね」
「なん…!」
「無理だと思うよ、多分」



俺が理性を抑えていられるのも今の内。