二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

貴方と君と、ときどきうさぎ

INDEX|12ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

君は俺の恋人




時計の針が十二時半を回った頃事務所で仕事を処理していた俺の携帯は
愛しの恋人からの着信音を鳴らした。
「もしもし」
『用件はわかっていますよね』
第一声は低すぎる冷たさを感じさせる声だった。
彼なりに努めて冷静な声を出しているんだろう。
「嬉しいなあ、帝人君から電話をくれるなんて。お昼休みでしょう今」
帝人君は電話の向こうで小さく息をついた。
『臨也さん…』
呆れた様なそんな声だ。
『物凄い剣幕で今すぐ別れろあんな奴と!!、と怒られました』
「くく、予想通りの行動だねえ彼」
くるりくるりと右手で持っていたペンを回す。親機の側に置いてあるメモ帳の横に
ペンを置いてはミカド、とひらがなで名前を書いてみる。波江さんはこちらを気にも
せずに自分のデスクで書類に目を通していた。
「で、認めたんだ帝人君」
『ええ。だって事実ですし、僕は臨也さんが好きですから』
好きですから。なんて良い響きなんだろう。
「なんて言ったの?」
『臨也さんとは別れないよって言いました。騙されるなって散々言われて
正臣ってば大きな声で話すものだから休み時間クラスメイトに恋人ができたのか!!って質問攻めにされて大変だったんですから。て、はぐらかさないで下さい』
「だって紀田君は君の親友だろう。きちんと伝えなくちゃね」
『もう』
「なんだか嬉しそうだね」
『…!』
「帝人君の事ならお見通し」
息の詰まる音。嬉しいのかな、顔は見えなくても心の中の君は笑っている。
現実だってきっとそうだ。そうに決まってる。だって、俺と話しているんだ。
嬉しくないわけない。
『…その、まあえっと、臨也さんが僕の事を恋人だって自慢してくれたんだって
勝手に思っちゃって嬉しくなってしまったんです、すいません』
ドクン、と胸が高鳴った。可愛い事を言ってくれる。
『臨也さん?』
「謝らないでよ。自慢したのは本当。ていうか宣戦布告」
『え?』
「帝人君は俺のものだから手を出さないでねって意味も込めて」
紀田君には沙樹がいるじゃないか。正直幼馴染みで親友ポジションな彼が羨ましい。
彼は俺の知らない帝人君をたくさん知っている。どうしたってその時間の差を
埋める事は敵わないが面白くない。「これから思い出をたくさん残していけば
いいんですよ」と君は照れくさそうに笑うから
それもそうだと満足してしまう俺って。恋の力は偉大だ。
『臨也さんだって、ぼ、僕の…』
「なに、聞こえないよ?」
『な、何笑っているんですか』
「ほーんと可愛いよね帝人君って」
『可愛いくないです!』
きっと顔赤いんだろうなあ、電話越しだけじゃ物足りないよ。
『あの、あのですね。話し変えますけど今日はそっちに行ってもいいですか?』
「大歓迎だよ」
『よかったです』
ほっと、安堵した声に口元が緩む。
「夕飯一緒に食べようね。何がいいかな」
『はい。あ、でも今日は委員会があるので少し遅くなりますがそれでもよければ、
一緒に』
「構わないよ」
電話の向こう側から予鈴のチャイムが聞こえた。
名残惜しいがもう時間切れ。
『あ、いけない。それではまた』
「うん、またね」
『後でメールします』
「ああ、待ってる」
携帯を切ると俺は波江さんに声を掛けた。
「と、いうことで波江さん今日は五時には上がっていいよ。その書類俺に回して。
全部やるから」
「気持ち悪いからそのにやけた顔止めてくれる」
「恋ってさ素晴らしいよね!なんとなくわかった気がするよ。波江さんの弟君を想う
気持ち」
「私の誠二への愛と貴方の愛を一緒にしないでくれる。私の方が比べ物にならない程
誠二を愛しているんだから」
波江さんはデスクに飾られている弟の写真にうっとりしている。
「そういえば、あのうさぎのケージまだこの事務所に置いてあるけどどうするの?
あれ以来見かけないけど」
「可愛がっているよ、とても大切にね」
「うさぎに同情するわ。飽きもせずに貴方なんかに飼われて」
「頭が良くて好奇心旺盛のうさぎのくせにとろくさくてジャンプが下手で、
見てて飽きないんだ」
運動神経が悪いのはうさぎになっても同じらしい。
極力あの姿にはしないようには努めてはいるけれど。
うさぎになってしまったらなかなか恋人同士としての時間過ごせないしね。
キスができないっていうのはかなりの痛手なんだけど。
彼女は右手を伸ばし書類を向ける。俺はそれを受け取ると早々に内容を読み始め
ペンを動かした。
「竜ヶ峰帝人みたいなうさぎね、それ」
「だから帝人君なんだよ、名前もさ」

ああ、早く会いたいな。夜まで待ちきれない。


***


時は紀田正臣が来良学園に登校する道のりまで遡る。


「やあおはよう紀田君。今日は温かくていい天気だね」
「…なんか用っすか」
登下校、まだ人も生徒も誰もいない住宅街を一人歩いている紀田君に俺は声を掛けた。
「ねえ帝人君元気?」
「は?」
「君の大親友竜ヶ峰帝人君さ」
目付きが変わった。警戒されているのか一定の距離を取られ鋭い眼差しで睨んでくる。
「……いい加減にしてくれませんか臨也さん。帝人が臨也さんに憧れのような感情を
もっているのは知ってます、帝人が臨也さんと時々会ってるの、俺も見かけて…何度も
近づくな、関わるなって言ってもただ笑ってわかっているよの一点張り。あいつ俺の前じゃ気を使って臨也さんの話しはしませんけど」
「酷いなあ。俺は好意を持って帝人君と接していたのに。それに帝人君の感情は憧れじゃないよ。彼は俺が好きなんだ。俺も帝人君を愛してる。俺達は相思相愛」
「寝言は寝てから言ったっ方がいいですよ」
「紀田君は知っているんでしょ?帝人君の秘密」
「……なんの事です」
応えるまでにやや間があった。
「可愛いよね、うさぎってさ」
ほうら顔色が変わった。血の気が引いている。
「青い瞳のうさぎがね、俺の所にやってきたんだ。なんと!
そのうさぎは言葉が話せるんだよ!魔法使いの使者みたいに」
「なんで…!!!」
「言っとくけど調べた訳じゃないよ。帝人君が俺に教えてくれたんだ。
彼自身が。なんだったら本人に聞いてみるといい」
「嘘だ、そんなあいつは…今までだって一度も…!」
振り絞るように出された声に心が興味を覚えていく。
予想通りすぎる反応で少々物足りなさに退屈はするけどさ。
「誰にも話した事なんてなかった?君以外に」
「…っ」
「帝人君の家系って獣人族の中じゃそれなりの名家なんだね。
ぶっちゃけ俺の身辺を嗅ぎまわっている奴がいるんだけどさ
まあ帝人君の血縁者の可能性が高いから泳がせているけど」
「何が言いたいんですか」
「中には記憶を消されちゃった人間もいるみたいだね、帝人君と関わったせいでさ」
紀田君はただ、黙って俺の話しに耳を傾けていた。
「その中で君は唯一秘密を握り彼の側に親友として居る事を許されている。
面白くないなあ」
最後は語尾が少し不機嫌な感情を含んでいた。
紀田君は僅かに両目を見開いて俺を見ている。
「俺だって人間さ。いくら親友で恋愛感情がないとはいえ恋人に特別な人間がいるというのは妬けるよね」
「は…?」
「それでも彼は告白してきたんだ。俺の事が好きですって。
あ、そうそう。帝人君と付き合う事になったんだ。そう!恋人同士ってやつ。