【ギルエリ】「目覚めた時に」
医者はあたりのうめき声と、騒ぎに負けじと看護婦に指示をだす。
「何をしてるんです!!早く声をかけて!!絶対に意識を失くさせないで!」
ギルベルトは、震える体を押さえつけてしっかりとエリザベータの手を握り直した。
「エリザ・・・・起きてくれ・・・・・。俺を見てくれ・・・。目を開けてくれ・・!」
閉じられていたエリザベータの瞳が微かに開く。
「そうだ・・・・起きてくれ・・・。起きて・・・俺と話してくれ・・・。」
またゆっくりと閉じられようとする翠の瞳。
ああ・・・!開けてくれ!!お願いだ・・・・・!!
俺を見てくれ・・・!!意識を手放さないでくれ・・・・!
「・・エリザベータ・・・・・愛してる・・・・・。だから・・・目を開けてくれ・・・。」
閉じそうになっていた瞳が開いた。
何も見てはいない。
また閉じられる瞳。
「・・お前と話したいんだ・・・。起きてくれ・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「起きて、目を開けてくれ・・・・・。なあ・・・・・。お願いだ・・・・・。」
彼女の手をぎゅっと握りしめる。
「ギル・・・・・・眠いわ・・・・・。」
エリザベータの意識が戻った。
ギルベルトは一瞬、泣きそうになった。
必死であふれそうな涙をこらえる。
「今はまだ寝るな・・・・・俺様が話してんだろ?」
今はまだエリザベータは眠っている。
事故の後の処理はほぼ終わった。
幸い、誰ひとり、死者は出なかった。
何十人という怪我人も、全員手術や処置を終えて、病室で静かに安静にしていた。
ハンガリーの上司は、事件の処理にめまぐるしく当たっていてエリザベータの病室にはいまだ現れなかった。
ギルベルトは、小さな病室で眠り続けるエリザベータを見つめる。
いつもより少し幼く見える顔は、少女の様だ。
点滴のチューブがつながれた腕はむき出して寒そうだ。
静かにそっと自分の上着をかけてやる。
目が覚めたら、傷が増えたと嘆くだろうか?
いや、今さら、こいつはそんな事は気にしないだろう。
俺が気にしねえんだし・・・・・。
なあ・・・エリザ・・・・・。お前が怪我するたびに、俺の小鳥の様な心臓は、ひっくりかえるくらいショックを受けるんだぜ・・・・・。もう戦争じゃあるめえし・・・・・。
驚かせてくれるなよ・・・・・・。
今ごろになって、目から涙があふれてきた。
・・・無事でよかった・・・・・・。
泣き声がしないように、ギルベルトは静かに泣いた。
なぁ・・・エリザ・・・・・・。お前が・・・目覚めたら・・・。さっき言ってた言葉を聞かせてくれよ・・・。
お前は俺が信じないって笑うけど・・・・・。
正直、俺は自信がねえんだ・・・・・。
お前に関しては、俺はいつだって臆病者だ。
目が覚めたら・・・・・・何度でも聞かせてくれ・・・・・・。
俺はこのままいるからよ・・・・。
お前のそばに・・・・。
お前が目覚める、その時に。
「目覚めた時に」終
作品名:【ギルエリ】「目覚めた時に」 作家名:まこ