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【ギルエリ】「目覚めた時に」

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「・・・・話したいんでしょ?なら聞きなさいよ・・。」

ぐっとつまったようにギルベルトが押し黙った。

眠たい目をなんとかこじ開けてみると、すぐ目の前にギルベルトの顔があった。
すねたように、顔も赤くなっている。

「・・・嫉妬なんかしなくてもよかったのに・・・・・。」
「・・あん頃・・・・お前・・・・俺なんかごろつきでも見るみたいに見てたじゃねえか!」
「・・・・それはそうよ・・・・・。だって、ごろつきよりも悪辣なことしてたじゃない。」
「・・・・・お前って・・・時々・・・・・ひでえよな・・・。」

目を閉じる。

「いいじゃない・・・・今は・・・」



目を開けていられない・・・・・・。
眠い・・・・。
ああ・・・いつまで話しているの・・・・?

お願い・・・・寝かせて・・・・。

「おい・・・・まだ寝るな・・・。」
「・・・・どうして・・・・・寝かせて・・・。」
「俺様がまだ満足してねえんだよ。だから寝るな・・・・。」
「・・・ひどい・・・・・わがままなんだから・・・・。」

眠たさはピークに達していて、ギルが耳元でうるさくしなければすぐにでも眠れるのに・・。

「なあ・・・・。お前、これからどうすんだ?」
「・・・どうって・・・?」

 ああ・・・意識が飛びそうになる・・・・・。


「だから・・・・・これからもあの無謀な要求を聞いていくつもりか?俺の家は、つい最近、政府への暴動になった・・・・・・。押さえこめるのも、時間の問題だろうな・・・。
「・・・・・反政府のデモは何度も起きてる・・・わ・・・。いつかは・・・ほころびが・・・でてきて・・・・・・・・・・。」
「エリザベータ、起きてくれ。お願いだ。まだ寝るな。」
「・・・・・ねえ・・・どうして起きてなきゃだめなの・・・。後で相手してあげるから・・・・寝かせて・・・。」
「・・・・エリザベータ・・・・・・俺と・・話すのが嫌か・・・?」
「・・・・だから・・・・どうしてそういう話になるの?今は・・もうわかってるでしょう?」
「・・・・・なら・・・お願いだ・・・・・今は起きて・・・・俺と話してくれ・・・。」

泣きそうなギルベルトの声・・・・。
いったいどうしたの?
何か哀しい事があるの?

でも眠いのよ・・・・・どうしようもないくらい・・・・。

「泣かないでよ・・・・・・言ったでしょ・・・・何度も。もう一回言ってあげないとだめなの?」
「ああ・・・・だめだ・・・・・・。何度でも言ってくれ・・・・・・!でないと俺は・・・・・!」

ああ、可愛いギル・・・・。
愛しいギル・・・・・・・。
まるで子供みたいね・・・・。

どうしても、私の気持ちを信じようとしないんだから・・・・・。

「・・・じゃあ・・・・もう一回・・・だけ・・・言って・・・あげる・・・。」
「・・・・・ああ・・・・聞かせてくれ・・・・。」




    「縫合、終了!」
    「処置、終わりました!!」

突然、声がとどろいた。
ギルベルトは、はっとして、隣にいる医者と看護婦を見た。

辺りには、無数のベッドと沢山の怪我人。
戦場のようなありさまの病院のロビーにギルベルトはいた。

「エリザベータ・・・・・!よく頑張ったな・・・・。」

ベッドの上の彼女にギルベルトは声をかける・・・・。

「・・・・言って・・・あげる・・・・から・・・。」


エリザベータの意識は、もう途切れる寸前だった。

  ねえ・・・・泣かないで・・・ギル・・・・。
  ずっと泣いてきたんでしょう・・・・?
  騎士団の時も・・・・・。プロイセン公国になった時も・・・。
  私があの人と一緒だった時も・・・・・。
  ずっとずっと一人で・・・・・。

「エリザベータ!!しっかりしろ!!もう大丈夫だ!」

怒鳴っているギルベルトの声が遠くで聞こえる。

  眠い・・・・・・。
  ねえ・・・・・目が覚めてからでいい・・・?
  そしたら何度でも言ってあげる・・・・。

  そうね・・・・あんたの国の言葉で・・・・・・。
  なんどでも言ってあげるから・・・・・。
  だから・・・・おやすみ・・・・・なさ・・い・・・・・。

「エリザベータ!!」

  そう・・・・・目覚め・・た時・・・に・・・。


エリザベータの意識が途切れた。


「エリザ・・・!!先生っ!」

ギルベルトは真っ青になって、医者を見る。

ふうっとおおきく肩で息をした医者はうなずいた。

「もう大丈夫ですよ。意識が途中で無くなってたら危なかった。あなたが彼女を呼んでいたおかげです。」
「・・・もう・・・大丈夫なんですか?!こいつは・・!!」
「ええ・・・手術も終わりました。もう、あとは・・・・・経過を見ながら・・・。」
「先生・・!!2番のベッドの患者さん、出血止まりません!」
「わかった!今いく!」
「先生・・・・ありがとう・・・!本当に・・・ありがとう!!」
「・・・私は医者ですから・・・・・!もし、このモニターから警告音が出たら、すぐに呼んでください。もう大丈夫と思いますが・・・!では・・・!」

医者はさっさっと次の患者目指していってしまった。

ギルベルトは、あふれる涙で滲んだ目をあわててぬぐう。

包帯だらけのエリザベータを見つめる。


ハンガリーの工場での大爆発事故。

西側には、きっと隠されているのだろう・・・・・・・。
事故を知らされてから、すぐにここ飛んでへ来た。

間に会ってよかった・・・・・・。
まだ意識のあるエリザベータに会えた・・・・・。


後にこの事故は事故でなく、イヴァンの国民による、視察にきたイヴァンのうちの上司をねらったものと判明した。
それでも、その上司はエリザベータがかばったおかげで、かすり傷一つ負わなかった。
なのに手ひどい捨て台詞を残して、その上司はこの陰惨な現場をあとに国へと帰っていった。


怪我人であふれかえる病院で、エリザベータを見つけた。
ギルベルトの心に、突き刺さるような衝撃と、苦しみ。
こんな彼女を見ることになるなんて・・!!
先日、ゆっくりと二人で過ごしたばかりなのに・・・・・!


エリザベータはぼんやりと意識はあるものの、非常に危険な状態だった・・・・・・。
痛みは全く感じていないらしい。

「エリザ!!エリザベータ!!」
怒鳴るギルベルトに、隣の患者の処置が終わった医者が声をかけた。

「彼女は非常に危険です!このまま意識を失ったらまずい。知り合いならずっと声をかけて、とにかく意識を保たせてください!!」

何十人という怪我人がこの病院へ運ばれたのだろう?
辺りはまるで戦場の野戦病院の様子を呈していた。

倒れている人々でごった返すロビーでは、あちこちで、医師たちが処置をしている。
中には手術をしている医者もいる。

エリザベータが焦点の合わない目を閉じた。

「いけない!!早く!!声をかけて!!」

ギルベルトは、エリザベータの右手を握ると、怒鳴るようにして、声をかける。

「エリザ!エリザベータ!寝るな、起きろ!起きてくれ・・・・!!」

エリザベータの手術が始まった。
「脈を見て!」
「はい!!」