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THW小説③ ~Twilight Zone~

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〜Twilight Zone〜


夕闇。
夕闇が僅かに見える。
青とオレンジが二層に分かれた,幻想的な空。
向こうにチカチカ光るのは,一番星だろうか。
しかし,目の前に広がるのは,瓦礫の山だ。
夕闇の空は好きなのに,ほとんど見えない。

・・・あれ?
・・・なんで,空が見えない?

・・・。
・・・そうか。俺が倒れているからか。

ようやく,自分がうつぶせに倒れていることに気が付く。
目線が,低かった。

瓦礫の上に停まっていたカラスが,そんな俺をあざけるように,
「カァ〜」と一声鳴いて,飛び立っていく。

・・・カラスにも,笑われてやがる。

どうにか,夕闇の空が見たくて,仰向けになろうとするが,
身体は,指一本たりとも言う事を聞いてくれそうにない。

ヒタヒタと,押し寄せる,夜の闇。
辺りは,しん と静まり返り,物音ひとつ聞こえない。
耳がダメになっているのかもしれない,と思うほどの,静寂。

・・・何で,俺,こうなってるんだっけ。
・・・それも,どうでもいいな。
このまま,死ぬのかな。
それも,いいかもしれない。

あきらめにも似た気持ちで,ゆっくりと目を閉じる。

夕闇,見たかったな。

そんなことを思いながら,意識の闇へと沈んでいく時。

かすかに,誰かの足音が,聞こえた気が,した。


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パチパチパチ・・・と,焚き木がはぜる音が聞こえる。
そして,むわんとした,湿った草の匂いが鼻をついた。
急に訪れた感覚に吃驚して,目をバチンと開ける。
「・・・お?気が付いたか?」
やけに,のんびりとした男の声がする。
「・・・。」
俺は,警戒しながら,ゆっくりと身体を起こそうとした。
「・・・ぐっ!!」
とたんに,激痛が全身を走る。
全身を見ると,手当らしいものがされていた。
・・・とても,ヘタクソだったが。
「・・・お前が,してくれたのか?」
「当たり前だろ?いくら俺でも,あんな状態のお前を放置するほど,鬼畜じゃねーよ」
男は,カラカラと陽気そうに笑う。
「・・・お前,誰だ?」
「・・・はぁ?」
男は,豆鉄砲を食らったように,ポカンと俺を見ている。
だが,知らないものはしょうがない。
一向に警戒を解かない俺を見て,男は「はぁ〜」とため息をついた。
「・・・なんだ。覚えてねーのか。・・・そういや,お前,頭,打ってたしな。」
ポリポリと頭を掻きながら,またかよ,と男はポツリと呟いた。
どうやら,俺は,この男と知り合いらしい。
頭にそっと手をやると,ぐちゃぐちゃに巻かれた包帯に触れた。

・・・思い出さなければ,いけない気がする。
しかし,記憶を探ろうとしても,モヤモヤと霧がかかったように,たどり着けない。

「いつっ・・・!!」
頭がズキンとして,思わず抱え込んでしまった。
「まぁ,無理すんなって。一時的なモンだろ,多分。」
・・・男が少し,寂しそうな眼をした,と思ったのは,気のせいだろうか?
「俺は,こーいうもんだ。」
そう言って,男は,首から下げていたパスポートを,俺の目の前に突き付ける。

「『ジークハルト』
 上記の者は,千葉国民であることを,ここに証明する」

「千葉・・・!?」
緩んでいた警戒レベルを,瞬時にMAXまで引き上げ,男から離れようとした。
ぱたぱたと探っていた右手が愛刀に触れ,それを引き抜こうとした時。
「ま,まてまて!」
男 ―ジークハルト― は,俺の右腕をガッとつかんだ。
「・・・!!」
痛みに耐え,歯を食いしばりつつも,俺は,ジークハルトから目線を離さない。
「俺は,お前の敵じゃねーよ。だいたい,手当だってしてやっただろ?」
・・・そうなのだ。
他には,誰も居る気配はない。
目の前の男が手当をしてくれたのは,間違いなさそうだ。
・・・だが,何故,千葉の男が,埼玉の俺を助ける?

一向に力を抜かない俺に苦笑しつつ,ジークハルトは,俺からすっと手を離した。
「まぁ,お前に斬られても文句は言えないしな。斬りたきゃ,斬れよ。」
そう言って,無防備に俺に背を向け,リュックを肩にかついだ。
「・・・どういう意味だ。」
「そのまんまの意味だよ。」
スタスタと,ジークハルトは,俺の目の前を通り過ぎていく。
「おい,どこ行くんだ。」
「・・・千葉だよ。千葉に行く。」
「やっぱお前,千葉のヤツじゃねーか。」
「・・・あぁ,そうだな。」
ジークハルトは,振り向いて俺を見て,フッと笑った。
「最後に会えたのが,お前,とはな。なんとも可笑しなもんだ。」
「最後・・・?」
「なんでもねーよ。じゃーな。気を付けて帰れ。」
そう言うと,バチバチっという雷とともに,ジークハルトは目の前からふっと消えた。

・・・なんだ?
・・・何か,ひっかかる。
このままで,いいのだろうか?
何か,しなければいけないんじゃないだろうか?

焦燥感だけがつのる。

俺は,何とか動くようになった身体を起こし,焚き火を消した。
ジークハルトを追ってみようと,心に決めて。


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