THW小説④ ~Twilight Good-Bye!~
それからの,攻特隊の千葉への襲撃は,すさまじかった。
というか,ザビ一点を狙った襲撃。
「たいちょ〜〜〜〜〜〜!!戻ってきてくださいよ〜〜〜〜!!うわあああああん!!」
「埼玉攻特隊のうらみいいいいい!はらさでおくべきかあああああ!!!」
「隊長,マジ千葉じゃんww 超ウケルwww」
攻特隊メンバーは,それぞれがそれぞれ思う事を口走りながら,ザビに襲い掛かる。
「ちょwおまえらww すげえ火力じゃんwww」
それをひょいひょいと避けながら,ザビはメンバーをぽくぽくと殴っていく。
決して,致命傷を与えはしない。
逃げ道を先回りし,俺は,ザビの前に立ちふさがった。
「ザビ!!」
「お,碧風じゃん。ケガ治ったの?はやっ!つか,思い出したのかww」
「うるせぇ!てめぇ,なんで千葉に行った!?」
話しかけながらも,自分の愛刀で,渾身の一振りを繰り出す。
「ん〜〜?なんでって・・・」
ザビは,それを避けて,俺の後頭部に一撃ぽくんと喰らわせた。
「はい,お前,これで死んでるよ?」
「〜〜!!いいから,答えろよっ!!」
刀では太刀打ちできない。
俺は,疾風を起こして,目くらましを狙う。
だが,いとも簡単に,雷撃のバリアではじかれてしまった。
「・・・チーバくんが,後ろ体重で,かわいかったから。」
「はぁ!?」
チーバくんとは,千葉国のマスコットキャラクター。
俺は一瞬,理解が遅れる。
「は?え?ちょ,なんだそれ!本当にそんな理由かよっ!!」
「そ〜だよ〜ん♪」
ニヤニヤ笑いながら,俺に雷撃を飛ばすザビ。
それを,モロに喰らってしまった。
「ぐっ・・・・!!てめぇっ!!」
まだ,身体は本調子ではない。
簡単に膝をついてしまう。
ザッと足音がすると思ったら,目の前に,ザビが立っていた。
「俺は,お前の敵じゃないって,言ったろ?」
「そーいうイミかよ・・・!」
すぐ側にザビがいるのに,俺はまたしても何もできないのか・・・
悔しくて仕方ないが,身体は言う事を聞いてくれない。
「てめぇ,戻ってこい・・・!」
「ふん,寝言は寝てから言ったら?」
そういうが早いか,
バチバチッ!
俺の目の前は,いつかのように,真っ白に染まった。
・・・なんで,俺だけ本気でボコボコにすんだよ・・・
その声は,ザビ本人に届いたか,届かなかったか。
サビは,横たわる俺を背に,鼻歌を歌いながら戦場を駆け抜けていった・・・・
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ザビが,千葉に亡命して5日後。
何度となく,襲撃してはボコボコにされる日々を繰り返し。
そろそろ,いい加減あいつにお灸をすえないと,と思いつつも,
実力不足を歯がゆく思っていた頃。
バン!
と,攻特隊本部の玄関が開けられた。
「ただいまっ!!!」
なんだなんだと集まるメンバー。
「たい・・・ちょ・・・う?」
「ザビ隊長だ!」
「ザビ隊長がかえってきたぞおおおおお!!」
わあああっ,と,一気に玄関のホールがやかましくなる。
俺も,驚いて,吹き抜けの二階から,身を乗り出した。
サビだ。
間違いない,ザビがいる。
メンバーにもみくちゃにされ,屈託のない笑顔。
「みんな,まってた?ごめんね〜」
「隊長・・・!私は隊長を信じてましたっ!」
「帰ってきてくれればそれで・・・!」
なんて,口々にいうメンバー達。
開いた口がふさがらないとは,こういうことか。
俺は,まさに口をあんぐりと開けていたまま,その様子を見ていた。
すると,ツカツカと歩み寄る男が一人。
副隊長だ。
ざっと人並みが割れる。
「・・・副隊長。ただいま〜」
相変わらず,ヘランヘランと笑うザビ。
パンッ!
と,音がしたと思ったら,
副隊長がザビの頬を平手打ちしていた。
「・・・どういう,おつもりですか。」
誰もが思っていたであろう,その言葉を告げる副隊長。
「いてて・・・副隊長は,やっぱ容赦ないなぁ。」
なんて,頬をさすりながら,答えるザビ。
「んとね,千葉,飽きた。だから,戻ってきたの。」
「は!?」
これには,副隊長も口をあんぐりと開ける。
「俺は,埼玉が一番だよー,うんうん。これからもよろしくね,副隊長♪」
ポン,と肩を叩き,ザビは階段を上ろうとする。
すると,二階にいた俺と目があった。
「・・・よぅ。帰ってきたぜ。」
「・・・そのようだな。」
とんとんとん,と,小刻み良く,階段を上ってくる。
「お前,タフだねぇ〜。もう復活してんの?」
「うるせぇ。お前が本気出さなかったからだろ。」
「あれ?バレてた?俺,そんな優しくはしなかったけどな〜。」
ケラケラと笑いながら,俺の肩をポンポンと叩きながら,すれ違おうとする。
「・・・言いたいことは,山ほどある。」
俺は,ザビに背を向けたまま,小さくも大きくもない声で,抑揚なく言う。
「俺も,碧風ちゃんに,言いたいこと,あるよ?」
「・・・は!?ちゃん??」
ちゃんづけでなんて,呼ばれたこともない。
吃驚しすぎて,思わず振り返ってしまった。
すると,上目遣いで,じーっと俺を見上げるザビ。
「!!」
なんだ,このアングル。
見たことねぇ。
ドクドクする心臓を抑えられないまま,俺は硬直する。
「・・・ねぇ?」
「・・・なんだよ」
「チーム,入れて?おねがい!」
「・・・・」
反則だ。
こいつ,俺の惚れた弱みとか,萌えツボだとか,全部利用してやがる。
しかし,今回だけは・・・
そうそう簡単に許してはいけない・・・・!
「ね?お願い♪」
ぶはっ!
脳内の俺は,見事に鼻血を吹き出して,飛んで行った。
しかし,表面には,努めて出さないように・・・努力したつもりだが。
俺は,ふいっと横を向いて,ボソっと答えた。
「・・・次は,ないぞ。」
「やった!碧風さんきゅ〜!」
文字通り,ジャンプ一番,スキップしながら,ザビは自室へと入っていった。
・・・どこまで甘やかせば,気が済むのか。
しかし,「お願い♪」なんて言われたら,拒否できないのも事実。
かくして,攻特隊傘下のSSW隊長に再就任したザビは,
今日も今日とて楽しそうに戦場を駆け巡っている。
夕闇は,やがて夜になり,そして夜明けを迎える。
同じ色の空,しかし,陽の光はこれから益々強くなるだろう。
そんな朝日を浴びながら,ザビは前にもまして,
自由に,生き生きと東京をひっかきまわしていくのだった。
千葉への亡命は,ちょっとのバカンスだったと,今では笑い話になる,そんなお話。
2011.02.06 PC直IN
作品名:THW小説④ ~Twilight Good-Bye!~ 作家名:碧風 -aoka-