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ひかいきゆき
ひかいきゆき
novelistID. 21770
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手合わせ

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道場の中央で、スガタと刹那が向かい合う。
「!」
2人が目を合わせた瞬間に張り詰めた空気は、はっきり言って『異常』だった。
(これ…不味く、ないか?)
タクトが危惧した瞬間、刹那の姿が消える。
(っ、速い!)
ガードに上げた腕が痺れた。
スガタの返した拳は空を切り、気配は既に背後。
今度は避けた。
しかし反撃も虚しく、躱されてしまう。

刹那の動きは、一切の型に嵌っていなかった。
隙があるように見えても、いなされる。
小柄であることも手伝って身が軽く、速い。
そして何よりも。

(! もしかして)
スガタが思考で余所見をしたことが、不味かった。
「っ!!」
「スガタ様っ?!」
左肩に走った電撃のような痛みと、ジャガーたちの叫びが重なる。
痛みの原因はすぐに解放され、スガタは内心でホッとした。
刹那がスガタから離れる。

「…確かに隙はない。だが先を読むことを止めれば、それは隙になる」

離れ際の言葉は、まったくその通りだ。
駆けて来ようとしたジャガーとタイガーを浮かべた笑みで押し止め、スガタは笑った。
「返す言葉も無いな。でも、ありがとう」
「? 何が?」
「俺の我が侭に付き合ってくれて」
率直に礼を告げたのだが、刹那はよく分かっていないらしい。
会話が途切れたそのとき、タクトが大きく息を吐いた。
「ちょっと、何で外野の僕らがこんな緊張しなきゃ駄目なんだよ…」

寿命が縮まりそうだ、と続いた台詞に、ワコが噴き出した。




作品名:手合わせ 作家名:ひかいきゆき