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一日一ミハエルチャレンジ

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2/6 アドルフ



ミハは「チェロ」、「筆」、「喧騒」を自由に組み合わせてお話を作りましょう 」http://shindanmaker.com/49811 ということで^^





「アドルフ、何聴いてるの」

目を閉じて何か聴いているらしいアドルフのイヤホンの右を勝手に外して、耳に押し当てる。
彼が聴くならクラシックに違いないとは思っていたが、ピアノ曲のなにか、という予想は外れていた。

「これ……チェロ?」

「ええ、」

イヤホンを奪われても特に気にした様子もなく、

「バッハの無伴奏チェロ組曲ですね」

「うん、バッハだとは思った」

ミハエルも聴くのは普段からもっぱらクラシックだから、さらりと反応が返るのが嬉しいのかもしれない。
他のみんなも聴かないことはないのだが、演奏をするわけでも特別に詳しいわけでもないから。

「今度はチェロも弾くの?」

「さすがにそこまで手は出せませんが」

そんな時間もありませんし、と、肩を竦めた。
自分たちが毎日忙しくしているのは事実だ。
まったくの余暇時間がないわけではないが、練習やミーティングを差し引いて残った時間をほかのやるべきこと、やりたいことに費やせばあっという間に就寝時間だ。

「弾くわけではありませんが、心地よい音なので」

深い響きをともなって奏でられる旋律は、確かに身の奥に緩やかな流れを作り出すような心地よさがある。
身を委ねて、眠ってしまいたくなるような、懐かしい音。

「……このまま、一緒に聴いていてもいい?」

「もちろんです」

軽やかな了解を得て、ミハエルはソファの隣に座り込む。
背に置かれていたクッションを前に抱えて、こてんと頭を左にもたれさせた。
穏やかなメロディが片耳に流れ込んでくる。
半分だけとはいえ、世界のざわめきや喧騒をもすべて包み込んでしまうような音色。
懐かしい、と感じたのは、懐古を呼ぶ音色だとかいう比喩ではない。

「僕のおじいさんがね、」

「はい?」

「昔、弾いてくれた音と同じだなあ」

懐かしい光景が脳裏に浮かんで、自然に頬が弛んだ。
趣味でときおり弾く演奏を、すぐそばで頬杖をついて聴くのが大好きだった。
優しい音色と温もりと、頭を撫でる手を思い出す。

ああ、そうだ、この曲を聴き終わったら、久々に手紙でも書いてみよう。
次に会ったときにはまたチェロを聴かせて、と書き添えて。