一日一ミハエルチャレンジ
2/4 ヘスラー
あれ、と薄目を開けて飛び込んできた顔に向けて、呟いた。
にこりと穏やかに微笑む顔は、温かみに縁取られていて、思わずほっと心に灯りが灯るようだ。
「…ぼく、ねてた?」
天井と自分との間にヘスラーのこの顔があるということは、そして、後頭部が少し柔らかくて温かいということは、
「ええ、ぐっすりと」
どうやらヘスラーの足を枕に眠ってしまっていたらしい。
ソファのヘスラーの隣に座って伸びをした辺りまでは記憶があるのだが。
「よくお休みでしたね」
「枕が、よかったから、ね」
枕呼ばわりされても気分を害した様子もなく、笑顔を絶やさないヘスラーは、どうやら音楽を聞いていたらしい。
ステレオから流れる音楽がクラシックなのは、ミハエルの影響か、はたまたアドルフの影響か。
控えめな音量のバッハの響きにもまた、心地よさを感じて、再び瞼が落ちかかる。
温かくて、
心地よくて、
「もう、ひとねむり……」
すでに視界はほとんど閉じて、
「おやすみなさい」
笑いを含んだ声と共に、温かい手のひらが降りてきて、そっと髪を撫でた。
2010.02.04
作品名:一日一ミハエルチャレンジ 作家名:ことかた