すれ違い
日々也は帝人の部屋から退出すると真っ直ぐ王夫婦がまつ食堂へと足を向ける。
キスをして起こしたいのは日々也の言い訳。少しでもあの少女に触れていたいから。少しでもあの子を味わいたいから。
きっと、それ以上を望もうとしたら今以上に日々也は帝人から嫌われることだろう。
そう思うと、日々也は自分を嘲笑いたかった。
本当はずっと一緒にいたい。同じベッドで眠って、愛を囁いて、あの子を思うまま貫きたい。
キスをすることを義務と言われて腹が立った。義務とか役割とかでキスなんか出来ない。それも自分から仕向けたり何かしない。
けれど、あの子の姿を見る度に心に歯止めが掛かる。
(きっと、泣かれるに決まってる)
さっきだって、泣きそうだったのだ。日々也は自分が鼻で嗤うと、口元を抑えて廊下の壁により掛かった。
(愛しているよ・・・俺の姫君・・・)
日々也の頬には一筋の涙が流れ、嗚咽を零すことなく彼は泣いた。