二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

エデンの壁

INDEX|6ページ/6ページ|

前のページ
 



 温かな胎内に包まれ、ゆるい呼吸にあわせて震える襞の感触を感じながら、俺はまどろみに堕ちていく。
 眠るエリザの額に唇をあて、独り言のようにつぶやいた。



――髪、綺麗だったのにな、



 寝ていると思った彼女の口が、小さくばか、と動いた。
 ゆるりと薄く開かれた目蓋の奥、まばゆいエメラルドが覗く。




――あんたのそんな顔、笑っちゃう


――そうかよ
こんな生き方してりゃいいかげん俺だってヤキがまわる
引き留めたのはお前だ。償え



 憎まれ口をたたくと、エリザは寝ぼけたような声のまま、うん、ごめん と謝った。




――ねえ、ギル



ねえ、

帰ろうね、わたしたち



 俺は目を見開いた。



帰ろうね、

ぜったい帰してあげるからね



 小さな子供に聞かせるように、繰り返しエリザが言う。



 俺はその背中に手を回し、女の暖かな体温にもぐりこむように顔をこすりつける。

 エリザは瞼を閉じたまま俺の髪をなで、目元に口づけ、しょっぱい、と笑う。






 エリザベータ。愚かなほどに真っ直ぐで、諦めを知らない女。
 お前はきっといつの日か、その望みを叶えるのだろう。
 たとえ何十年何百年かかったとしても。





 けれど俺は



 おまえへの汚い恋情だけでこの生を繋いだ、恥知らずの俺は、
 傷つくお前を目にしても、尚、




 冷たい壁に囲われたこの偽りの楽園が、
 永久に続くことを、祈るように夢見ている。













END


作品名:エデンの壁 作家名:しおぷ