ナツノヒカリ【水栄】
「だって、――しょーがないだろっ、キ、キス、すんの、初めて、だったんだから…っ、」
「え…ッ、マジで…っ?!」
オレが、最初のヒト、なんだぁ…。思わず顔がにやけてしまう。
「へらへら笑ってんじゃねぇっ!!」
オレの肩をぐいと押す栄口。でも声が本気で怒ってない。今度はわかるよ、照れ隠しだって。
「だってぇ〜。オレがハジメテの人なんでしょ? 嬉しーんだもんっ!」
オレはがばっと栄口に抱きつく。腕の中にすっぽりと収まった栄口にもう、突き飛ばされたりはしなかった。
おずおずとオレの背中に栄口の手がまわる。
「さかえぐちぃ、」
「……何?」
抱きしめていた腕をゆるめて、真っ正面から栄口を見つめる。
「オレと、お付き合いしてくださいっ!」
栄口の顔がぼんって真っ赤になって。大きな目がさらに大きくなった。そしてその次に、ふっと緊張が解けたように、栄口は破顔した。
「……よろしく、お願いします。」
ちょっと照れたように。でもハッキリと言葉を返してくれた栄口。
「…えっと、とりあえず――」
視線を外して言うオレに、栄口は小首を傾げる。
うあっ、かわいいぞ、その仕草は。
「――もっかい、キスして、いい…?」
言ってから、栄口の瞳をのぞき込んだ。
「……うん。」
小さく頷いて、少し緊張しながらも優しく微笑む栄口に。
オレはもう一度、ふわりと触れるだけのキスを落とした。
作品名:ナツノヒカリ【水栄】 作家名:りひと