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霊狩りとモノノ怪

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「えぇ、そのようにしてくださってけっこうです。」
楠木はそうナルたちに返事をした。
「そちらは?」
ナルは応接間でじいっと壁の向こうを見ている男性を見た。
「彼は別件でお呼びした方で・・。幽霊の件ではありません。」
楠木はそう答えて紹介した。
「薬売りさん、こちらゴーストハンターの方々です。」
「あぁ、どうも。」
薬売りと呼ばれた青年は丁寧に頭を下げた。
つられてナルとリン以外は頭を下げた。
「楠木さん、私は失礼します。」
そうのんびりとした口調で薬売りは部屋を出て行った。
「はい」
楠木は礼儀正しくお辞儀をして見送った。


薬売りは外からじいっと屋敷全体を見ていた。
「あ、えっと・・。」
麻衣はその姿を見つけて声をかけようとした。
「どうも」
「えっと、霊能者の方ですか?」
麻衣よりも少し背の高い綺麗な青年に麻衣はそう聞いた。
「いいえ。私は、ただの薬売り、ですよ。」
薬売りはまったりとした話し方でそう言った。
「名前は?」
「だから、ただの薬売りです。名前なんてものはないですよ。」
「・・そうですか。」
麻衣はそうこれ以上聞いても無駄だと察した。
「不思議な格好をしてますよね。」
麻衣はそう薬売りを見た。
和の着物に頭巾、背中には大きな箱のようなものを背負っている。
「最近じゃこういう格好をしないと売れないもので。」
薬売りはそうふっと笑って屋敷を見た。
「何を見ているんですか?」
麻衣はそう薬売りに聞いた。
「いや、ここは色んなものがいるな・・・とね。
 今回は少々・・・・骨が折れそうだ。」
そう言って薬売りは屋敷の中へと入って行った。
「不思議な人だなぁ。でもめっちゃイケメン。」
麻衣はそうぽつりと言った。


「きゃーーー!」
夜、屋敷内に屋敷のメイドの悲鳴が響いた。
「どうした!?」
ぼーさんがそう聞くと従業員は部屋の中を指差した。
そこには血のようなもので手形や足型、何かを引きずった後が
部屋中にあった。
「来て一日目でこれか。」
ナルはそう腕を組んだ。
そこに薬売りがのんびりといつのまにかいて
「これは、俺の仕事ではないですね。」
そう呟いた。
「い、いつのまに」
ジョンはそう驚いた顔をした。
「あれ?これ・・。」
麻衣は床に落ちている糸を拾った。
見るとそれは太目の蜘蛛の糸のようなものだった。
「ほぅ。これは・・・。」
薬売りはそれを見て目を細めた。
「幽霊、が関わっている、いや真を知っているのか?」
薬売りはそう誰にも聞こえないように呟きふっと笑ってその場を去ろうとした。
「あんた、何か知ってんのか?」
ぼーさんが警戒したように薬売りに聞いた。
「いいえ、何も。しかし、これから知らねばなりませんから、骨が折れそうだ。」
薬売りは振り返らずそう答えて足音をたてずにさっさと行ってしまった。
「あの人何者なのよ?」
綾子がそう聞くと楠木さんは
「薬売りさんです。」
そう答えた。
「それは分かってんの!」
「いえ、薬売りさんとしか言い様が・・・。」
綾子が怒鳴ると楠木はそう冷や汗をかいた。
「私にも、『ただの、薬売り、ですよ』って。」
麻衣も思い出したように言った。
「あれがただの薬売りかぁ?というか今時薬売りって・・・。」
ぼーさんはそういぶかしむように言った。
「何にせよ、こっちはこっちでやるしかないな。」
ナルはそうふぅっと息を吐いた。


「幽霊は二体。一体は害はありませんし、放っておいてももう消えるでしょう。
 もう一体は危険です。とても強い念を感じます。あと、幽霊でない気配が
 感じられます。」
真砂子はそう言った。
「そういえば、あの薬売りの人が『いや、ここは色んなものがいるな・・・とね。
 今回は少々・・・・骨が折れそうだ。』って言ってたなぁ。」
麻衣はそう思い出して言った。
「色んなもの?幽霊以外のものってことか。」
ナルはそう資料を見ながら言った。
「それに・・あの夢・・。」
麻衣は眉を潜めた。
「またなんか見たのか!?」
ぼーさんは麻衣を見た。
「え!あ、いや。別に!」
麻衣は慌ててそう取り繕って話を再開したときだった。
楠木と他のメイドと執事、合計3人が紅茶の配膳にきた。
屋敷にいるのは麻衣たちとこの三人と今は薬売りだけだ。
そこにがちゃりと薬売りが入ってきた。
「おや」
薬売りは首を傾げた。
「何か御用ですか?」
ナルは丁重にそう薬売りに聞いた。
「いや、気配を追ってきたらここに辿り着いてしまったのですが・・。」
薬売りはそうドアを閉めた。
「何のけは・・。」
麻衣がそう聞こうとしたとき、一瞬電気が消えて再びついた。
そのとき、左から右に強風がふいた、窓なんてないのに、壁から壁に。
「来たか!」
薬売りは手に札をもちばっと手を前に紙ごと突き出した。
ばばばばばば と髪が部屋の壁全体に張られていく。
「お!」「わ!」「きゃ!」
などと全員は驚いてゆかに伏せている。
《ギャオウアオオオオオオオオオ!》
という声が左の壁から聞こえてきた。
壁に映るその姿は糸を吐いていて蜘蛛のようだった。
白い紙のような札に黒い文字が浮かび、そして文字が赤く光った。
「ぬん!」
薬売りは壁に手を向けてぐっと何かの圧力に耐えている。
それからふっと手をおろして札の色が黒になり白に戻ったのを見た。
「行ったか・・。」
薬売りはそうふっと息をはいた。
「薬売りさんや」
ぼーさんはそう唖然としばがら聞いた。
「なんです?」
薬売りは振り返りながらそう聞いた。
「あんた、いったい何者なんだ?」
「だから、ただの、薬売り、ですよ。」
薬売りはそうふっと笑った。
「質問変えるわ。今の何?幽霊とかじゃないよな?」
ぼーさんはそう質問を切り替えた。
「モノノ怪、ですよ。」
薬売りはそう答えた。
「もののけ!?」
麻衣は声を上げた。
「妖怪とかそういうの?」
麻衣がそう聞くと薬売りは
「いいえ。妖とは別ものですね。」
そう薬売りは答えながら箱を床におろした何かを取出した。
「なんです、それ?」
ジョンがそう聞くと薬売りはそれを指先ではねて天井に飛ばした。
「天秤、です。」
次々と天井に天秤を浮かしていく。
天秤は不思議なことに空中でとどまっている。
「天秤?重さを量る?」
綾子はそう首を傾げた。
「いいえ、これは」
薬売りはすっと立ち上がり手を横に伸ばし合わせる動作をしながら言った。
「距離を測る、為のモノです。」
パチンと手をあわせると天秤は上下逆さまにむいて天井につき?そして
鈴を天井に向って下ろした。
「すみませんが、この部屋からは出ないようにお願いします。」
薬売りはそう全員を見た。
「何故?」
ナルはそう聞いた。
「この部屋の結界からでたら、死にます。」
その死にますという薬売りの発言に全員が背筋をぞくりとさせた。
箱から何かが飛び出し薬売りの手に収まった。
「それは・・・剣?」
ナルはそう聞いた。
「退魔の剣。モノノ怪を斬るためのもの、ですよ。」
「じゃあ、それで斬ればいいんじゃねぇの?」
ぼーさんがそう聞くと薬売りは口に元に笑みを浮かべて答えた。
「退魔の剣は形と真と理の三つが揃わねば抜けません。」
「かたちとまこととことわり?」
真砂子はそう首を傾げた。
作品名:霊狩りとモノノ怪 作家名:まぁ秘密