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こらぼでほすと 逆転2

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お茶が届いて、それらがセッティングされると、マリューが、「お砂糖は? 」 と、尋ねてくれる。ストレートで、と、頼んだら、ミルクだけは、かなり放り込まれた。
「意外と紅茶は刺激物だから、ミルクぐらいは必要よ。」
 はい、と、マグカップを渡される。
「今日は、お休みですか? 」
「ええ、珍しくマトモな休暇が取れたから、遊びに来たの。ムウって、世話好きではあるのよ。それで、様子を伺いに来るつもりだったんだけど、あっちに仕事が入ったから、私が監視ということになりました。」
「俺、ひとりでいいって言ってんですが、どうも、鷹さんが、それについてはスルーなんで。」
「そりゃ、今は離れないでしょうね。そういうのに敏感なのよ? あの美少年キラーは。」
「はあ? 」
「今、精神的に脆くなっている弟分を放置はしないの。あら? 自覚してないの? ロックオン。」
「俺? 」
「そうそう、あなた。キラくんの時も、そうだったもの。」
 戦時中、キラは精神的に、かなりおかしくなった。素人が、いきなり戦争に借り出されて戦えと強制されたのだから、そうなるのも無理はない。だが、キラを、その重圧から開放することもできなかった。キラがいなければ、自分たちは無事に、その難局を切り抜けることは不可能だったからだ。どうすることもできないジレンマで、マリューも弱りそうな時に、鷹はキラの精神的なフォローをした。バカな話をしたり、気晴らしに連れ出してみたり、と、いろいろとやって、どうにかキラを、それ以上おかしくなることだけは防いだ。まるで、恋人同士みたいだったのよ? と、マリューはおかしそうに話す。
「キラくん、今は全開で笑ってるでしょ? でも、あの頃、ほんと儚く微笑むが精一杯って感じで・・・・ムウのほうも、精神的には辛かったとは思うけど、笑わせたり和ませたりしようと努力してたから。なんだか、とってもいい感じだった。」
「それ、黙って見てたんですか? 」
「しょうがないでしょ? キラくんが少しでも楽になるなら貸すわよ。私にとっても、キラくんは可愛い弟分だったもの。」
「さすが、男前。」
「それ、褒め言葉じゃないんだけど、一応、褒め言葉として受け取っておくわ。・・・まあ、アスラン君が合流してくれるまで、ムウがどうにかしていたの。」
 元々の本命のアスランが現れて、キラは強くなった。だから、本来の腕に鷹も戻したらしい。今でも、その頃の名残でスキンシップ過多ではあるが、アスランも、それは黙認している。自分が不在だった時に築かれた絆までは断ち切ることはできないと諦めているそうだ。
「俺は誰に引き渡されるんでしょう? 」
「刹那君でしょ? 」
「マリューさんまで、俺をゲイにしますかね? 」
「そういう意味じゃないわ。あなたの場合は、引き渡すというより本来の状態に戻すってことだと思うんだけど? 」
「戻ってますよ。すでに。」
「戻ってる? へえーそれなら、こんなことになってるのは、どうしてかしら? 」
「・・・う・・・」
「状況判断と自己管理なんて、マイスターにとって必須事項ではないかしら? 」
「・・・・・・・」
「つまり、そういうこと。だから、ムウは心配してるわけです。」
「はあ。」
「焦らないで、ムウのバカ話でも聴いていなさい。それなりに気持ちは軽くなるから。」
「確かに軽くはなります。」
「あれでも、私が惚れた男だから、一流なのよ? 」
 でも、普段は微塵も感じられないのよねーと、マリューは、また大笑いしている。ものすごく深いところで繋がってるから、離れていても大丈夫だと信じていられるんだろうな、と、ロックオンは羨ましいと思う。たぶん、キラも、鷹には言いたい放題だが、それを許してくれるとわかっているから、ずけずけとものを言うのだろう。そういう関係を築くまでには至っていないな、と、自分たちマイスター組のことを考える。少し繋がった部分はある。けど、それが、ここまで深くはない。守秘義務だとか、仲間意識の無さが際立っていたからだ。

・・・そこまでの関係があれば、刹那のあれも収まるのかな・・・・

 安心感に飢えるのは、不安になるからだ。絶対に大丈夫、という信頼があれば、飢えることはない。ティエリアにしてもアレルヤにしても、そうだろう。
「ロックオン、横になったら? 」
 ぼんやりしていたら、マグカップを取り上げられた。
「そういや、前に、ここに居た時に、鷹さんにもカップを取り上げられました。」
 眠くて、一瞬、意識を飛ばしたら、鷹が慌ててカップを取り上げた。
「そりゃ取り上げるでしょうね。」
「そういうもんですか? 」
「そういうもんでしょ? さて、綺麗な寝顔でも堪能させていただこうかしら。」
「いや、もう充分です。」
「くくくくく・・・・だから、私は監視しているんです。もし、ここから引き取らせたいなら力づくってことになるから。ついでに、言っておくけど、私、技術仕官だけど軍人なので、それ相応の訓練は受けてるわよ。うふっ。」
「・・・・堪能してください・・・・」
 『吉祥富貴』の関係者は、どうしてこう、力技でくるかなあーと、溜息をついて横になる。それなりの訓練は受けているが、たぶん、今の筋力では、それを駆使するのは難しい。女性とはいえ、第一線の軍人様に敵うわけはないのだ。マリューが陽気な雰囲気を醸し出しているのも、おそらく鷹と同じように和ませようとしてくれているからだろう。それほど弱っているという自覚はないのだが、そうかもしんない、と、ちょっと感じた。マリューに背を向けて、目を閉じると、カサリという書類を捲る音と、紅茶を飲んでいる喉の音だけになる。今までの陽気な会話が信じられない静かな空間だ。

 翌日の午後遅く、鷹が戻ってきた。昨夜、マリューは、いつも鷹が寝ているロックオンの隣りのベッドで休んだ。女性と同室なんて、それも、鷹さんのつれ合いと一緒なんて勘弁してください、と、ロックオンも抵抗したのだが、「具合が悪くなったら、どうするの? 襲えるものなら襲ってみなさい。」 と、切り替えされて、反論を封じられた。もちろん、何も無い。襲える道理もない。だいたい、食後の投薬で、そのまんまぐっすりなロックオンに手が出せるはずもないのだ。
「どうだった? ママは。」
「優しかったわよ。」
「ふーん、そういえば、ママの好みは年上の巨乳だったから、マリューだとストライクだなあ。」
「あら、ムウ、そういうことは先に教えなさいよ。それなら、迫って落としたのに。」
「おやぁ、優しかったんじゃなかったのか? 」
「優しかったけど、好みなら、他にもいろいろできただろうと思ったのよ。」
「・・・・すいません・・・その会話やめてくれませんか? 精神的に強姦されてる気分なんですが?」
「強姦って大袈裟な。」
「和姦でしょ? ロックオン。」
「だから、やめてくれってっっ。俺、なんもしてねぇーしっっ。ていうか、できるわけないってっっ。」
「まあ、やるだけの元気があれば、マリューに頼まないけどさ。」
 はいはい、この会話は終了、と、鷹が手を叩く。それから、バイトの話を、そこでマリューに報告しているので、ようやく、ほっとして横になったロックオンが寝息に変わると、がらりと空気が変わる。
作品名:こらぼでほすと 逆転2 作家名:篠義