二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

こらぼでほすと 逆転2

INDEX|5ページ/5ページ|

前のページ
 

 出来立ての匂いのいいコーヒーを、カップに移して、虎は、それを味わうように喉に通す。生き急ぐ親猫の気持ちを考えて苦い笑いがこみ上げてくる。彼らと自分たちの違いは、免罪符の有無だろう。自分たちは、軍人だったから、戦うことに軍が意味を作り、それに従って敵と指定された相手を葬ればよかった。もちろん、ある程度の裁量は、自分にもあったから、非力なレジスタンスを完全に葬ることはしなかったが、命令があれば、虐殺と言われることもできた。それは、全ての罪を軍が命令したと、自分の気持ちに理由をつけられたからだ。対して、マイスターたちは、テロリストであるから、その殺略も命令という免罪符では片付けられない。確かに、組織の上層部からミッションという名目で命令は受けているが、それを実行する実行者となることを承諾した段階で、殺略することも自分に認めていることになる。正義なんかではない。目的のため、それを実行する。そこには裁量もないし、目の前にあるものは、敵として襲ってくるものしかいない。
 そこまでの覚悟がなければ、実戦で負ける。それを覚悟して実行したから、ここまで生きている。いや、親猫は私情を優先して滅びそうになっているから、その段階でテロリストとしての命は費えたともいえるかもしれない。
「もう、戦うなとは言わないが、少し休め、ママ。おまえの子猫たちは、まだ戦うだろうが、それは、子猫たちが負けていない証拠だ。」
 聞こえていないだろうが、助言を口にする虎は、それから、夕刻まで趣味を楽しんで、夕食の後で、美味なコーヒーをロックオンに差し出した。ただ、体調のことも考慮して、普通のブレンドをデミタスカップ一杯にした。
「これが最高級だ。」
「・・・甘い・・砂糖を入れてないのに・・・・」
「午後の時間一杯に使ったから、満足のいく味が出せた。・・・・次は、アメリカンの美味というのを味合わせてやる。」
「これに、お湯を足せば、アメリカンなんでしょ? 」
「はあ? まあ、若者には、コーヒーの造詣なんてものを求めても無駄か・・・・ロックオン、アメリカンは、豆のローストの度合いで浅く煎ったもので作るコーヒーだ。お湯増しコーヒーなんて低俗なものを俺が飲むわけがないだろう。」
「へぇーそういうもんなんですか。そこまでコーヒーは極めてないんで。」
「おまえ、コーヒーどころか、紅茶もわかってないだろ? 」
「あはははは・・・バレてますか? 」
 嗜好品なんてものに金をかける余裕と時間を持ち合わせなかった。酒だって、酔えば一緒だと思っているから、『吉祥富貴』で出されている酒の味が、あんまりにも美味いので、びっくりしたほどだ。
「そろそろ、そういうものの知識は蓄えたほうが良い。うちの店は、それなりの階級の人間が遊ぶところだからな。」
 そんなことは、端から承知だ、と、虎は笑っている。生活習慣として子供の頃から身についている人間以外が、そういう嗜好品に拘りだすのは三十を越えてからが多い。ただ、飲めれば良いというところから、自分の好みの味が良いという段階に移るからだ。ロックオンだと、まだ飲めればいいという段階の世代だ。
「じゃあ、明日からでも、そういう資料を探して・・・・」
「ママ、それは復帰してから実際の酒を目の前にしてやるほうがいい。紅茶も珈琲も、おまえは、まだ摂取しないほうがいいんだから、そちらも却下だ。」
「でも、それ、飲まないと勿体無いじゃないですか。」
 食事するので、コーヒーを作っていた器材は退けられているが、試作品で一杯になったサーバーが、たっぷりと二つ分、並々と入っている。
「これは、ラボで消費する。・・・ちょっと下へ降りてくるから、その間に先に風呂を使っておけ。」
「もう結構です。アイシャさんのところへ帰ってあげてください。」
 鷹が本日も仕事で留守だ。だから、虎が、ここに陣取っている。ロックオンとしては、寝ている間に、どうこうということはないから一人でいい、と、辞退したのだが、虎は、そんなものはスルーして、ここへ泊まると言っている。
「そうもいかんだろう。そんなことをしたら、俺がアイシャに叱られる。」
 アイシャは、この親猫も気に入ったらしく、「ロックオンはカワイい。」と、ご機嫌で相手をしている。今日は、鷹が留守になる予定だったから、アイシャの監視は休ませただけで、やる気は満々だ。明日は、朝から来ると連絡してきた。
「強そうだもんなあーアイシャさん。」
「俺の女房ができるんだから強いさ。・・・・あれも奇跡の生還者だしな。」
「え? アイシャさんも? ・・・・一度、尋ねようと思ってたんですが、一体、うちの店には何人の奇跡の生還者様がいらっしゃるんですか? 」
「うーん、何人と言われると答えに困るな。半分以上は、一度はやってるはずだ。」
 どこまでを奇跡の生還者として換算するかが微妙だ。キラもアスランも二度ほど、危ないことになっているし、八戒なんか所属が変わってて、生還者には該当しない。などと考えると、正確な人数を答えられない。
「やっぱり、それぐらいはいくんですね。」
「まあ、長い人生、一度くらいは誰だってあるんじゃないのか? 」
「長い人生ねぇー」
「そこで、ぐたぐだとやってるなら、さっさと風呂に入れよ。」
 こんな話を長々と続けている必要はない。食器をワゴンへ片付けて、それと一緒にサーバーも運び出す。ラボには、ダコスタが残っているだけなので、このコーヒーは、屋敷の人間で処分してもらうつもりだ。普通に飲む分には、それなりの味ではあるから、拘る人間でないなら、これで充分だ。ロックオンには、とびきり美味しいのを飲ませてやりたかったから、いろいろと試しただけだからだ。
作品名:こらぼでほすと 逆転2 作家名:篠義