26時
そうだ、これは俺なりの答えなのだ。さっき千歳が口にした告白の。
千歳は何も言わずに顔を上げた。閉ざされたままのそれが、寄せられる。
触れた瞬間。爪先が、がり、と畳を引っかいた。
ボロアパートを営む気のいい大家とは、直ぐに顔なじみになった。そのおかげか、彼は何の詮索もなしに二つ返事で承諾してくれた。
じゃらじゃらと音を立てるいくつもの鍵の中からひとつを探り当て、鍵穴に差し込む。
簡単に開いたドアを開いて、見つかったらまた声かけてやと言い残して彼はかんかんかんと足音を立てながら戻っていく。
俺はお礼を口にすると、やけにこざっぱりした空間に足を踏み入れた。
靴を脱いで畳にあがる。窓を閉め切っているせいか、空気が篭っている。まるでそこだけ時間の流れが止まったかのようで、きらきらと埃が舞う中へ俺は足を進めた。
そのときだ。
(あ、…)
一畳の畳の上に光る、何かがあった。
屈んで拾い上げてみる。思わず俺は立ち尽くした。
部屋の真ん中には、太陽の光を銀色に返す小さなピアスが落ちていた。