二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

『悪魔の住む花』は危険な香り

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 


 個室のドアを閉めた後、ウルトラ警備隊のソガ隊員はどうにも処理できない感情に押されるまま、目の前の男に自嘲気味な視線を向けた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 地球防衛軍極東基地内にある作戦室に一本の電話がかかってきたのは、ウルトラ警備隊の面々が昼食を終え、暫らく経ってからの事だった。
 電話をかけて来たのはとある病院の院長で、次のような内容だった。
「植物園で突然倒れ病院に運び込まれた女性の血液中の血小板が異常に減少しているのだが、彼女の血液型は特別で病院に保管してある血液では輸血できない。そこで、同じ特別な血液型であるウルトラ警備隊のアマギ隊員に協力をお願いしたい。それから―――」
 どうも症状に不審な点があるので、できれば調査して欲しい―――との事だった。
 早速ウルトラ警備隊キリヤマ隊長の命令で、アマギと、同じくウルトラ警備隊隊員であるモロボシ・ダンがその病院へ向かった。
 彼等が地球防衛軍基地に戻ってきたのは夕方で、ダンは花弁のような物を持ち帰っていた。彼の話しでは、どうやら彼女―――カオリの血小板減少に何か係わり合いがあるのではないかと言う事だった。
 その夜に、再び作戦室の電話がけたたましくなった。
 カオリが入院している病院の看護婦からで、彼女の姿が消えてしまったと言うのだ。早速アマギとソガが病院に急行し、二手に分かれて彼女の捜索にあたった。
 慣れない病院の中、神経を研ぎ澄ませて歩を進めるソガ。彼は、アマギと別れて数分も経たない内に重要な問題に気付き立ち止まった。
 アマギが向かった方へ顔を向けながら、しまったと舌打ちをする。
「カオリって子がどんな顔してるのか知らないぞ」
 仕方ない―――短く嘆息すると、ソガはアマギを追って歩き出した。その間も気は抜かず、それらしい子がいないかどうか目を走らせ……
 ―――ガシャン…!
 不意に聞こえてきた何かが割れる音。ソガはとっさにどの方向から聞こえてきたのか、音源を探す為辺りを見回した。
「地下…か?」
 左手に暗闇へ続く階段が伸びていた。耳を欹てると、階下の方から小さいが確かに不審な物音がする。半分直感も手伝って、ソガは急いで階段を駆け下り、同時に腰に装備しているウルトラガンを引き抜きいた。それをいつでも撃てるように構えながら慎重に最後の一段を降り、地下一階の廊下を覗き込んだ。地下一階は、ただでさえ静かな上の階より一層静かだった。ただ一室を除いて…。
 五月蝿いと言うほどではない。だが、確かにそこから物音が聞こえる―――その部屋からしか物音は聞こえてこない。
 緊張により鼓動が速まる。ソガは一度深呼吸をした後、そっと音を立てずにそのドアに近付いた。ドアの上にはプレートがあり、その部屋が何に使われているのかをソガに教えた。
 輸血用血液保管室。
 手の中のウルトラガンの感触を確かめ、ソガは勢いよくドアを押し開けた。
 それと同時にウルトラガンを内部に突きつけ、ソガは二手に別れた事を心底後悔した。
「貴様―――何をしてる!!」
 思わず感情的に言葉を発し、考える前に早足で近寄ると彼から彼女を引き離した。怒りに無駄な力がこもり、彼女―――昼間病院に運び込まれた患者・カオリは大きく後ろに倒れこんだ。頭を打ったのかどうか解らないが、そのまま彼女が起き上がる気配はない。
 だが、ソガにはそんな事どうでも良かった。
「オイ!大丈夫か?!」
 カオリに何かされていたらしい彼―――アマギの肩を乱暴に揺さぶりながら、ソガは下唇を噛んだ。自分自身に腹が立って仕方ない。
 一向に起きる気配を見せないアマギに知らず知らず焦りがうまれ始めた。脈に異常はみられないが万が一という事もある。幸いここは病院だ。ソガはアマギの身体の下に手を差し込むと、自分より背の高い彼を抱き上げた。
 そのまま、階上にいるだろう当直の医者を目指してソガは全力で駆け出した。
「すいません!アマギを―――彼を診てやって下さい!」
 運良く、階段を登りきった所で当直の医師と遭遇したソガは、早速彼にアマギを預け、再び、放ったままの地下室に向かった。アマギの容体は気になるが、ウルトラ警備隊としての責務も全うしなければならない。
 実は先程アマギを抱き上げた時、室内にもう一人別の人間=カオリを探していたと思われる看護婦が倒れている事にソガは気付いていた。本来ならウルトラ警備隊であるアマギよりも、一般民間人であろう看護婦を先に助けるべきだし、ソガ自身もそう思ったのだが、彼にはそれが出来なかった。
「…ウルトラ警備隊としては失格だな…」
 思わず苦笑が漏れる。が、それでも―――それでもソガはアマギの事が気になって仕方なかった。彼の無事を速く確かめたかった。
 でないと、
「…この胸の痛みは治まらない…」
 輸血用血液保管室の前で思わず立ち止まり、自身の胸の前で苦しげに拳を握り締めた。
 ソガがアマギを意識し始めたのは、ベル星人擬似空間事件後暫らくたってからの事だった。
 あの事件後、事件のせいでトラウマができてしまったアマギは、全くスカイダイビングが出来なくなってしまった。地球防衛軍極東基地の先鋭部隊・ウルトラ警備隊の隊員がスカイダイビングを出来ないという事は、隊のメンツがどうのこうのという以前に、イザとなった時生命の危機に直面する可能性が出来てしまう。そこで、キリヤマ隊長にアマギのトラウマを緩和するよう命令されたソガは、不承不承ながらも、アマギのトラウマを緩和する為、まず第一に彼の話を聞く事にした。
 その最中に、アマギのある仕草から、ソガは彼の事が気になるようになった。それまで乗り気でなかった任務に積極的に取り組むようになり、それ故、ますます彼を気にするようになった。
 気付けば彼から目が離せない状態に―――アマギを愛しく思うようになっていた。
 そういう感情を抱いている相手が何か解らない事をされていたら、何をおいても助けたくなるのが普通だろう。例えそれが、ウルトラ警備隊としては失格とだとしても…。
「…アマギ…、無事でいてくれよ…!」
 気合を入れるように下唇を噛み締めると、アマギを襲った患者と、アマギと同じく彼女に襲われたらしい看護婦が気を失っている部屋のドアを、ソガは勢い良く開けた。

 

 

 

「宇宙細菌ダリーです」
 モニターに映し出された虫のような物体を、ダンはそう呼んだ。
 地球防衛軍極東基地作戦室。意識不明の人間が血液を求めて病院の地下へ行き、あまつさえ人を襲った事により異常事態だと判断したキリヤマの命令で、患者・カオリと、彼女に襲われてから意識を失ったままのアマギを、基地のメディカルセンターに運び込んでから数時間後の事だった。
 電子顕微鏡でやっと見つかったという、その宇宙細菌ダリーは、何でも人の血液を摂取して生きているらしく、それ故ダリーに寄生された人間は血を求めて吸血鬼のようになるらしい。
 ダンが持ち帰った、あの、花弁のような物がダリーの卵の殻だったのだ。
「どうすれば退治できるんですか?」
 彼女を心配するアンヌ隊員の問いに、患者と同行してきた医師は力無く首を横に振った。現代の地球の医学では到底無理な話なのだそうだ。