sugary hologram
空になったグラスの容器にスプーンを入れると、カランと小気味よい音がした。
さっきのが最後の一口だったらしい。
「っふふ、言うと思った」
心なしか、今手放しにヘッドが笑っていたような気がして、また変に浮わついて
しまう。目の前の男次第でどうにでもなる単純な自分を笑った。そろそろ店を出
ようと何となく立ち上がろうとした時、ヘッドが急にぐっと顔を近づけ、追い打
ちをかけるようにカタシロの耳元で囁いた。
「・・・楽しかったよ、デート」
すっと引き下がってにこりと笑うなり、さっさと店のドアの方へ歩いていくヘッ
ドの姿を暫く呆然と見ているしかできなかった。全く、心臓に悪い。何の気なし
にやるものだから余計タチが悪い。けれど、我を忘れて思わず浮かれてしまっていた。
「どうしたの、置いてくよ?」
「・・・・今行く」
何もなかったようにドアの前に立つヘッドの元へ、自分を落ち着かせつつカタシ
ロは歩いていった。
作品名:sugary hologram 作家名:豚なすび