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未知なる強敵

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 酷い暴走はしなくても暴走はするかも知れないよな???
 怯える俺をよそに恭介さんはさっさと運転席に乗り込んだ。
 こうしてるだけだと意思を持つ野生の車には見えねぇんだけどなぁ…。

 


「健太」

 


 名を呼ばれ助手席に向いていた視線を恭介さんに移す。
 早く乗れと手で合図されて、俺は覚悟を決めて野生の車に乗り込む。

 


「そんなにおっかなびっくり乗らなくても大丈夫だって…」

 


 恭介さんに苦笑された。うぬぬ…。
 だ…だけどなぁ、これは身構えるなって方が無理だろ?
 恐る恐るドアに手をかけ、開ける。
 何も起こらないことを確かめてから乗り込もうとし、

 


 バクン!

 


 ドアに思いっきり足を挟まれた。
 一瞬何が起きたか理解できなかった俺だけど、次の瞬間には絶叫を上げていた。

 


「いってぇぇぇぇええぇえぇぇっ?!」
「健太?! コラッ、ペガサスサンダーやめなさい!!」

 


 ドアに足を挟まれたまま叫び続ける俺。
 涙で歪む視界の端で膝立ちした恭介さんが野生の車の車体をペシペシ叩いているのが見えた。
 それよりドアを開けて俺の足を自由にして欲しい―――
 と、思うと同時にドアが開いて俺は後ろに倒れこんだ。
 ……ホントに恭介さんとだけ心が通じあってんのか。

 


「大丈夫か?」

 


 車体の上から心配そうに覗き込んでくれるのは良いんスけど、

 


「全ッ然大丈夫じゃない…」

 


 半端じゃなく痛い。
 これ絶対足青痣ついてる。
 青痣ついたのはまだ良いけど、この調子だと、俺、生きて帰ってこれるかどうか疑問だ。
 大体、この野生の車の態度ってなんか―――

 


 ギュム

 


「え?」
「…あ」

 


 今度は無事な方の足をタイヤで踏まれた。
 再び俺は絶叫し、再び恭介さんはペシペシと車体を叩くこととなった。
 ああ、もうホント俺大丈夫か?

 


「や~め~ろ~!!」

 


 今度も恭介さんの命令に従い(?)、野生の車は俺の足を解放した。
 まるで親に怒られた子供が嫌々従ったみたいな態度で、最後に足の上でタイヤの方向を変えた。
 涙目で痛みに体を振るわせる俺に、野生の車から降りて恭介さんが近付いた。
 「あ~あ」とか言いながら、踏まれたり挟まれた俺の足の具合を見てくれる。
 なんかメチャクチャ格好悪いけど、これはこれで嬉しかったりする…。
 心配してもらうってのってさ、大切に思われてるみたいで嬉しいんだよなぁ。

 


 なんて思いつつ顔を上げた時、俺の目に野生の車が映った。

 


 いつの間にかライト(目?)がこっちを向いている。
 なんか睨みつてるようなそのライト(目?)を見た瞬間、俺は唐突に理解した。
 何故、俺が野生の車に足を挟まれたり踏まれたりしたのか。
 何故、実さんが野生の車にキ…ツイ態度を取られるのか。
 一瞬首を横に振りかけた俺だけど、考えれば考えるほど納得しちまう。
 そうなんだ。
 そうなんだよな。
 恭介さんと実さんは五人の仲で一番仲が良い。
 俺から見ても解かるぐらいなんだから、きっと野生の車だって知ってる。
 そして、今日俺は恭介さんと二人だけで恭介さんお気に入りの場所へ行く。
 勿論そのことを野生の車は知ってんだろう。

 


 間違いねぇ。

 


 野生の車は―――コイツは恭介さんが異様に好きなんだ!!
 だから恭介さんと一番仲が良い実さんにキツくて、
 二人だけで出かけようとする俺にも同じくらいキツイんだ!
 んで、今俺を睨みつけてんだ!!
 つーかコレ二人っきりじゃねぇし!!
 思いっきりお邪魔虫付じゃねぇか!!

 


「健太? 傷痛むのか? 病院行くか?」

 


 衝撃の事実にショックを受ける俺を激痛に苦しんでいると判断したらしい。
 恭介さんは俺の腕を肩に回し立たそうとした。
 ついついそれに甘えようとした俺だけど、そうなると機嫌が一気に悪くなるヤツが一台…。

 


「ペガサスサンダー? どうかしたのか?」

 


 怒っているらしい野生の車に恭介さんがほけっと聞く。
 ホントに心通じあってんの…?
 俺の疑問をよそに、ますます機嫌が悪くなっていくらしい野生の車と1人全然気付いていない恭介さんの溝は深まっていくように見えた。

 


「あー、これはもう恭介さんお気に入りの場所には行けねぇかなぁ…」

 


 俺は空を見上げて盛大な溜息をついた。




 


 

 



作品名:未知なる強敵 作家名:uhata