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こらぼでほすと 逆転3

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夏の名残ともいえる台風が近づいている。先に張り出していた秋雨前線が、かなり盛大に活動していて、結構な雨を降らせている。さすがに、こういう天気だと客は来ない。がらんとしたフロアで、キラと悟空がカラオケの振り付けを練習したり、いつものように三蔵がカウンターでトダカと飲んでいたりする。アスランは八戒と共に、事務室で作業しているし、ハイネと悟浄は、バカ話を展開しているという、実に潰れそうな店の様相だ。
 しかし、ここでは、これは問題にはならない。できるだけ赤字にしておけ、と、オーナーから厳命されているし、会員制で選ばれた客しか来ないから、わざわざ、客引きしてくることもないからだ。
「八戒さん、ロックオンさん、どうなんですか? 」
 事務室で、アスランは、切り出す。キラやシンたちが、見舞いに行きたいと騒いでいるのだが、遠慮してくれ、という鷹の一撃で引いている。だから、どうしているのか、よくわからないのが現状だ。じじいーず(キラ命名) が、ロックオンに関する一切を、取り仕切っているので、ほとんど、わからない。先日、事情を知らなかったイザークとディアッカだけは見舞いに出かけたが、「よくない。」 と、一刀両断だったし、ドクターたちの移動を担っているヘリ操縦担当のハイネに至っては、「死にそうだ。」 と、怖ろしい感想を漏らしていた。心配するな、と、言われても、それでは余計に心配だ。
「僕も詳しいことは、お聞きしていません。30代以下は、顔を見せないでくれ、と、言われてますからね。」
 もちろん、八戒もロックオンとは同年代に該当しているから、見舞いにも行けていないのは、アスランたちと同様だ。
「キラが顔を出したら、悪化するっていうのは、わかんるんですけどね。でも、刹那から頼まれているから、責任があるって思ってるんですよ。」

 組織へ戻ることになった時、刹那は、キラに対して、親猫のことを面倒みてくれ、と、珍しく頭まで下げて頼んでいった。だから、キラも、その責任は担うため頑張ろうと思っていたのだ。それが、MSの整備や訓練に別荘へ出向くのはいいが、親猫の静養の邪魔はするな、と、じじいーずから釘を刺されたので行けなくて、ぷんすか怒っている。
「今の所は、行かないであげてください。・・・たぶん、たまには甘やかしてやろうというじじいーずの親心みたいなものですから。」
「それはわかるんですけどね。」
 30代以下の出入り禁止というのは、そういうことだった。いつも、マイスター組の責任者というか親猫として気張っているロックオンに、それを感じさせずにゆっくりさせるとしたら、それより少し上のメンバーだけで世話してやったほうがいいだろうとの判断らしい。確かに、キラが出向けば、ロックオンは、何かと世話をしたがることは眼に見えているから、その判断は正しいと八戒も思う。
「八戒さん、明日、直撃だが、どうする? 」
 事務室の扉を開いて、トダカが顔を出す。今夜も、相当な大雨だが、明日、台風が直撃すれば、豪雨が予想される。それでは、交通機関なんかもストップする可能性もあるから、スタッフたちの移動も問題になる。
「休みでいいですね。予約もありませんし、そんな豪雨の中、遊びに出てくる酔狂な方がいらっしゃるとも思えません。」
「そういうことだな。」
「トダカさん、ロックオンさんの様子はどうなんですか? 」
「ほとんど、寝暮らしているらしい。まあ、無理もないだろうね。・・・・アイシャさんが手伝ってくれているそうだ。」
「あーーとうとう、アイシャさんまで・・・・鷹さんはマリューさんも巻き込んだとおっしゃってましたけど。」
 虎は、ここのところ、ラボのほうへ詰めていて、ダコスタだけがバックヤードを担当している。鷹は、指名があればやってくるが、それ以外は、こちらも別荘で寝泊りしている。この間、久しぶりに指名があったから出て来たので、親猫の様子を尋ねたら、「マリューにいい様に遊ばれて泣いてた。」 と、コミカルに教えてくれたのだ。
「あはははは・・・マリューさんもアイシャさんも姉御肌だから、ロックオンくんにはいいんじゃないかな。」
「まあ、僕らが監視するよりは有効でしょうね。」
「明日、休みなら、続き様に土日になるから、明日から、私も見舞いに行って来るつもりだ。」
 もう少しだけ、見舞いは遠慮してくれ、と、八戒とアスランに、トダカが断りを入れる。早くどうにかしないと、と、焦らせるようなことはしたくない。生き急いで消えていく若い者を、トダカは見送ってきた過去がある。アマギたちを押し留めて、キラの許へ寄越したのも、キラなら消えさせずに、残してくれると信じたからだ。全員とはいかなかったが、キラは無事に、彼らをオーヴへ返してくれた。最前線でない場所に、トダカは移ったが、今なら、自らで止めてやれる。まだ慌てなくても先はある。それを見定めてからでもいいのだと教えてやりたい。


 台風が来ています、と、朝から診察してくれたドクターが外の大雨について、そうコメントした。今夜夕刻に上陸すると、ニュースでもやっている。この地域では、夏から秋にかけての気象だという。昨日辺りから脱力感が強くて、何もする気が起きない。身体が重い、と、ドクターに告げたら、気圧の加減でしょう、と、説明された。
「人間の体調は気象にも影響されるものです。低気圧が近づくと、湿気や温度の変化が起こります。それを人間の身体は敏感に感じ取る。おそらく、あなたの場合は、日頃の行いと、その気圧の変化の複合技でしょうね。」
 元々が、ここに住んでいた人間ではないと、それはより顕著に現れる、とも言われた。確かに、この温度変化の激しい気候には慣れていない。だいたい、台風なんてものと遭遇することだって稀だ。慣らすしかないなら、直接、触れたほうがいいのか、と、ロックオンは、窓を少し開けて、そこに座り込んだ。大きな窓の外は芝生に続いているが、ちゃんと軒先があるから雨が降り込む心配はない。午後から風が激しくなって、庭の木を揺らしている。テレビから流れるニュースで、そろそろ上陸するのだと告げている。激しい雨と風が、ときたま自分の頬に感じられて、こんなもんで影響されるなんて、人間は弱いもんだなーと、感心した。



 虎は珍しい来訪者のために、コーヒーを点てている。さすがに、この雨と風では、普通のへりでは着陸が難しいから、と、垂直離着機でやってきた。もちろん、それは、オーヴのものだ。
「まあ、この雨だ。店は休むほうがいいだろうな。」
「時間が、もう少し遅いなら開けてもよかったんだが、さすがに、お客様も外出はできないだろうからね。」
「・・・・少しは落ち着いてきた。」
「それは、よかった。まあ、のんびりと、ここで週末は話し相手でもさせてもらうさ。虎さんは、明日、帰ればいい。」
 台風なんてものは、通り過ぎてしまえば、何の影響もない。今夜一晩我慢すれば、明日は台風一過の青空が広がる。今夜は、衛星との通信設備や管制システムに異常が発生しないかを見守る仕事があって、虎と鷹がラボに残っている。ラボ自体にも、専属の人間はいるのだが、今日は早めに帰宅させている。
「親衛隊が大挙してくるからかい? トダカさん。」
作品名:こらぼでほすと 逆転3 作家名:篠義