こらぼでほすと 逆転3
「別に、俺が指示しているわけじゃないぜ。キラが、歌姫様に、「お願い」って、小首傾げたから、そういうことになってんの。・・・せつニャンがな、悲しくないようにするには、おまえさんたちが必要で、特に、とんでもない暴走して置き去りにしたママは、生きててもらわにゃならんのよ。」
「ちび猫を支えるのに、それだけのものが入用ということだ。」
「そう聞いてると、キラって、怖い生き物だ。」
たった一人のために、それが、悲しくないようにするという理由で、これだけの大掛かりなことが行われている。それらの原動力がキラの一言だというのだから、ある意味、怖ろしい。
「そうでもないさ。キラ様の望みは絶大だが、きみたちの組織に肩入れしたくなったんだと思うよ。矛盾した理念を完遂しようとする、きみたちの行動は、キラ様には応援したいことなんじゃないかな。」
かつて、第三勢力という名称を冠せられていたキラたちだって、矛盾していたものがある。人類の平和なんてものは、それぞれに違う。プラントの提唱を喜んで受け入れたものだっていただろう。だが、それでは、自分自身で可能性を模索できなくなるから、反対した。未来を決めるのは、自分自身でなければならない。だが、それは強いものの言い分でもある。誰かに依存して、楽に生きたい人間にとっては厳しい世界でもあるからだ。
紛争を根絶するために武力介入で鎮圧する。これも、誰にでも正しいものではない。そこで犠牲になるものがあるから、その関係者は憎しみを募らせて、さらなる紛争に発展する可能性があるからだ。
キラ様には、その部分で同調するものがあるのではないかな、と、トダカは、自分の考えを吐露する。だから、歌姫も、その意図を汲み取って全面協力体制なんてことになっているのだろう。
「そういう考え方はキライじゃないぜ、俺は。ママも腹括ってるから、できたんだしな。」
「まあ、覚悟はしました。」
「それで充分、個人としての罰は受けていると思うよ、ロックオン君。・・・きみは、今までやってきたことが、けっして正義だとは思っていない。だからこそ、咎は受けると言うんだからね。その気持ちがあればいいんだ。」
「・・はい・・・」
「それでも、納得できないなら、俺がお仕置きしてやるぞ? 」
「だからな、鷹さん。それがよくないっていうんだ。」
大人しく拝聴しているロックオンの肩を抱いて、それなりーのホスト声で囁く鷹の手を、ぱこんと虎が叩き落としている。なるべき気持ちを沈ませないように、鷹が陽気に振舞って、その場を和ませている。それがわかっているから、虎も、ノリに付き合っている。
食事が終わって、食後のコーヒーを飲む頃に、あれほど激しかった風雨も、すっかりと止んでいた。
翌日から、ロックオンは、三日ほど寝込んだ。気が抜けて、体調の悪さを自覚した途端に、高熱で起きられなくなったからだ。
作品名:こらぼでほすと 逆転3 作家名:篠義