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『飴』


(猫エドです)



ハボックが外回りから帰ってくると、東方司令部の廊下には見知った姿があった。
ちっこい姿、赤いコート、金髪おさげにネコの耳。隣にはいつも一緒の、ずっと背の高い弟。
「ようエド、アル、来てたのか!」
「少尉、こんにちは!」
「しょうい、しょうい~」
エドがてけてけてけっ、と駆けてくる。金色の丸い目をきらきらさせて、いつにも増してご機嫌だ。
「おう、どうしたエド」
小さな頭を耳ごとくしゃくしゃっと撫でてやれば、満面の笑みで両手の拳を突き出した。
「どーっちだ!」
「あん?」
にっこー!と擬音が後ろに広がりそうな笑顔で、エドが言う。
「どっちだー?」
突き出された両手のぐーを見比べる。
なるほど、どっちかに、何かを握っているんだな。
「何が入ってるんだ?」
「飴!」
「アメ?」
「うん!フュリー曹長にもらった!」
「ほー」
小さな拳を見比べる。白い手袋でぐーなものだから、手まで猫の前足のようだ。
「よーし、当てたらその飴、俺のもんな」
「えー?」
ぷっと膨れる柔らかそうなほっぺた。
可笑しくなって更に言う。
「そういうもんなんだ。それとも負けるのが嫌か?」
そう言ってやると負けず嫌いのチビッ子は案の定乗ってきた。
「負けないもん!」
そしてむっと口を引き結び、ぐっと両こぶしを突き出す。
「さーて、どっちかな?」
エドはじっと俺の顔を睨む。すごい真剣だ。
こっちもつい緩んでしまう頬を引き締め、真面目な顔でエドの手を見る。
右手が機械鎧だから微妙に拳の大きさが違うので、かえってどちらに握っているのか分かり辛い。
まず右手を見る。
ぴこ。
エドの耳が動く。
左手を見る。
へな。
エドの耳が寝る。
右。
ぴこぴこ。
左。
へな。
右。
ぴこぴこ。
左。
へな。
・・・わ、分かりやすすぎる・・・!
その間もエドは真剣な顔で、全く表情を変えていない、つもりだ。
噴き出しそうになるのを堪え、真面目な顔を保ったまま、おもむろに左手を指差す。
「こっちだ」
へなあ~。
エドの耳が金色頭に張り付くほどに寝る。
「ち、違うもん」
違うかよ。
「そうか?なら、手、開いてみせてくれよ」
「う、ううう」
しょげかえった顔の前で両拳をそろえたまま、しばらく逡巡した後。
おずおず、と開かれた小さな左の手のひらには、セロファンに包まれた赤い飴。
「ほーら、当たりだ」
「う」
「じゃあ、これ、もらおうかなー?」
と、手を出す振りをしてやったら。
「ダメー!」
くるりと背を向け、逃げていってしまった。

「ははは。もらわねーよ」
かけた声が聞こえているはずなのに、アルの元まで行ったエドは、ううう、とまだ情け無い顔で唸っている。
「ぐ、偶然だもん。確立は二分の一だもん」
「じゃあ、もう一回やるか?」
そう言ってやると、寝ていたエドの猫耳が、ピン!と立った。
「おう!」
くるりと背中を向ける。飴を握りなおしているらしい。赤いコートの裾から覗く金色の尻尾の先が、耳と同じようにぴこぴこ揺れている。
再び、これ以上無いような真剣な顔で、両手のぐーを突き出す仔猫。
右。
へな。
左。
ぴこ。
右。
へな。
左。
ぴこ。
俺はもう、笑いを堪えきれずに片手で口元を抑えながら黙って右手を指差す。
「あ、う」
世にも情けない顔で、エドは胸元に引き寄せた両手を開く。
右手には飴。
「どーして分かるんだよー」
眉を下げて口を尖らし、上目遣いで睨んでくるものだから、俺はついに笑い出してしまう。
「うー笑うな!」
「はははは。どうしてだろうなー。さて、部屋に行こうぜ」
俺はエドの頭とアルの肩を押して、執務室へ向かった。

作品名: 作家名:utanekob