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つわものどもが…■01

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そんな遣り取りも、俺を思ってくれての事だよな。俺が「Thanx」と呟くように言うと、二人はわずかに目を細めた。本当に、この絶妙な距離感が有難い。
「まぁ…アレだ、詳しくは知らねぇが家族も同然なんだろ?ちゃんと許可もらえ」
それはほぼ不可能なのを分かってて言ってやがんな。
「I know…あっ、俺が小十郎にバイトの許可までとるとか、誰にも言うなよっ」
実際、小十郎に黙って何かをやりとおすなんてのは無理だ。子供の頃から一緒だからか、隠し事など直ぐにバレちまう。
「政宗は子供の頃から世話役がいるのが恥ずかしいのか?」
元就さんが目元を緩めて聞いてきた。何時も静かな表情のこの人は一見して冷たい印象を持たれがちだが、知ってみれば思った以上に面倒見のいい人だ。まぁ相手を選んでいるようではあるが、今のところ俺もその選ばれた中にいるらしいのは正直嬉しい。
「Hum,地元じゃあ別に気にしちゃあいなかったが、こっちでは…ちょっと引かれたっぽいからなぁ」
俺は子供扱いされるという意味で小十郎が付き従うのが恥ずかしかった。しかし同じ科で知り合ったヤツ等に溢したところ、気持ち悪いとまで言われたのは軽くショックだった。俺だけじゃなく、小十郎まで馬鹿にされた気がしたから。
「そのような事、そなたが気にするな。瑣末な事よ」
「…かも知れねぇが、」
「あの男と政宗の培ってきた過去に、何の思慮もない愚か者がほざく戯言に過ぎん」
うん、言う事が辛辣すぎるよ元就さん。でも俺には欲しい言葉だった。
「それに、恥ずかしい事ではないだろう。恥ずかしいというのは、」
元就さんがそこまで言ったところで、元親が急に元就さんに襲い掛かった。またしても展開についていけなかった俺は左だけの目を見開くしか出来なかった。
顔に目掛けて伸びた元親の手を、動じる事なく元就さんが掴み取る。そして、テーブルの下で「ダンッ」という音がしたと同時、元親の顔色が変わった。顕わになっている右目にじわりと涙が滲んでいる。Oh…that’s tough.(可哀想に)手入れの行き届いたブーツの踵で思いっきりやられたな、こりゃ。
「恥ずかしいというのはな、」
「もとなりぃ〜っ」
テーブルに突っ伏して傷みを堪えながらも元親は元就さんの発言を阻止しようと試みる。まぁ無駄な抵抗だろうが。
「これ、ここに情けなく蹲る大男、」
「元親?」
「今では後輩にアニキだ何だとちやほやされておるが、幼き頃は女児の格好をしておったのよ」
「……pardon?」
「き、きくな…まさむねっ」
まだ悶絶しているくせに必死だな元親。て言うか、そんな凄い一撃だったのか…元就さんには逆らわないでおこう。
「何度でも言うてやろう。この隣で情けない声を出しておる大男は、就学するまで女児の格好でな」
どえらい過去が暴露されてねぇか、おい。
「あぁ実家に写真が残っておったか…今度取り寄せておいてやろう」
「Are you sure?」
「てめ…覚えてやがれっ」
ようやく復活の兆しを見せた元親だが、
「永劫、覚えていてやろう。貴様が女児の格好をして姫呼ばわりされておった頃を、な」
元就さんの追い打ちと涼やかな笑みに再びテーブルに沈んだ。
「政宗よ、これが秘匿すべき過去というものだ」
既に隠されてねーけどな。

俺を取り巻く環境が変わった今も、俺はシロップの海を泳いでいるらしい。




01:知られたくない過去

(お題提供:エソラゴト様 http://eee.jakou.com/)

** あとがき **
お約束的なネタですみません
あと長過ぎてすみません
** 2011.2.10 **
作品名:つわものどもが…■01 作家名:久我直樹