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酸素

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頭がぼーっとする。ああ、でも外が明るい。そろそろ起きないと。

うっすら目を開けると、すぐ目と鼻の先に心臓が止まるほど濃い顔があって、驚いて目が覚めた。なんで初号機にこいつが乗っているんだ!夢か?夢なら良い。丁度良い距離にいるからぶん殴っておこう。ああ、しかし、こいつがいるってことは、ピクミンは大丈夫だろうか、またひき殺されてやしないだろうか。

「ピックミーン」

ああ、よかった、さっき連れてた分全員いるな?1、2、3、4、5……うん、全員居る。

と、ピクミンの数を確認して、ようやくわたしはここがドルフィン初号機ではないことに気がついた。初号機じゃないならここはどこだろう。周囲を観察すると、見慣れたような見慣れないような白い風景だ。どうやら医務室のベッドの上で寝ていたらしい。情けないながら倒れたみたいだ。やれやれと、ヘルメットに手を当てようとした。癖になりつつある手が、いつもの場所で止まらず、自分の顔にあたって、わたしはびっくりして飛び跳ねた。
ヘルメットをしてないじゃないか!

「オリマー」

死ぬのか?わたしはもう死ぬのか?そう言えばなんだか息苦しい。ああ、死ぬなら苦しくない方がいい。でも死にたくない。死ぬ前に一度家族の顔がみたい。誰かわたしを何でもいいから宇宙船でホコタテ星まで運んでくれ。途中で死んだって構わないから家族の顔を一目見たい。あれ?途中で死んだら家族の顔は見れなくないか?それは困る。じゃあどうすれば死ぬ前に家族に会えるんだ。マスターハンドに頼んでみようか。

「オリマー!」

耳元で大声を出されて、わたしは再度飛び跳ねた。鼓膜に響く声だ。ベッドから転げ落ちそうになったところを声の主に掴まれる。

「落ち着けオリマー!落ち着いて深呼吸しろ、大丈夫だから」
「ピックミーン」

男はわたしの両頬を手で挟んで、無理やり目線を合わせてきた。男の力が強いものだから、首が変な方向を向いて若干痛い。こう辛い体勢にされると、抵抗する気力も失せる。
ふぅーっと息を吐いてみせる男に合わせて、わたしも息を吐いてみる。呼吸を忘れていたのではないかと思うほど、息を吐くという動作がぎこちなかった。彼に合わせて何度も呼吸をしているうちに、徐々に息苦しさもなくなっていく。生命維持装置越しではなく、人と同じ空気を吸っている。気圧の変化もなく、猛毒の酸素を取り入れても、死んでいない。ほっとするとともに、体の力が抜けた。

「ほら、宇宙服なんてなくても大丈夫だろう」

ニヤっと無駄に自信に満ち溢れた笑みを浮かべるファルコンに同意するのも悔しくて、まぁ、なんてあいまいな言葉を返す。するとわたしの頬を押さえていた手が、今度は両頬を抓みだした。両側にひっぱられて、痛い。手で払おうとすると、余計に頬が伸びて痛い。

「まったく、そんなに怖がらなくても良いっていうのに。おまえ、気絶したあとも息をしてなくて、呼吸を復活させるのに苦労したんだから。あやうくフィギュア化するところだった」
「……そもそもの原因を作りだしたのは君じゃないか」

彼はタイムリミットというものを経験したことがないから、音速を超える事故ですらしれっとした顔ですませられるから、そんなことが言えるのだ。生命維持装置のバッテリーが十分あるなら良いのだが、そうでなかったら二度とあんな経験はしたくない。――フィギュアになったせいなのか、死んだ記憶だってあるっていうのに。

「だがまぁ、助けてもらったのには礼を言う。だから早く離さんか」

いつまでも抓られたままでいるというのは腹が立つものだ。わたしくらいの年齢の者にそんなちょっかいをだすやつなんか今まで居なかったから、余計に腹が立つ。ファルコンの場合は誰にでもそうなんだろう。恐ろしくマイペースなやつだから。

そんなマイペースな彼は、わたしの頬をひっぱったまま、にかっと笑った。

「それじゃあ、ディナーに行こうじゃないか。皆と喋りながら食べる飯は、とっても美味いぞ」
作品名:酸素 作家名:やすもの