ぐらにる 眠り姫2
「もちろんだ。・・・・くくくくく・・・だが、きみが、そこまで、眠り姫にご執心だとは思わなかったよ。」
「癒されるんだ。」
「そう、それはいいことだ。」
友人は、微笑んで、私の肩を軽く叩いた。戦ったであろう相手だ。だが、今は違う。どこか壊れていて、どこか優しくて、なんとなく体温が感じられる関係が心地よい。今更、それを返すつもりはない。
翌々日、朝から友人の眠り姫を車に乗せた。目的は告げたので、別に大人しいものだ。後部座席に寝転がって、いつものように眠っている。
行きは、何もなく無事に軍病院まで辿りついた。検査は、実際、予約していたので、それをこなして、午後から、また、来た道を戻る。途中、ショッピングモールの駐車場へ乗り入れた。これも計画の一部だ。
「休憩してもいいかな? 眠り姫。」
「うん」
「食事に付き合ってくれる気はあるかい? 」
「さあ?」
今日は、まともではないらしい。ぼんやりとして動きも緩慢だ。だが、このほうがいいかもしれない。わからなければ、わからないままに終わったほうが、眠り姫も気に病まないだろう。とりあえず、連れ出して、公園のベンチに座らせた。
「眠っていればいい。」
横にして、スプリングコートを上から被せた。ファーストフードを買って戻って来る。それまでに、眠り姫が攫われたら、一番有難い展開だ。
三十分後に、そのベンチには人影はなかった。やはり、ここで、そうくるか、と、慌てることもなく、連絡だけは入れた。すでに、友人は、レーダーレンジを最大にして、眠り姫を追いかけているだろう。