lost heven 02
「もう、この人と戦う必要なんてないんだよ!」
「じゃあ、今ここで殺さなかったら、後でこいつらか、こいつらの上司に殺されるんだぞ。」
「・・・!」
「だからここで殺してやるよ!」
リジェは思い切りナイフを投げた。反応が遅れたエドは思い切りそれをくらってしまった。幸い心臓に直撃しなかったが右側の脇腹に直撃した。
「ぐっ・・・」
「ははっ・・・ウラニウムって直で触ると危ないんだぜ。」
患部を手で隠しながらエドは薄れてゆく意識の中、軍人の声・・・あれはきっと、中尉のものだ・・・と考えていた。
「エルリック少佐の意識がありません!」
「子供を焼き殺せ!少佐は、つれてゆけ!マスタング大佐がそれを望んでいるからな」
「鋼の錬金術師はもう二度と戻ってこないぞ、ウラニウムと自分を錬成しちまったからな。」
リジェは気づいていた、エドが投げられたナイフに忍ばせていたウラニウムをいや、ウラニウムをはめ込んだブレスレッドとともに自分の傷を錬成して封じたことを。
「ウラニウムを体内に取り込んで、身体の中から滅んでゆけばいい」
「くそっ、死ね!」
ぐさり、肉に刃が刺さる音を聞いた子供らが大声で叫んだ。
「リジェ兄様ぁぁぁ!!!」
苦痛にも聞こえるその叫びには、今までの指導者が消えたこととこれから自分すら殺されてしまうという恐怖も含んでいた。
その日、戦場のD地域では子供たちの金切り声が響いた。
「鋼のっ!!」
バタバタと、ロイはエドの眠っている病室に駆け込んだ。あの日からちょうど一週間、戦争も終わり南部の国は降伏し事後処理も終えようやくエドの元に来れたのだ。
「大佐」
「アルフォンスどうした?それより鋼のは?」
「どうして、どうしてもっと早く来てくれなかったんですか!!」
「私も忙しかっ・・・!」
首を掴まれわなわなとふるえているアルは必死にこう言った。
「兄さんは、兄さんはもう二度と兄さんじゃなくなっちゃんですよ!」
「・・・は?」
「だから、もう二度と目に光もない生き人形見たくなっちゃうんだよ!もうどうすればいいか…」
「な・・・に?」
驚きを隠せないという顔でロイはアルフォンスを見た。
「本当・・・なんです。兄さんはもう、死んだも当然の状態なんです。」
「・・っくそっ!!」
壁にどんっと拳を叩きつける。
「すまない・・・すまないエド。」
「大佐、先程はすいません」
「原因は…」
「え?」
「原因は判明しているのかね?」
「あ、はい一応。」
「言ってみなさい」
「兄さんは、自分で脇腹の傷口を塞いだんです。でも、その時ウラニウムっていう物質を一緒に身体の中に取り込んだらしくて」
「身体の中に・・・?」
「はい、ウラニウムって素手で触ると危ないし・・・その上身体の中・・・血管をとおって身体中に広がってしまうんです。」
「つまり、細かくなったウラニウムが原因でという事かね」
「はい、あの兄さんに色んな景色を見せてくれませんか?」
「え?」
「もう、後が短いって言われたんです。ウラニウムによって身体が浸食されているんです。」
「そう・・・か。」
「僕も、一人で元の姿に戻るわけにはいけないんで、文献漁って賢者の石について調べてみます。それで、もしまだ兄さんが生きてたら・・・生きていたら兄さんに見届けてもらいたい。兄さんを元に戻します!」
「わかった。私もできるだけ力を貸すように中尉に言っておこう。」
「大佐は・・?」
「私は軍を辞めるよ。エドを沢山の場所に連れて行ってあげるためにね。」
「そんなっ!」
「これが私の出した答えだ…エドが眠りから覚めたら直ぐにでも旅の準備をする。」
「それでこれなんですけど」
「…これは?」
アルがロイに渡したのは、小振りのブレスレッドだった。
「兄さんが倒れていた近くに置いてあったものなんだそうです。」
「そうか、」
「それで、これを兄さんの右手に付けて下さい。」
「・・・?」
「これを見れば、罪の証となると思うんです。戦争で失ったものの・・・」
その、アルフォンスの言葉はロイにとって重くのしかかった。そのとき、がさっ、とエドのいるベットから音がした。
「エド?!」
「兄さん」
そこに居たのは上半身をベットの背にもたれ掛かったエドだった。顔を横に向け空を眺めているエドの瞳に光はなかった。
「エド、もう少し待っていろ。この狭い鳥籠から飛ばしてやるよ。」
ロイはそう言ってエドに優しくキスをした、涙交じりの優しいキスを。
「エド…エド・・・」
プロローグ
あれから幾月、エドとロイはたくさんの国を見ていた。エドは、歩くことが出来ず車椅子で、それは沢山の景色を見た。その間にロイは軽く鬱のような状態になっていた。
「エド、ほら大空だよ?蒼い蒼い、キミの望んだ空だ。」
「・・・ゲホッ。」
不意に起きる発作が、エドの身体を犯しつくしているウラニウムが原因名のはもう忘れた・・・いや、忘れようとしたロイは優しげにエドの背中を擦った。
「えど、エドエドエド・・・エドワード!昔の様にバカと言ってくれよ?エドワードっ!!」
エドの車椅子の後ろでぼたぼたと涙を流すロイはこう思っていた。
「ここは花畑だよ?ここで死んでしまうのも悪くないな?なぁエド・・・返事をしてくれないか?」
「もう、駄目だよ?」
不意に聞こえた聞き慣れない声にロイは後ろを振り向いた、そこにはルクが居た。
「せっかく幸せになれると思った矢先にこれじゃあ、もうあそこに掛けるしかないね。」
「キミは、何のために私たちにあんなこと言った?」
「面白いから、いろんな世界の君たちを見てね思ったんだよ。どうしたらこの関係が面白く変わるかなってさ・・・でね、」
ルクは空を見上げ言った、それはひどく妖艶な顔で
「好き合ってるのは知ってたからちょっと手伝ってあげたんだ。ここでは戦争を持ちだしてみたけど効果は絶大だね。面白かったよ」
「ま…待て、じゃあキミは暇だから暇だからエドをこんな目にあわせたのかね?」
「ん~・・・それはまだ言えないな」
「じゃあ、最後に一つ・・・君の正体を教えろ」
殺気の満ちた顔でロイはルクを見つめた。
「神様」
そう言い残して、ルクは手を振りながら消え去った。
「来るべきは、神戦のためだなんて口が滑っても言えないよね。」
次章予告:慈悲の証
「このリングが、アンタとオレを繋いでくれてんだよな」
エドは左手を見つめながらくすりと笑った。二人の絆と呼べる指輪は、黒い光を放っていた。
まさか、最愛の人に裏切られるなんて思いもよらなかった。
―なんで、ロイ・・・指輪してないんだ?―
シャンバラを舞台とし、裏切り、そしてドラッグ漬けとなるエド(を、書きたかったオレ)
救いは薬だけだったんだ。ごめんなロイ・・・だって、アンタが先に裏切ったりするからさ。
「エド、エドワード?」
・・・ロイ?
神戦の始まりは、
今。
作品名:lost heven 02 作家名:空音