【現パロ】清涼剤
「よぉ」
玄関で俺を出迎えた男は上半身裸で片手に手動冷風機(つまり団扇)を持っていた。
「チカちゃん、それが客を出迎える格好かよ」
「伊達だからいいだろ?」
「俺だから良かったものの」
「伊達以外にいきなり来れる奴はいねぇだろ?」
「まあな」
少しの優越感と共に苦笑する。
社員寮として使われているこのマンションはセキュリティが厳しく、同フロア以外の行き来はかなり難しい。
「この暑いのに冷房入れたらどうだ?」
リビングのソファーに腰を下ろしてそう言うと、チカちゃんは、省エネ、と答えた。
確かに省エネではあるが、チカちゃんが冷房をけちらねばならない稼ぎでないことはわかっている。
「金、貯めてんのか?」
「…いや…」
返答までに明らかに間があったのは何だ?
「チカちゃん、ホントは…」
「あー…」
チカちゃんがいきなり声を上げたので、俺の言葉はかき消された。
「何だよ」
「水しかねぇな。氷はあるんだけどよ」
「ああ、作りゃいいじゃねぇか」
俺は立ち上がると勝手知ったるチカちゃんのキッチンでコーヒーを淹れ始めた。
俺の好きなアイスコーヒー用ブレンドの豆は何故か常備されている。買っておけ、とお願いした記憶はない。
ふと、背中から涼しい風が流れて来たので振り返ってみると、チカちゃんの姿はなかった。
ただ、エアコンの運転ランプが来た時とは違って、光っていた。
背の高めのグラスに氷をいっぱい入れて、熱いコーヒーを注ぐ。
出来上がったアイスコーヒーをリビングのテーブルにおいて、チカちゃんを探しに行く。チカちゃんは私室兼作業部屋で、バソコンに向かっていた。
「チカちゃん?」
「あ、コーヒー出来たのか?」
「ああ、リビングに置いてある。持ってきた方がいいか?」
「いや、行く。涼みたいし」
チカちゃんは椅子から立ち上がると、大きく伸びをしてから、俺の横を通って、リビングへ向かった。
「ああ、やっぱりうめぇな、伊達が淹れると」
「褒めても何も出ねぇぞ」
「素直な感想だっつうの」
チカちゃんは俺の横でソファーに大きく体を預けている。
テーブルを挟んで向かい側にもソファーはあるが、お互い、いつの間にか隣同士に座るようになった。
玄関で俺を出迎えた男は上半身裸で片手に手動冷風機(つまり団扇)を持っていた。
「チカちゃん、それが客を出迎える格好かよ」
「伊達だからいいだろ?」
「俺だから良かったものの」
「伊達以外にいきなり来れる奴はいねぇだろ?」
「まあな」
少しの優越感と共に苦笑する。
社員寮として使われているこのマンションはセキュリティが厳しく、同フロア以外の行き来はかなり難しい。
「この暑いのに冷房入れたらどうだ?」
リビングのソファーに腰を下ろしてそう言うと、チカちゃんは、省エネ、と答えた。
確かに省エネではあるが、チカちゃんが冷房をけちらねばならない稼ぎでないことはわかっている。
「金、貯めてんのか?」
「…いや…」
返答までに明らかに間があったのは何だ?
「チカちゃん、ホントは…」
「あー…」
チカちゃんがいきなり声を上げたので、俺の言葉はかき消された。
「何だよ」
「水しかねぇな。氷はあるんだけどよ」
「ああ、作りゃいいじゃねぇか」
俺は立ち上がると勝手知ったるチカちゃんのキッチンでコーヒーを淹れ始めた。
俺の好きなアイスコーヒー用ブレンドの豆は何故か常備されている。買っておけ、とお願いした記憶はない。
ふと、背中から涼しい風が流れて来たので振り返ってみると、チカちゃんの姿はなかった。
ただ、エアコンの運転ランプが来た時とは違って、光っていた。
背の高めのグラスに氷をいっぱい入れて、熱いコーヒーを注ぐ。
出来上がったアイスコーヒーをリビングのテーブルにおいて、チカちゃんを探しに行く。チカちゃんは私室兼作業部屋で、バソコンに向かっていた。
「チカちゃん?」
「あ、コーヒー出来たのか?」
「ああ、リビングに置いてある。持ってきた方がいいか?」
「いや、行く。涼みたいし」
チカちゃんは椅子から立ち上がると、大きく伸びをしてから、俺の横を通って、リビングへ向かった。
「ああ、やっぱりうめぇな、伊達が淹れると」
「褒めても何も出ねぇぞ」
「素直な感想だっつうの」
チカちゃんは俺の横でソファーに大きく体を預けている。
テーブルを挟んで向かい側にもソファーはあるが、お互い、いつの間にか隣同士に座るようになった。