てのひら、ひとひら
「………は、…」
銀時が笑う。笑みの形に広がる口許から溶け出た弾む白い息には、嬉しさと楽しさとが滲んだ。土方をじっと見詰め、たまんねーな、と声なき呟きを落とす。
「……おら、行くぞ。もたもたしてたら近藤さん達が見回りから帰って来ちまうじゃねーか。テメーのせいで、すっかりタイムロスだっつーの!」
ぐっと喉を鳴らし言葉に詰まった土方は、視線を振り切るように、ぐいと銀時の手を引っ張った。それを合図に、ざしざしと雪を蹴散らしながら土方が大股に歩き出す。
手を繋いだ侭の銀時は、当然引っ張られてつんのめるが、土方は一切お構いなしだった。
「おわっ!ちょっ、待て待て待て転ぶ、滑る、押し倒される犯されるぅううう!!」
「誰がだぁあああああ!!」
繋いだ侭の手は解ける事はない。
もう空っぽではない掌の中、ひとひらの温もりを抱き締めて歩いて行く。