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ぐらにる 眠り姫4

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壊れている日の眠り姫は、おかしな言動だし、行動も不可思議だ。すたすたと外出しようとしているので、どこへ、と、尋ねたら、「草と花」 という返事があった。会話としては成立しないのだが、まあ、意味はわかる。たまには、付き合おうと、歩いて行く眠り姫の背後から従った。

 そういえば、眠り姫が散歩の途中で眠るところを拝んだことはない。だいたいが、私が働いている時間に、眠り姫は歩いているし、私は、そこまで酔狂でもないから、後をつけたりしないからだ。

 施設の周りには緑地帯がある。そこには、休憩できるようなベンチもあるし、広い芝生もある。何も考えていないだろう眠り姫は、それらを無造作に横切って行く。花ということは花壇だろうか、と、考えたが、そこも通り過ぎた。
「花は、ここにあるぞ? 」
 背後から声をかけても、反応はない。基地は二十四時間態勢で稼動しているので、たまに、上空からエンジン音が響くし、何かの発令の声が飛び交ってもいる。だが、そんなものは、まるで聞こえていないのか、眠り姫は、緑地帯を歩いているだけだ。

 あれから、数ヶ月が過ぎたが、相手からの反応は、皆無だ。まだ、活動する時期ではないということと、おそらく、眠り姫の回収は容易ではないと判断したためだろうと思われた。
 ・・・・そのうち、何かしらのリアクリョンはあるだろう・・・・
 今度は、本格的に奪回を目論むのか、それとも、秘密保持のために、眠り姫を始末するか、そういう反応を心待ちにしている。それは、また、彼らのガンダムと出会う時が間近だという証拠でもあるからだ。

トサッ


 ちょっと視線を外していたら、前で物音がした。視界に眠り姫がいなくて、視線を下げたら、そこに転がっている。本当に、唐突に倒れるものであると、私は、それで理解した。もちろん、眠り姫は眠っている。
「なるほど、これでは、どうともできないな。」
 まともな時なら、対処できるかもしれないが、まともでない時の眠り姫には、その行動すら制御することはできない。ただ、歩きたいと欲求で歩いているのだから、少し休憩を、と、忠告しても聞き入れることはないだろう。



 また、眠り姫の警告音が鳴ったので、回収に出向くことにした。確か、今日は、友人が休みのはずだが、彼は外出でもしているのか、と、思っていたら、眠り姫の横に座っていた。
「なんだ、きみがいるなら、来なくてもよかったな。」
「いや、ビリー、なかなか興味深いものが見られるぞ。覚醒するのに、眠り姫は、芋虫みたいに動くらしい。」
「はあ? もしかして、きみ、それを観察して楽しんでいるのかい? グラハム。」
 ああ、という返事に呆れるより笑ってしまった。ユニオンのトップファイターで、現在は連合の同じくトップファイターである彼は、そんな酔狂な真似ができるらしい。確かに、もぞもぞと眠り姫は動いている。ここで停滞してから二時間が経過しているはずだから、彼は、それを二時間、観察していたということだ。
「おもしろいのかい? 」
「割とな。・・・本当に唐突に倒れるんだぞ、ビリー。」
「それなら、連れて戻ればいいだろうに。」
「いや、どこか目的でもあるのかと思ったんだ。」
 眠り姫は、もぞもぞと動いて、それから何度も寝返りをうった。自分まで観察していては、どうかと思い直して、立ち上がる。
「きみ、明日から会議だったろ? どうするつもりだい? 」
 明日から、連合本部へ会議で、友人は出かけていく。二週間ほどは、あちらで足止めになるはずだ。その間、眠り姫は、ひとりになる。
「どうもしない。」
「眠り姫は? 」
「連れて行きたいんだが、気圧変化は問題だとドクターに言われた。・・・それで、医療ルームへ預けることにした。」
「そうだね。それがいい。」
「くくくく・・・何をトチ狂ったか、敵をペットにしたという噂を肯定してやりたかったんだがな。」
「そんなことしないでくれ。」
 そういう噂は、かなり大きく広がっている。元々、認識票のない人間を貰い受けただけなのだが、実際、それは敵だっただろうとはバレているわけで、手元に確保したのが、この有名人ともなると、噂は、さらに悪いほうに広がった。本当は、そういう関係ではないというのに。いや、精神的には、そうかもしれないとは思い直した。友人は、眠り姫を手にして、「癒される」 と、言うからだ。
 劇的に、何かが変わった、ということはない。だが、眠り姫に対しての友人の態度は、とても柔らかいもので、いつも、何かしら気遣っている。ただ、それは、普通の感覚の話ではないのだが。




「右目の治療をしてくれないか。」
 そう、彼は、度々に勧める。片目が見えないことは、それほど不自由ではないし、治しても、これといってやることもないのだから、別に必要ないだろう、と、思っていた。
 生きているのか死んでいるのか、たぶん、半分くらい死んでいる俺だから、片目が死んでいても妥当だろうと思っている。それなのに、彼は、「セルリアンブルーの双眸というのに興味があるんだ。」 と、言う。
 ふたつ揃っていて、それが何かあるのか、俺にはわからない。それから、心疾患も、体力が回復したら、手術するとも言っていた。まあ、生かしている相手が、そう言うのなら仕方ない、と、頷いておいたが、それも、どうだろう、という疑問は残っている。


 彼が出張している間、俺は、ドクターのところへ預けられた。そうでもしないと、俺は栄養失調になってしまうからだそうだ。食事にも興味がないので、届けられる食事も手をつけないことが、度々ある。一日に、一度でも、彼が戻れば、無理矢理に食べさせられるから、普段は、それで済んでいるが、二週間となると、さすがに、長過ぎて危険だということになった。数日くらいなら、ビリーが泊まりに来ているが、彼だって二週間毎日ともなると、大変だろう。


 今日は、頭がクリアーで、いろいろと考えることができた。自分で言うのも、なんだが、壊れているので、なかなか、うまく頭が動かないというのは厄介だ。
「おまえだな? 」
 いきなり背後から声がして、ものすごい衝撃で、ベンチから放り出された。数人が、俺の前にやってきて立ちはだかる。
「おまえのせいで、俺たちの部隊は全滅した。」
 乱暴な言葉で、また、腹に衝撃があった。痛覚が麻痺しているから痛くはないのだが、それでも、衝撃はある。
・・・そういや、俺、テロリストだったな・・・・
 あっちこっちから沸き起こる衝撃を受け止めつつ、ふと、思い出した。覚えていないのだが、俺は、この基地の人間にとっては、敵対した組織の人間だ。だから、敵意を持った人間がいてもおかしくはない。
・・・これで死んだら、グラハムは怒るんだろうな・・・・・
 処刑されてもおかしくない状況だったはずなのに、俺は記憶がないから生かされている。だが、実際、それで納得できるものではないだろう。
 がつっっ、
作品名:ぐらにる 眠り姫4 作家名:篠義