二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ぐらにる 眠り姫4

INDEX|3ページ/3ページ|

前のページ
 

「俺が死んだように、あんただって死ぬことがあるだろう。俺が、手術を受けたところで、まともに戻る保証はない。・・・・だいたい、俺は、もう死んでるんだ。あんたが生かしているんだから、生かしているあんたが存在しなくなったら、俺は消えてもいいはずだ。」
 たぶん、激しい運動、例えば、全力疾走でもいい、それをやったら、俺の心臓は簡単に停止してくれるはずだ。蘇生さえしなければ、そのまま死ねる。こんなところに住んでいるのもおかしな話だとも理解している。全ては、この男の癒されたいという気持ちが発端だ。
「きみは、新しい人生を始めようとは思わないのか? 私が死ねば、私からも開放されるんだぞ? 」
「・・・・覚えていないけどな、俺は、確かに、たくさんの人間を殺してきた。そんな人間が、新しく人生をやり直していいとは、俺は思えない。」
「その関わりが、まったくない土地だってある。」
「だが、俺の心には残っている。これは消すことは出来ない。」
 覚えていないが、確かに、俺は、あの組織にいた。それは、彼らの表情でわかった。そして、憎悪されて暴力を受けて、自分がやっていたことは殺略だっただろうこともわかっている。何か信じるものがあってやっていただろうが、それすら、覚えていなくては、罪の意識しか残らない。贖罪できるものではない。たぶん、その対価は死のみだとも思う。
 
 だが、彼が、「癒される。」と、言うから、ここにいる。自分では、どうなったら癒されているのか、よくわからないが、それが、自分にもできることであるなら、それぐらいは、やってもいいだろうと結論した。たった一人、彼だけが、記憶のない壊れた俺の生きていなければならない理由だからだ。

 俺が話したことを、静かに聞いて、彼は立ち上がった。書斎へ入って、すぐに、メモらしき紙を俺に手渡す。
「これは? 」
「きみの爆破コードだ。・・・・近日中に、そのコードを打ち込んでスイッチを稼動できる装置を作らせる。」
 今は、うちの本部にしかないんだ、と、彼は微笑んだ。文字の羅列されただけの紙だ。それから、気付いてしまったか、と、やや残念そうに笑った。
「気付く? 」
「そう、ソレスタルビーイングが存続しているとなると、私も出撃することになる。それに気付いたんだろ? 眠り姫。」
「ああ、そうだ。」
「簡単にやられるつもりはないが・・・向こうも、さらに強力な兵器を作り出しているだろうからな。さすがに、私でも、どうなるか予想はつかない。・・・だから、私が生きている間だけ、私の眠り姫でいてもらおうと思っていた。あの組織と私が滅べば、きみは開放されると思ってたんだ。」
「俺は、それほど単純じゃない。」
「そうだな。きみは、あそこにいたんだ。優秀だということを忘れていたよ。いや、忘れたかったのほうが正しいな。」
 我ながら、愚かだ、と、彼は大笑いした。それから、しばらく沈黙して、彼は俺の横に座って、俺の顔を眺めて微笑んだ。

 ただし、と、彼は真摯な瞳で、俺を睨んだ。
「条件がある。」
「なんだよ。」
「必ず、私の死体を確認してから、そのコードを打ち込むこと。まあ、焼け焦げているかもしれないし、爆散していて、粉々かもしれないが、認識票で私だと確認されてからにしてくれ。」
「え? 」
「私が、きみみたいに、敵に捕獲されて記憶を失っていたら、どうするんだ? ・・・ある日、私が思い出して、きみが爆死していたら、とんだ『ロミオとジュリエット』を演じることになるだろ? 」
「ああ、違いない。」

 その言葉に、俺は笑い出した。確かに、そういうことだ。笑っている俺を、彼は抱き締めて、ふうと息を吐く。
「これで、私の眠り姫は、私だけのものだ。熱烈な告白をしてもらえるとは思わなかった。」
「告白ではないんだけどな。」
「いや、告白だろ? 私の後を追ってくれるなんて嬉しいじゃないか。」
「追わない。俺は勝手に死ぬだけだ。」
「迎えに来ようか? 眠り姫。」
「爆散して粉々なんだろ? 」
「霊体は、このままだ。さながら白馬の騎士のごとく、きみを攫いに来る。」
「・・・あんた・・本当に不思議だぞ? 」
「きみだけだ。」
「何もできないけどな。」
「何もしなくていいんだ。きみは、存在するだけで、私は癒される。」



 遠くない未来に、結果は判明しているだろう。
 いくら、彼が優れていても、時の運まではわからない。
 どちらでも、俺は構わない。
 存在で癒されると言うなら、それまでは存在している。
 どちらもが生き残ってくれることを願う。
 それしか、俺にはできないから。
 それまで、とりあえず、あやふやな世界に、
 佇んでいるとしよう。
 この不思議な彼の隣りで。

作品名:ぐらにる 眠り姫4 作家名:篠義