ぐらにる 眠り姫5
「道に迷って・・・教えてもらおうとした・・この人が急に倒れて・・・」
その言葉と刹那の泣き顔は真実味があったのか、睨んでいた軍人たちの顔が緩んだ。近寄ってきて、刹那の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ああ、びっくりしたんだな? おまえのせいじゃない。こいつは、突然に眠りこける病気なんだ。・・・おい、誰か、開放区へ案内してやれ。」
一人の軍人が、「こっちだ。」 と、腕をとって歩き出す。一瞬、背後を振り返ったら、何人かが笑いながら、彼を靴で小突いていた。
・・ここからは連れ出してやる・・・・
理不尽な目に遭わされているのはわかっている。機会を伺って、とにかく、彼を連れ出すことだけは決めた。それまでは、壊れていたほうがいい。
・・・俺は二度も大事なものを殺したくない・・・・
神と言う言葉に惑わされて、親を殺した。今では、それはまやかしだったと理解している。あの時は何も知らなかった。けど、今は違う。自分には、連れ出す力がある。生きてさえいれば、いつか、また、あの陽気で意味のないおしゃべりが聞けるかもしれない。
覚悟はした。だから、機会を待つのも苦にならない。