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Nobody knows

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気づいてしまえば、それは単純な形をしている。

「贖罪?」
ちらりと何かを含めた黄泉川の疑問を、打ち止めは胸の中で吟味する。日曜日、三時のおやつの時間だった。芳川は再就職先の馬鹿所長に呼び出されたと舌打ちを隠さないまま出かけていき、もう一人、打ち止めがここにいる理由の張本人と言えば、どこか知らない場所で何かしている。宅配ボックスに放り込まれた携帯電話だけを繋がりにして。打ち止めはその人のことを考えるとき、自分がどんな表情をしているのか知らない。ただ、浮かぶ考えをそのまま口にするだけだ。
「会いたいな」
それを聞いた黄泉川は、何やら複雑な顔をした。見上げた先の表情を確認すると、打ち止めは炊飯器仕込のシフォンケーキにフォークを入れた。頬張りながら待つ。黄泉川が自分の中で何やらせめぎ合わせて、ようやく取り出したものはそれだった。
「あんたが一方通行と一緒にいるのは、償いのため?」
答えはもう、決まっていたけれどもそれでも考えた。
「そんなこと、あるわけないのにどうしてってミサカはミサカは首を傾げて質問返しをしてみたり」
真正面から見上げた自分の目はどんな色をしていたのだろうか。打ち止めにはわからない。ただ黄泉川の目が痛ましげに細くなったのは分かった。それは親という神様を持ってしまった子供を見る目によく似ていた。だから打ち止めは安心させるように笑ってみせる。そうではないのだ。
「あの人と一緒にいるのが楽しいだけだよ。間違わせたせいじゃない。守ってくれたからだけじゃないし、守ってくれるからでもないんだけど、どうもあの人は分かってくれないよねってミサカはミサカは憤慨してみたり!」
思い返せば改めて腹が立ってきたので握り拳を作る。そんな打ち止めの様子をぽかんと見ていた黄泉川は、苦笑を浮かべてから打ち止めの頭に手を乗せた。くすぐったい感触に思わず笑ってしまう。
「ごめん、あんたをなめてたじゃんよ。分かんないつもりじゃなかったんだけど、あんたは子供だからさ」
どうも甘めに見積もった。自分をたしなめる笑い方をする黄泉川に、打ち止めは首を振る。この目の前の教師や芳川、カエル顔の医者の中にある「大人」の感覚が打ち止めは好きだ。一緒にいると安心する。そういうものを大人からもらったことがなかった打ち止めは胸が温かくなるのだ。
きっと、あの人もそうなりたいのだろうな。
打ち止めはふとよぎった考えにしょんぼりと肩を落とす。あの白い、真っ白い、少年。
そういうのは、二人で一緒になればいいだけなのになぁ。
何年もかけて。
子供二人で。
作品名:Nobody knows 作家名:フミ