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ふうりっち
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novelistID. 16162
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【普独】 To tell the truth 【微腐向】

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二月のある日、プロイセンは大いに悩んでいた。
 壁のカレンダーを見れるだけで切ない溜息が漏れ、自然と物思いに耽ってしまう。しかも彼の悩みに拍車をかけるように、寒さが一番と厳しさをましたせいか、昼間でもあっても、気温が上がらず凍えるような日々が続いていた。
 窓からは灰色の雲に覆われた薄暗い空が垣間見えた。
 それを見るだけで、寒さに震えあがる。いくら寒さが厳しい時期だからとはいえ、これは異常気象としかいえない。寒いせいで犬たちの散歩もままらない。三匹の愛犬たちは寒さから身を護るようにリビングに居座り、プロイセンの足許でひと時のまどろみを堪能している。
 いくらドイツの諺に「バレンタインデーは水車小屋の水車も凍る」とあっても、何もそれを実証することはないだろう。自然相手とはいえ、プロイセンは不服を募らせた。だから、だろうか。
 普段は呑まないホットミルクを片手に、暖炉の前で寛ぐ日々を過ごすなか、時折、溜息を零すことが多くなっていた。それを自覚するも、この悩みが解決されないままでは、溜息が止まることはない。
 運動不足の解消もかねた犬の散歩。これも寒波のせいで出かけられないため、鬱積するストレスを発散できずにいた。だから余計に一人で煩悶する日々が繰り返すことになる。
 しかし、勤勉な弟のドイツは違う。今日も、早朝から仕事に出かけている。
 片付けなくてはならないプロジェクトががあるとかで、休日返上で、早出と残業を繰り返しているためか、プロイセンがこのように悩みを抱えていることは知らない。
 いやバレないよう、弟が帰宅する頃にはいつもの陽気な兄を演じている。だから、悩んでいる事はバレていないはず。

「……ったく日本も罪な奴だぜ」

 半ば八つ当たり気味に相手の名前を口にするも、すぐに洩れる溜息。

「でもヴェストにあげたいよな~」

 床へ投げ出した足を組みなおし、ソファーに深く身を沈めると天井を見上げながら独語する。

「手作りチョコをさ」

 誰も居ないからこそ吐露でき本音。
 兄である前にドイツを愛する男として、プロイセンはチョコを贈るつもりでいた。
 だがドイツでのヴァレンティンターク(バレンタインデー)は、男性から女性に花を贈るのが一般的であり、贈り物、まして『チョコ』を贈る風習はない。これは欧米全土にいえることだ。しかし今年は志向をかえ、日本が語り聞かせてくれた『本命チョコ』に挑戦するつもりでいたが、思うように事が進まない。
 まずプロイセンは料理は出来ても、菓子作りに精通していない。
 オーストリア辺りに指南を乞えば出来なくもないだろうが、それでは計画が洩れてしまう恐れがある。
それに、あの坊ちゃんが隠し事ができるとは到底思えない。というより、今回は自立で作りたい気持ちがあるので、誰かに教わるつもりなど端からない。

「ヴェストの居ない間に作れなくはねえけど……」

 不意に背筋に悪寒を感じたので、プロイセンはホットミルクで喉を潤すが、冷めかけているせいで躯が温まることはない。残念そうにマグカップを見つめるが、新しいのを淹れるつもりはないようだ。そのままソファーへ深く身を沈めてしまった。

「作ったことが即行でバレるだろうし。どうっすっかな~」

 日頃から二人分の料理だけでなく、趣味の菓子作りに使う道具一式は、ドイツなりの法則で片付けられている事は、棚を見なくても分かる。それが勝手に移動したり、それまでと違い片付け方をされていれば、すぐに何かを勘付くのは目に見えている。問いかけというよりは、凄みのある貌で迫ってくる弟を前に、本音を白状せずにいられるか分からない。
 最初から危ない橋を渡るような真似は避けた方が明白なのは分かっているが、そうなると『手作り』は儚い夢と散ってしまう。

「日本の奴はなんか企んでるんだろうけど、この時期に俺に話すことか…?」

 苛立ちげに文句を洩らせば、その声に犬たちが一斉に貌を上げる。その表情は主人を心配するというよりは「煩い」と迷惑顔にみえた。

「んだよ、お前達もちょっとは心配しろよなっ!」

 俺の悩みをさ、と愛犬に訴えかけても彼らは素知らぬふり。
 すぐに眠ってしまった。

「くそ~、可愛くねえな」

 ドイツには従順な犬たちも、プロイセンには反抗的な態度を示すことが多々あった。それをよろしくないと思っていても、躾はドイツに任せきりなので、あえて自分から動くことはない。プロイセンは、犬たちよりも自分が優位という自信を持っているからだ。
 しかし、単に面倒くさいだけともいえた。


  *  *  


 あれから数日が過ぎ、とうとう明日がヴァレンティンタークであったが、状況に変化はない。

「スマン、兄さん! 今夜は遅くなってしまって……」

 時計の針が間もなく午前零時をさそうとしている頃、ドイツがようやく帰宅した。手に可愛い小袋を提げて。

「お帰り~、ヴェスト」

 リビングに入ってきたドイツを出迎えたプロイセンは、ソファーに寝そべったまま弟を出迎える。その手には、愛用のゲーム機が握られていた。

「兄さん、夕飯は?」

 コートとジャケットを脱ぎ、すぐに袖を捲るドイツを目の端に捉えたプロイセンは、ソファーから起き上がった。そのまま胡坐の格好で告げる。

「まーだ。けど、ポットロースト作っておいたから一緒に食おうぜ!」

 自らの業績を称えるべく、グッと親指を突き出して得意気に笑ってみせる。

「すまない……夕食まで」
「気にすんなよ! 仕事、忙しいだろ?」

 ソファーから下りると、それまで暖炉の前で伏せていた愛犬たちが一斉に動き出す。主人であるドイツが帰宅したというのに、彼らはプロイセンが動くまでその場から離れなかった。
 それは、まるでドイツに変わってプロイセンを護る騎士のように、三匹はその役目を全うしているようだ。普段は素っ気無い素振りを見せていても、ドイツ同様、プロイセンを護ることを彼らの中で盟約としているのかもしれない。
 そんな三匹を引き連れプロイセンがキッチンに立つが、時間が遅いこともあり、愛犬たちはドイツによってケージへと戻された。その後は、二人で手分けして準備をイ行ったことで、思ったよりも早く夕食のセッティングが出来上がった。

「ヴェスト、……それ何だよ?」

 いい具合に焦げ目のついた表面と、煮込んだこと柔らかくなった牛肉は、思った以上に味が染み込んでいる。おそらくドイツの帰宅が遅かったことが功を奏したのだろう。それを豪快に口に運びつつ、見慣れない形状が目に留まる。
 そっとテーブルの端に置かれたままの小さなペーパーバッグ。プロイセンは、それを珍しげに見つめていた。
 こう言ってはなんだが、表面だっては厳ついと評判高い弟が、表面だっては厳ついと評判が高い弟が、これほど可愛らしい花柄のギフトを貰うことは珍しい。恐らく部下か、職場の関係者に貰ったものなんだろう。しかし、どこの物好きだ?--と疑念が過ぎったのは内緒の話。

「日本から貰ったんだ」

 ドイツの説明によれば、本日行われた会議のあと、親しい友人達へ日頃の感謝を込めてという名目で、これを配ったらしい。

「中身は?」
「手作りのチョコ、と言っていたな」