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ふうりっち
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【普独】 To tell the truth 【微腐向】

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「チョ、コ……ッ!」

 思わず咽た。ゲホゲホと咽たあと、プロイセンは顔を真っ赤にしながらグラスの水を口にする。

「兄さん!」

 目の前で苦しく兄を案じて腰を浮かすドイツを手で制すると、プロイセンは何度か咳き込むも、どうにか落ち着きを取り戻した。しかし、喉奥が焼けるように痛い。それを水で冷やすように、またグラスを口へと運ぶ。

「……は~ぁ、死ぬかと思ったぜ」
「本当に大丈夫なか?」

 いまだに心配そうに見つめるので、問題ないと余裕の笑みを浮かべてやる。すると、ようやくドイツは安堵したのか、食事を再開させた。

「日本ではヴァレンティンタークのとき、女性が好きな男性に手作りチョコを贈るそうだ。それが愛の告白に繋がるとも言っていた」
「ふ~ん、なら日本から愛の告白でもされたとか?」

 フォークの先でペーパーバッグを指せば、ドイツが眉を潜めるのが目の端に見える。しかし、気にせずプロイセンは食事を続けた。

「それはない。第一『お配りしたこれは手作りではありますが【義理】ですので』と言っていたしな」
「義理、ね~」

 含みにある言葉を盛らすプロイセンであったが、ドイツはそれをさして気にする様子はない。貰ったばかりのチョコに思いを馳せているのか、どこか嬉しそうだ。

「兄さん、夕飯のあとに二人で食べてみないか?」
「…ああ、いいぜ」

 義理の割りに包みが可愛らしいのが気になるが、贈り主が日本であることで安堵したのは事実。
 しかし、しかしだ  このタイミングでヴァレンティンタークは無いと、プロイセンは秘かに日本を呪った。
 自分は未だ何も用意出来ていないのに、このように見せ付けられては余計に焦ってしまう。何か手は無いかと、ここ数日考えて、考えながら今夜の夕食を作っていたのに、このようにあからさまに行動されては、無性に腹も立つ。

「……日本のヤツ、俺様をバカにしてるのか?」
「どうかしたのか?」

 思わず洩れた独り言にドイツが小首を傾げてきた。うっかり洩れたとはいえ、心のうちをドイツに悟られないよう話題を反らすため、プロイセンは自らが作った料理を口にする。

「なぁヴェスト、これどうだ? 美味いか?」

 兄の態度から何かを察したようで、何事もなく表情を変え、いつもの顔になるとドイツは大きく頷いてみせた。

「ああ、すごく美味いぞ、兄さん」

 この調子で毎日、夕飯を作ってほしいくらいだ、と満面の笑顔でプロイセンを称賛する。

「当たり前だぜ、俺様の手作りなんだからよ!」

 口下手な弟からの称賛に気を良くしたプロイセンは、手に持つフォークを振り回しながら料理を作る経緯を語りだす。

「今日さ犬たちと散歩に行ったらよ、マーケットで特売してたんだぜ」
「ほ~、珍しいな」

 近所のマーケットを思い浮かべているのか、ドイツの視線が虚空へと注がれた。その隙にそっと溜息をつくと、プロイセンは話題が逸れたことを安堵する。

「さて、食後はコーヒーで……」

 食事を終えたドイツが立ち上がったその時、突如、家の電話が鳴り出した。

「ヴェスト、電話なってるぜ」

 さも当たり前のように、電話の取次ぎを弟に委ねるように声を出す。

「誰だ、こんな夜更けに?」

 何気なく時計を見れば、すでに零時は過ぎ。深夜といいってもいい時間だ。そして、こんなに掛かってくる電話は良くない事が多い。思わず不安が過ぎるプロイセンであったが、ドイツには思い当たることでもあるか、小さく呟きながらリビングを出て行った。

「ま、仕方ねえな…俺様がコーヒーでも淹れてやるか」

 プロイセンが作った料理は、自分だけでなく、ドイツも綺麗に平らげられていた。それを見て、嬉しくならないはずがない。
 料理を作った側からすれば、作った食材はすべて食べてくれることが何より嬉しい。それ故、皿を片付けるために、キッチンとリビングを往復を繰り返すことも苦にはならなかった。

「ヴェスト~?」

 一通り片付けが終わっても弟は戻ってこない。
 何かあったのかと思案しながら電話のある隣の部屋を除き見れば「先に食べててくれ」と受話器を口許から放したドイツに告げられた。

「あ、ああ…チョコの話か」

 一瞬なんのことかわからなかったが、チョコの催促に来たと思われたようだ。
 そんなに食い意地が張っているように見たのだろうかと疑問に思うが、きっとドイツなりの気遣いなのだろう。

「ま、いいけどよ。チョコに興味があったし」

 実は日本が贈った『義理チョコ』がどういう物なのか、気になっていた。
 それ見れば、何か切っ掛けが掴めるのではと淡い期待を抱くプロイセンにしてみれば、ドイツよりも先にチョコを見れる事は大いにありがたい。

「さてと、どんなもんか見てるかな~」

 テーブルに座るなり開封口に貼られたシーツを丁寧に剥がせば、派手なラッピングが施されたハート型をした板チョコが出てきた。『義理』を強調しながらも、それが既製品では無い事はすぐに分かった。更に中身を確認するように袋を覗けば、プロイセンでも見慣れた形状をしたチョコまで一緒に入っていた。
 棒付きキャンディのように、細いスティックの先端にはカカオ豆を模したような形状のチョコがつくこれは、土産として売られていることもあり、ドイツではわりとポピュラーなチョコである。それを日本がこれを知っている事に驚く。

「義理チョコと、チョコレートドリンクか」

 義理と名言しながらも、なかなか手が考え込んでいると関心するも、プロイセンはおもむろに席を離れた。

「すまない兄さん。思ったより上司と話が長引いて……」

 既に片付けられているテーブルをを見たドイツが恐縮そうに言葉を告げるが、そこにプロイセン姿は無い。

「兄さん?」

 この短時間で姿を消した兄を心配し、辺りへ視線を配らせているとキッチンから呼ぶ声が聞こえてきた。

「ああ、こっちに居たのか」

 そう言いながらキッチンへ現れたドイツを背後に感じながら、プロイセンが流しの前に立ったまま微動だにしない。

「まだ、片付けが終わっていないなら、続きは俺が…」

 後は自分が引き受けるつもりなのか、ドイツは袖を捲り上げながら近付いてくる。
 それを肩越しに意識しながら、プロイセンは何かを飲み込むようにコクッと喉を鳴らすと、ドイツが隣に立った瞬間、死角を狙って伸ばした指先で彼の頤を捕らえた。
 早業ともいえる動きで顎関節を強い力で抑え込めば、さすがのドイツも唇を閉じることが出来ないようだ。
 そのまま半開きになった薄い唇に吸い付き、長い口吻けを強いた。後頭部の髪を握り締め頭を逃さないようにしてため、ドイツは苦しげにしながらも口吻けを受け続けるほかはない。
 それを好機と受けとったプロイセンは、それまで口内に止めておいた液体を口移しの要領でドイツの口内へ注いでいく。息苦しさが増すなか反撃する余裕など無いせいか、ドイツはそれを従順に受け入れるほかなかった。
 コクコクとドイツの喉が鳴り、液体が嚥下されていく。