残さず召し上がれ
額を合わせるように顔を覗き込めば、空いたもう片方の掌が、帝人の後頭部に覆うように添えられる。
口付けられるな、と思い。期待に震える睫を伏せようとしたところで、あ、という音と吐息が唇を掠めた。
「…そうか、帝人がケーキになってくれればいいんだよな」
「……え?」
なんか、いま、変なこと言われた気がする。
遠ざかっていく静雄の顔とその表情と、すくりと立ち上がり足を向けた先に感じたどうしようもなく嫌な予感に……帝人は急いで距離を取ろうとしたのだが。しっかりと繋がれていた手があだになってそれは叶わない。
「あ、の……」
苺のパックとホイップクリーム(※飾りつけ用/チューブ入り)を手に清清しい顔で帝人を抱き上げる静雄が向かう先はどう見ても寝台だ。
掃除の大変さを考えるとお風呂場のほうがいいのになー……ぼんやりとそんな事を考えながら帝人は目の前の肩口にそっと縋りついた。