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【米英←仏】フランシスの受難の一夜

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 しまった、口が滑ったと思ったがもう遅い。受話器に盛大に罵声が浴びせられた。
『ばっ……バカ! 悪いかよ!』
 ついにフランシスはくっくっと声を出して笑ってしまった。
「いやいや。なら俺、惜しいことを……じゃなくて、手を出さなくて良かったと思ってな」
『バァカ……あそこのことバラしてくれたお陰で昨日は大変だったんだからな』
 自らの声量を反省したのか、再び声をひそめてアーサーが云った。
「あ、問い詰められた? もしかしてそのまま最後までやっちまったとか?」
『っ……』
「おいおい、また図星かよ」
『うるせえ!』
 またも怒鳴られた。どうやらおとなしく感じたのは最初だけで、こちらが本性のようだ。まあ、こっちの方がらしいよな、とフランシスは思う。アーサーはまた咳払いをする。
『と、とにかくだ。用件はもう一つあって……、アルと云ってたんだ、今度三人でディナーでもどうかって……侘びと礼代わりにな』
「そりゃ、お邪魔じゃないなら喜んで。……ああ、来週の水曜の七時だな。了解了解」
 手帳にメモをする。電話を切ってからフランシスはふっと微笑んだ。次に会うときの彼らはどう変わっているのだろうか。
(ああ、やっぱり愛はいいね)
 喧嘩して突き放したり、仲直りしてくっついたり。辛いことも苦しいこともあるけれど、それが愛というものだろう。
 ――俺もまた新たな愛を見つけに行こうかなあ。そう一人呟いて、フランシスは手帳を閉じた。