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嘘をつく人

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俺は基本嘘つきだけど、帝人くんに対してだけは誠実であろうとしたんだ。
本当だよ。

物騒な奴らが俺の周りに現れて、なかなか忙しい。
だけど、必ず日曜日の午後3時以降は空けている。
愛しいあの子とのデートの日だから。

勿論デートだと思ってるのは俺のほうだけだろう。


その日もそうだった。

俺が帝人くんの家に行くと、帝人くんは少し迷惑そうに、それでいて期待を含めた声で「・・・なんですか?」と言った。
俺はわかってるくせに、素直じゃないなぁ、と思いつつ帝人くんをデートに誘う。
案の定、帝人くんは素直に付いてきた。

俺がこの僅か数時間をどれだけ心待ちにしてるのか、きっと君は知らない。
俺が知られないようにしてるから。

(うわ、胸やけしそう)
目の前に運ばれてきたクリームたっぷりのあんみつに、俺は内心げんなりしながら、
それでも、帝人くんが嬉しそうに目を輝かせるから俺も嬉しくなる。

「臨也さんだって、内心喜んでるくせに。」
「うん、喜んでるよ。嬉しくて、涙が出そうなくらい。」
だって、君が愛おしいから。

帝人くんに恋人はいないのか、と聞かれたとき、俺は冷や汗をかいた。
まさかこの気持ちを知られてるわけはない、と、思いながら平静を装う。
帝人くんは興味があるのか無いのか、特に意味はない質問だったことがわかる。
それが切なくて寂しくて、安堵する。

今の俺には大切な人、が居てはいけないんだ。

時間が経つのはどうしてこんなに早いのだろう。
楽しい時間はあっという間だ。
この、楽しい時間は今日までになるのだから、もう少し延ばしてほしい。
そう思って、神に願う。

いや、神頼みじゃなくて帝人くんに送らせてくれるよう頼んだ。
「別に僕女の子じゃないし、そもそもまだ明るいんですから大丈夫ですよ。」
「お願い、俺が帝人くんともっと一緒に居たいんだよ。」
「また、そんなこと言って。」
帝人くんは苦笑した。
冗談じゃないよ、本音だ。

だって俺は帝人くんに嘘をつかない。

そのはずだった。

帰り道、手を繋ぎたいと言った俺に、帝人くんは訝しげにした。
それもそうだろう、今日の俺はテンションが高いのが自分でもわかる。
なんだろう、怖いのかな。
死ぬことが?

まさか、

帝人くんに会えなくなることが、だよ。

握った手が緊張して熱い…手汗かいてなかったかな、俺。


『うん、じゃぁね。』
帝人くんが「今日はありがとうございました」そう言ったとき、俺はそう返そうと思ってたんだ。

だけど俺の口は素直だ。
とうとう言ってしまった。

言ってしまってから、誤魔化すようにただただわけのわからない言い方をして、帝人くんに本音を隠した。
嘘をついたわけじゃないよ、隠しただけだ。

「…一応有り難く受け取っておきます。」
「ほんと?」
涙声になってなかったかな、格好悪い。
もう、余計なことを言わないようにと思いながら、帝人くんの頭を撫でる。
こうやって君に触れることも最後になるかもしれないと思うと、

「だから、好きになったんだ。」
ああ、俺の口は何処までも正直。


俺はずっとずっと君には本音で、正直に話してきた。
もちろん都合の悪いことは隠したり、誤魔化したりはしたけど、嘘は付かなかった。

だけど、最後の最後、本当に最後だ。
帝人くん、俺は君に嘘をついた。


俺がついた、嘘、帝人くんはわかってる?
甘い物が嫌いなことじゃないよ。
だって俺は前に『臨也さんも甘い物お好きだったんですね?』と、帝人くんに聞かれたときにはにっこり笑っただけだったから。





やっぱり、その日の俺は少しおかしかったせいだろうか、それとも無意識なんだろうか、
帝人くんは俺の告白は全然本気にしてくれなかったのに。
それなのに、最後にまさか、


「はいはい、臨也さん、また来週会いましょうね。」


そう言われたら、嬉しくて嬉しくて
「またね。」って答えるしかなかったじゃないか。
作品名:嘘をつく人 作家名:阿古屋珠