こらぼでほすと 留守番4
週末は、キラたちが連れ出してくれたので、無事に何事もなく過ぎた。また今日から、一週間の始まりだ。
悟空は、目を覚まして、自分の服が、きちんと畳まれてベッドの横に置かれているのを見て、ちょっと照れ臭い。靴下までが、アイロンでもあてたのかと思うほど、ぴちっとしているのだ。
「おはよー」
「おう、おはよう。なあ、悟空、一応、弁当を作ったから、これ、試してみてくれないか? 」
卓袱台には、きちんとした朝定食と、かなり大ぶりの弁当箱が置かれていた。
「へ? 弁当? 」
「学食があるんだろうけど、たまには、こういうのもいいだろ? 」
なぜか、そこには、他に三つの弁当箱もある。
「これは? 」
「ああ、俺らのも、弁当をしてみたんだ。なかなか入れるのが難しいな。刹那も食べてみたいだろうから。」
で、悟空は、かぱっと弁当を開けてみる。いろんなものが、ちまちまと入っているので、彩りも鮮やかだ。夏場じゃないから、問題はないだろう。
「こんなんいいのに。」
「いや、昨日、ちょっと出かけたら、思いついてさ。」
大人二人で、暇な日曜だったから、ぶらぶらと出かけた。暇つぶしの本でも買おうと書店に行って、弁当の作り方なんていう本を見つけてしまったので、試しに作ろうと、弁当箱まで買ってきたのだと、ロックオンは笑っている。実際、八戒の和食レシピは簡単すぎて、よくわからなくて、入門書を買いに行ったのが目的だったが、こういうのもいいな、と、ロックオンは考えたらしい。
・・・・すげぇーな、おかんって・・・・
その行動力もさることながら、出かけようとしたら、玄関の運動靴まで綺麗になっていた。洗ってくれたらしい。汚れない限り洗わない悟空にしてみると、そんなにピカピカになっているのがびっくりだ。
・・・・俺、こんなに世話されるの初めてだよな・・・・
なんていうか、慣れないので、そこまでされてしまうと、悟空としては照れ臭くなってくる。
「うわぁーこれこれ。いいなあーこのピンクっっ。」
いつもより早めに現れたハイネも、ほくほくと弁当の中に入っているピンクのでんぶに頬を緩めた。その本を目にして、「これ、やってくれ。」 と、依頼したのは、ハイネ本人だった。
「てか、お子様メニューらしいぞ、それ。」
「いいじゃないか。・・・うーん、ママニャン、ひとつだけ不満がある。」
「なんだよ。」
「なぜ、ハートマークにしてくれないかなあー。」
「やって欲しけりゃ、相手を探せ。」
ていうか、それは昼飯だから、先に朝飯を食え、と、トーストやらサラダやらの載った皿を、どんっと置く。右目の見えない距離感も、すっかりと慣れたらしく、ここんところ、ロックオンは、どこかにぶち当たることもなく過ごしている。たまに油断すると、手が空を切るなんてこともあるが、被害は出ないくらいに上達はした。
「ロックオン、洗濯物を回収した。」
だから、刹那のほうも、ちょっと安心しているのか、別行動をするようになった。さすがに、『あれ』の襲撃を心配して、ロードワークは境内のみなんてことになっているが、それ以外には外出もする。
「おう、ありがとさん、刹那。今日は、キラと約束してたよな? 」
「昼から、少し出て来る。」
とりあえず、誰もいない時間帯は、刹那を連れ出すということになった。それなら、来襲されても問題はない。
「ママニャン、俺、これから弁当持って出る。ラボのほうへ顔出してくるから。夜は、いつも通り。夜食は欲しい。」
「ああ、ティエリアたちに会うのか? ハイネ。」
「どうだろうな。歌姫さんとこの本宅で、ヘリの整備して、それから飛ぶんだが、あいつらが、こっち来るかもしれないだろ? 」
三日ばかりかかりそうだと、八戒が言っていたから、微妙なところだ。会えたら、仕事で無理するな、と、伝言してくれ、とだけ頼んだ。
ここの寺の境内は、かなり広いので、てってこと刹那が走るには都合がいい。ストレッチをするには、敷かれた玉砂利が、ちょっと痛いが、それは我慢できる範囲だ。それを、のんびりと眺めているロックオンは、毛布を巻きつけている。うっかりというか、なんというか、自分のコートを準備するのを忘れた。トレーニングの監視というより、あのえげつないのが現れては困るから、刹那のトレーニングを見ているわけで、一人にしておくのは危険だ。ということで、毛布を巻いて、寒さを凌いでいる。刹那ほどの寒がりではないが、やっぱりじっとしていると寒い。
「ロックオン、中へ入れ。」
見かねて、刹那がそう叫ぶが、それに従うわけにもいかない。万が一、ここで、『あれ』が現れると、刹那を逃がすために、時間稼ぎぐらいはしなければ気が済まない。
「そんなこと言うなら、俺も走らせろ。」
「ダメだ。あんたは走るな。」
一緒にトレーニングしようとすると、黒子猫がふぎゃーと怒る。まだ、そんなことするな、と、叱るのだ。見ているだけでは退屈だから、和食の入門書を読むことにした。
どうも、うとうととしていたらしい。ふわりと身体が浮かぶ感覚に、驚いて目を開けたら、アレルヤの顔だ。
「ようやく出て来られたよ、ロックオン。」
「・・・おまえさん・・・これはないだろ? 」
呆れたのは、自分がお姫様抱っこされていたことだ。超兵パワーなら、同じ体格の自分でも楽勝で担ぎ上げられるのだろうが、これは自分のプライドに傷がつく代物だ。
「だって、気持ち良さそうに寝てるんだもん。見張りご苦労様でした。後は、僕とティエリアがやるから、ちょっと休んで。」
ひょいと目をやると、刹那のほうにはティエリアがいる。たぶん、ここんところのロックオンの様子を確認しているのだろう。これといって叱られることはやってないから、安心していたら、「その格好はなんですか? 服ぐらい準備してください。」 と、叱られた。
「それはいいんだ。それより、おまえら、あの変態軍人のことは聞いたか?」
「報告は受けています。それで急いで、仕事を終わらせて来ました。今のところ、無事なようですね? ロックオン。」
下ろせ、と、アレルヤに命じて、本堂の前で、その話を先にした。刹那が攫われたら洒落にならないから、まずは、そちらの打ち合わせだ。
「今のところはな。けど、神出鬼没だから、用心しないとヤバイだろ。今日は午後からキラたちが連れ出してくれる手筈なんだ。」
「確かに特定の場所に滞在しているよりは安全ですね。」
「けど、見つかったらキラたちだけで大丈夫なの? アスランは元軍人らしいけど、あれ、尋常じゃなくしつこいよ? 」
「逃げるだけなら、どうにかなるんじゃないか? アスランが、半端なく叩きのめす気満々だからな。」
アスランも現役の時は、トップエリートだったらしいから、それなりの技術は持っている。叩きのめすまでいかなくても、それなりの対処はできるだろう。なんてことを話し合っていたら、「会いたかったぞっっ、少年っっ。いや、運命の恋人よっっ。」 という叫び声で、中断された。
やっぱり、おかしなコスプレ外人は、土塀の上で両手を広げて叫んでいた。なぜか腕には、ふたつの花束がある。
「うわぁー現れたっっ。刹那っっ、戻って来いっっ。」
悟空は、目を覚まして、自分の服が、きちんと畳まれてベッドの横に置かれているのを見て、ちょっと照れ臭い。靴下までが、アイロンでもあてたのかと思うほど、ぴちっとしているのだ。
「おはよー」
「おう、おはよう。なあ、悟空、一応、弁当を作ったから、これ、試してみてくれないか? 」
卓袱台には、きちんとした朝定食と、かなり大ぶりの弁当箱が置かれていた。
「へ? 弁当? 」
「学食があるんだろうけど、たまには、こういうのもいいだろ? 」
なぜか、そこには、他に三つの弁当箱もある。
「これは? 」
「ああ、俺らのも、弁当をしてみたんだ。なかなか入れるのが難しいな。刹那も食べてみたいだろうから。」
で、悟空は、かぱっと弁当を開けてみる。いろんなものが、ちまちまと入っているので、彩りも鮮やかだ。夏場じゃないから、問題はないだろう。
「こんなんいいのに。」
「いや、昨日、ちょっと出かけたら、思いついてさ。」
大人二人で、暇な日曜だったから、ぶらぶらと出かけた。暇つぶしの本でも買おうと書店に行って、弁当の作り方なんていう本を見つけてしまったので、試しに作ろうと、弁当箱まで買ってきたのだと、ロックオンは笑っている。実際、八戒の和食レシピは簡単すぎて、よくわからなくて、入門書を買いに行ったのが目的だったが、こういうのもいいな、と、ロックオンは考えたらしい。
・・・・すげぇーな、おかんって・・・・
その行動力もさることながら、出かけようとしたら、玄関の運動靴まで綺麗になっていた。洗ってくれたらしい。汚れない限り洗わない悟空にしてみると、そんなにピカピカになっているのがびっくりだ。
・・・・俺、こんなに世話されるの初めてだよな・・・・
なんていうか、慣れないので、そこまでされてしまうと、悟空としては照れ臭くなってくる。
「うわぁーこれこれ。いいなあーこのピンクっっ。」
いつもより早めに現れたハイネも、ほくほくと弁当の中に入っているピンクのでんぶに頬を緩めた。その本を目にして、「これ、やってくれ。」 と、依頼したのは、ハイネ本人だった。
「てか、お子様メニューらしいぞ、それ。」
「いいじゃないか。・・・うーん、ママニャン、ひとつだけ不満がある。」
「なんだよ。」
「なぜ、ハートマークにしてくれないかなあー。」
「やって欲しけりゃ、相手を探せ。」
ていうか、それは昼飯だから、先に朝飯を食え、と、トーストやらサラダやらの載った皿を、どんっと置く。右目の見えない距離感も、すっかりと慣れたらしく、ここんところ、ロックオンは、どこかにぶち当たることもなく過ごしている。たまに油断すると、手が空を切るなんてこともあるが、被害は出ないくらいに上達はした。
「ロックオン、洗濯物を回収した。」
だから、刹那のほうも、ちょっと安心しているのか、別行動をするようになった。さすがに、『あれ』の襲撃を心配して、ロードワークは境内のみなんてことになっているが、それ以外には外出もする。
「おう、ありがとさん、刹那。今日は、キラと約束してたよな? 」
「昼から、少し出て来る。」
とりあえず、誰もいない時間帯は、刹那を連れ出すということになった。それなら、来襲されても問題はない。
「ママニャン、俺、これから弁当持って出る。ラボのほうへ顔出してくるから。夜は、いつも通り。夜食は欲しい。」
「ああ、ティエリアたちに会うのか? ハイネ。」
「どうだろうな。歌姫さんとこの本宅で、ヘリの整備して、それから飛ぶんだが、あいつらが、こっち来るかもしれないだろ? 」
三日ばかりかかりそうだと、八戒が言っていたから、微妙なところだ。会えたら、仕事で無理するな、と、伝言してくれ、とだけ頼んだ。
ここの寺の境内は、かなり広いので、てってこと刹那が走るには都合がいい。ストレッチをするには、敷かれた玉砂利が、ちょっと痛いが、それは我慢できる範囲だ。それを、のんびりと眺めているロックオンは、毛布を巻きつけている。うっかりというか、なんというか、自分のコートを準備するのを忘れた。トレーニングの監視というより、あのえげつないのが現れては困るから、刹那のトレーニングを見ているわけで、一人にしておくのは危険だ。ということで、毛布を巻いて、寒さを凌いでいる。刹那ほどの寒がりではないが、やっぱりじっとしていると寒い。
「ロックオン、中へ入れ。」
見かねて、刹那がそう叫ぶが、それに従うわけにもいかない。万が一、ここで、『あれ』が現れると、刹那を逃がすために、時間稼ぎぐらいはしなければ気が済まない。
「そんなこと言うなら、俺も走らせろ。」
「ダメだ。あんたは走るな。」
一緒にトレーニングしようとすると、黒子猫がふぎゃーと怒る。まだ、そんなことするな、と、叱るのだ。見ているだけでは退屈だから、和食の入門書を読むことにした。
どうも、うとうととしていたらしい。ふわりと身体が浮かぶ感覚に、驚いて目を開けたら、アレルヤの顔だ。
「ようやく出て来られたよ、ロックオン。」
「・・・おまえさん・・・これはないだろ? 」
呆れたのは、自分がお姫様抱っこされていたことだ。超兵パワーなら、同じ体格の自分でも楽勝で担ぎ上げられるのだろうが、これは自分のプライドに傷がつく代物だ。
「だって、気持ち良さそうに寝てるんだもん。見張りご苦労様でした。後は、僕とティエリアがやるから、ちょっと休んで。」
ひょいと目をやると、刹那のほうにはティエリアがいる。たぶん、ここんところのロックオンの様子を確認しているのだろう。これといって叱られることはやってないから、安心していたら、「その格好はなんですか? 服ぐらい準備してください。」 と、叱られた。
「それはいいんだ。それより、おまえら、あの変態軍人のことは聞いたか?」
「報告は受けています。それで急いで、仕事を終わらせて来ました。今のところ、無事なようですね? ロックオン。」
下ろせ、と、アレルヤに命じて、本堂の前で、その話を先にした。刹那が攫われたら洒落にならないから、まずは、そちらの打ち合わせだ。
「今のところはな。けど、神出鬼没だから、用心しないとヤバイだろ。今日は午後からキラたちが連れ出してくれる手筈なんだ。」
「確かに特定の場所に滞在しているよりは安全ですね。」
「けど、見つかったらキラたちだけで大丈夫なの? アスランは元軍人らしいけど、あれ、尋常じゃなくしつこいよ? 」
「逃げるだけなら、どうにかなるんじゃないか? アスランが、半端なく叩きのめす気満々だからな。」
アスランも現役の時は、トップエリートだったらしいから、それなりの技術は持っている。叩きのめすまでいかなくても、それなりの対処はできるだろう。なんてことを話し合っていたら、「会いたかったぞっっ、少年っっ。いや、運命の恋人よっっ。」 という叫び声で、中断された。
やっぱり、おかしなコスプレ外人は、土塀の上で両手を広げて叫んでいた。なぜか腕には、ふたつの花束がある。
「うわぁー現れたっっ。刹那っっ、戻って来いっっ。」
作品名:こらぼでほすと 留守番4 作家名:篠義