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ぐらにる 眠り姫6

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 全てを忘れることはできないだろう。忘れても、その事実は、また、眠り姫にもたらされることがある。だが、逆に、全てを思い出してしまったら、眠り姫は眠り姫でなくなるのだろう。信じていたものを思い出したら、眠り姫はマイスターに戻る。そうなったら、眠り姫は戦場で私と戦うはずだ。
 それは、またとない高揚感と、喪失した寂寥感を私に運んでくるだろう。

・・・きみは、その時に、『戦えない』と嘆くことだけはしないでくれ・・・・

 マイスターとフラッグファイターという立場であれば、その立場に相応しい態度がある。「戦えない」 と停滞されたら、私も眠り姫も、どちらもが死ぬかもしれない。

・・・もし、きみを私が撃破してしまったら、待っていて欲しい・・・・

 そんな有りもしないことを考えて、私は微笑む。熾烈を極めた戦闘になるだろう。青いガンダムと対峙した時に、本当に、ガンダムが愛しいと思った。私に、多大なるプレッシャーと危機感というスリルを味あわせ、私の限界を超えた技術を導き出してくれる相手だからだ。そして、私を殺すためにビームサーベルを叩き込む、その姿を憎悪した。
「眠り姫、きみは、どの色のガンダムなんだろうな? 」
「わかるわけがないだろう。」
 覚えていない眠り姫は、私の質問に拗ねたような顔をした。それから、噛み付くようにキスを仕掛けてくる。眠り姫は、私に欲情しているわけではない。ただ、何も考えず眠りたいから、私を、その道具にしているだけだ。
 そうではなくて、本当に触れ合いたいと願ってくれる日はあるのだろうか。そんなことを考えて、おざなりにキスをしていたら、いきなり押し退けられた。
「もういいっっ。出て来る。」
 口をぎゅっと拭って、眠り姫は怒ったように立ち上がった。途端に、ふらりと崩れる。
「だから、興奮してはいけないと言うんだ。」
 最近、意識を失うまでの時間が短くなっている。たぶん、そろそろ限界なのだろう。心疾患が進行していることは、ドクターから報告を受けていた。意識が戻る時間がなくなるのは、まもなくのことだろう。
「きみは、私の眠り姫だ。だが、私から、私の癒しを奪うことだけは許さないと言ったね? これに関しては、きみの意見は受け付けない。私の思うようにさせてもらう。」
 さすがに、軍のドクターでは、その手術はできない。専門のドクターがいる病院へ紹介状を書かせ、カルテも向こうへ送ってある。その時が来たら、そこへ搬送する手配も、すでに終えていた。
 眠り姫が、どんなに拒否しても意味がない。なぜなら、眠り姫は、その時、眠っているのだから。
「きみは、優秀なナイトのキスで目を覚ます。その時、どんな台詞を吐くのだろうな? 」
 たぶん、眠り姫は怒るだろう。私が勝手にやったことに対して、というよりは、約束を破ったことに対して。だが、それを言い負かすことはできる。

・・・きみは、私が生きている限り、私の傍に居るとも約束した。その約束を守ってもらうには、必要なことだった。・・・・

 その台詞を、私が告げれば、眠り姫は黙るしかない。ただの口約束だ。だが、心優しい眠り姫は、それを無碍にすることはない。


 それから、一月経過しないうちに、眠り姫は眠った。次に目が覚めるのは、私のキスが必要だと思っていた。けれど、私は、眠り姫の怒り顔も、困った顔も見ることは出来なかった。なぜなら、眠り姫は手術の後、容態が安定した途端に姿を消したからだ。
作品名:ぐらにる 眠り姫6 作家名:篠義