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【イナズマ】マイ・リトル・パッサ

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「松野とは、どこまでいってるんだ」

いつもの、淡々とした調子でそんなことを言われて、
俺は危うく飲んでいた牛乳を噴出しそうになった。
こらえた代わりに、気道に入って、派手にむせ返った俺に、
ゴーグル越し、心配そうな訝しそうな視線が投げかけられる。

「……大丈夫か?」
「大丈夫かじゃないよおま、え、は!?」

見事に声がひっくり返った。見なくてもこちらにクラスの視線が集中しているのがわかって、
眉間に皺は寄るわ耳は熱いわ、相当面白い顔をしている予感がする。
目の前でパンをちぎっていたゴーグルは、一瞬間を空けた後、

「……お前ら付き合ってるんだろう?違ったか?」
「いや、その、あー、鬼道有人くん」
「なんだ、」
「取り敢えず給食食べよう話はそれからだ」

俺の有無を言わせない調子に、少し圧されつつ、鬼道はこくこくと頷いた。
せっかく好物のクリームシチューなのに、まともに味わう余裕がない。
さわさわとした囁きが、全部こちらに向いている気がして落ち着かない。
何考えてるんだこいつは。
ちら、と盗み見た鬼道の表情は、
目元を覆うレンズのせいでさっぱり読むことができなかった。


帝国のキャプテンで、天才ゲームメーカーだとかフィールドのコンダクターだとか、
仰々しい名前で呼ばれていた鬼道有人が、雷門に編入してきたのは、
ついひと月と少し前のことだ。
そのせいで色々ごたごたはしたけれど、
最近では青と黄色のユニフォーム姿も大分見慣れてきた。
何の縁なんだか、同じクラスに編入してきたものだから、
必然的に同じ部の俺が世話を焼くことになって、結果妙に親しくなってしまった。
こうして机をくっつけて給食食べるとか、違和感なくできる程度には。
でも、まさか唐突にそんな突っ込んだ質問が来るとは思わなかったんだけど、
天才の思考回路ってどうなってんの?
大体、そう言う話題に一番縁遠そうなんだけど?

流し込むように給食を食べ終えて、俺たちは連れ立って教室を出た。
この時間にあまり人がいないところって言うのは結構限られてて、
教室から一番近い場所ってなると、屋上くらいだ。
でも、最近天気も陽気もいいから、もしかしたらわらわら人がいるかも……と思いつつ、
祈るような気持ちで白い扉を押し開ける。
階段の上からぐるりと見渡した屋上には、幸い人影は見当たらなかった。
まだ昼休みが始まったばかりだからかもしれない。
日に焼けた黄色いベンチの横を通り抜けて、フェンスにもたれかかる様に体を反転させる。
鬼道はベンチの上にすとん、と腰を下ろした。

「……あのさ、鬼道」
「うん?」
「あー、どこから突っ込んだらいいのか分からないんだけど……その、なんだって?」
「だから、松野とはどこまでいってるんだ、と」
「どこまでってなんだよ……!!」

がしゃ、と背後でフェンスが音を立てる。
どこまでって、どういうことだ。
いや、さっき『付き合ってるんだろう?』とか言ってたから、
俺達の事を把握した上でのセリフなんだから、つまりえーっとそういうことで、

「……ていうか、あの、なんで知ってるの……?」
「何が」
「だから、あー……松野と、俺のこと」

確かに、俺と松野は付き合って、る、と言っていいんだと思うけど、
それを誰かに言った事はない。
松野がなにくれなくくっついてくるのは今に始まった話ではないし、
判断材料にはならないはずだ。
鬼道は首を傾げた俺に、淡々と口を開く。

「帝国で、いろいろ調べていたうち、不可抗力的に」
「……は?」
「確固たる情報ではなかったが、状況を整合すると、そうとしか思えなかった」
「……つまりバレバレってこと?」
「いや、気づいてる奴の方が少ないだろう」

恥ずかしいやら焦るやらで顔色を変えた俺に、鬼道が慌ててフォローに入る。

「……マジで?」
「ああ。俺がみたところ、だが」
「そうか……?」

ひとまず、胸をなで下ろす。
鬼道の洞察力は信用に足るはずだ。
よかった。
部内に知れ渡っていたとしたら、恥ずかしさといたたまれなさで引きこもりになりそうだ。
松野の行動がそうなる前と後で何か変わったわけじゃないけど、
周囲の認識が違うと意識してしまったら、まともに部活なんて出来なくなる。
鬼道に関しては、まあ、仕方ないこととして諦める。
他にも気づいてる奴がいるらしいって含みが気になるけど、深く考えたら駄目だ。多分。

「……でも、なんでそんなこと聞くんだよ」

鬼道は、そういう話題に一番遠いところにいるイメージだ。
興味本位で人のプライバシーに首を突っ込んでくる奴じゃない、ってことくらいは、
短い付き合いでもわかる。
俺が尋ねると、鬼道は珍しく言葉に詰まって、

「……ああ……いや、」
「何だよ。人にいきなりそんな話振って。何か理由があるのか?」
「その……」

珍しい。鬼道が言い淀んでる。
眉はぎゅっと寄せられて、ゴーグルに隠れてても明らかに困った顔をしているのがわかる。

「……参考、までに」
「参考う?」
「俺は、こういうことは、その、あまり得意じゃないんだ。
だから、その、付き合ってる相手がいる人間に話を聞くのが有効じゃないかと思ってだな」
「ちょ……ちょっと待てよ、おま、へ?え?」

その口振りじゃまるで

「……鬼道、付き合ってる奴いるの?」

俺が尋ねた瞬間、鬼道の顔が目に見えて赤くなった。
水の中にインクを垂らしたみたいな変化に、むしろ俺が慌てた。

「え、あ、いや、ごめん……!」
「あ、い、いや……」

二人で何故かうろたえながら、次の言葉を探す。
そんな反応されたらこちらまで照れてしまう。

「さ、流石にモテるよな鬼道!まだ転校してきてひと月ちょっとなのに、彼女出来たんだ。
へえー……あ、もしかして帝国の女子だったりする?
あ、そのさ、でも、俺に聞いたって参考になんか……
彼女いるやつ、うちの部にいたかなあ……」
「いや……それじゃ駄目なんだ」
「駄目?なん……」

言いかけて、俺は、はたと一つの可能性にたどり着いて、そして硬直した。
いや、でも、まさか、そんな事があるんだろうか。

「男!?鬼道の相手も!?」
「う……」

耳まで赤くしながら、でも小さく頷くのを俺は確かに見た。
思わず勢い込んで身を乗り出す。

「誰!?」
「う……か……」
「か、」
「風丸……」

今度こそ言葉を失って、俺は目の前のベンチに沈んだ。
ここ最近、いろいろと予想外のことが多すぎる。



「……へええ……なんか……うん、意外」
「……何がだ、何が」
「いや……」

そのまま芋づる式に風丸とのなれそめを聞き出すことになってしまった。
鬼道の隣に座って呟けば、ちっとも赤みの引かない顔で、ゴーグル越しに鬼道が睨んでくる。
……まあ、ちっとも迫力ないわけだけど。

「……いや、風丸もモテるんだけどさ……」
「だろうな」
「でも、プレゼントされようがラブレター貰おうが告白されようが全然構ってなかったから、
そういうことに興味ないんだと思ってた」
「……そうなのか」
「うん」

その印象はそのまま鬼道にも当てはまるんだけどな。
ていうか、付き合いだしてひと月くらいって、風丸早くないか。鬼道転校してきてすぐだろ?