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GUNSLINGER BOYⅩⅡ

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世界はあいつがいなくなってもよどみなく回りつづけたけれど、
俺の時間はあの日で止まってしまった。



頻繁にテロや思想団体同士の抗争が起きているこの国では人々は人が死ぬニュースにすっかり慣れきってしまっていて・・いや、麻痺してしまっているというべきか。三人の被害者が出た凶悪事件で犯人グループが元軍従事者というスキャンダラスなニュースですらほんの短い時間で忘れ去られていった。
あいつがいなくなったのに、俺は予定道理に卒業して、引っ越しをして、新しい町の学校へ入学して、日常の流れに組み込まれた。
その日常のひとつになるはずだったあの日の約束だけ置き去りにして。

自己紹介で寒いギャグをとばした。ちょっと悪い友達を作った。毎日女の子をナンパした。馬鹿みたいに陽気に振舞った。

心に空いた空洞は埋まらなかった。


あれから2回も同じ季節が廻ったっていうのに、未だにあいつが死んだことを受け止められてない。心の大事な部分がぽっかりと抜け落ちてしまったような空虚さがいつもつきまとい続けていてそれを隠すために無理に笑顔を作って生活している。
ある日恋人関係にある少女にだけこのことを打ち明けた。
彼女は黙って話を聞いてくれた。
少しだけ心が軽くなった。




騒がしく人や車が行き交うのを歩道橋の上から眺める。
特に意図があるわけでもなく、ただぼんやりと。

都会だけあって元々交通量も人も多いが、先日この街でテロ未遂があったとか反政府主義者が捕まったとかで警察やらなんやらがそこらじゅうで警備をしているのも見える。
政治にはあまり興味が無いが良く分からない奴らに自分や知人を傷つけられるのは嫌だ。
人の流れを見ながらそう思う。

サラリーマン、若い女性、子づれの夫婦、チンピラ、浮浪者・・・・・

とくにやることも無いし、ナンパでもしようか。
そんなことを考えていると道端に停まったタクシーから二人づれの男が降りるのが見えた。
いや、よく見るとそのうち一人は男と呼ぶにはまだ早いような小柄な少年だった。
獣耳のついたフードを被っていて髪型も顔もよく見えない。
その隣をモッズコートを着た若い男が何か話しかけながら歩いている。男はモデルのように整った容姿をしていて行き交う女性達がちらちらと振り向いているのが見えた。
そんな女性達には目もくれず、男は少年の手を引き歩く。
親子には見えない。兄弟か何かだろうか。
やがてその二人づれは自分のいる歩道橋の下を通っていった。
歩道橋の逆側に移動してまでその二人を目で追ってしまったのはどこか異質な感じがしたからだ。
別に特に目立っているわけでもない。気がつかなければただの都会の人ごみの一部に過ぎない。しかし、そこだけ注目してみると何だか妙な違和感を感じるのだ。なぜだろうと思って見ていると、ふいに少年がこちらを振り向きフードを少し持ち上げた。少年は明らかに自分を見ていた。警戒するような視線が一瞬こちらをとらえ、またすぐ前を向き歩きはじめる。

俺はその後も数秒間かたまったまま動けなかった。
視線の向こうでどんどん二人づれが遠ざかっていく。


だって、そんなはずない。
そんなはずがない。



少年は死んだはずの親友と同じ顔をしていた。



作品名:GUNSLINGER BOYⅩⅡ 作家名:net