2.14の恋人たち
しまっていた。冷めてしまったココアをギンタは手にとる。
「珍しいじゃん、ツキヒコが俺にこういうの買ってくるなんて」
ばっと腕をほどいてギンタと向かい合う。手が緊張の余り震えた。
「っあ、そ、それは・・・・何ていうか、バ、」
下を向いてしどろもどろに話すツキヒコの様子から、疑問だったことが全て繋が
った。いつもより遅れて来たことも、隣に座って少しの間動作がぎこちなかった
ことも。不器用な彼なりに自分に何かをしようとしてくれたことを知って、思わ
ず頬が弛む。衝動に突き動かされるまま、そっと彼の頬に手を伸ばして唇を重ね
た。
「・・・・ありがとう、これ」
しばらくそうした後、ゆっくり唇を離して更に顔が赤くなった彼に笑いかける。
昼休みの終わりを告げる放送が流れる中で、ツキヒコはぎこちなく返す。
「き、気が向いてやっただけだからな!・・・・ほら、帰るぞ」
「はいはい」
手の中にあるのは、端から見ればただの冷めたココアだ。けれど、今まで貰った
どんなものよりも特別に思えた。