こらぼでほすと 留守番5
「まあ、それは諦めてますから。ドクターが、先に風邪薬を打ってくれたんで、それほど酷いことにはならないです。」
ずっと一緒にいるのだから、すでに感染しているはずだ。だから、それは、もう諦めている。
「けど、ママニャンが寝込んだ場合、ここんちの留守番がいなくなるぞ?」
ロックオンが寝込むと、子猫たちのように、すぐに回復はしないし、具合も、もっと悪い。そうなったら、ラボで治療してもらうしかないので、ハイネが、そう言う。
「そうなったら、アレルヤたちで、留守番してもらって、俺はラボへ帰るよ。ハイネ、おまえさん、そのまま、三蔵さんが帰ってくるまで居座ってくれるだろ? 」
「ああ、それはいいよ。」
「じゃあ、俺も、ここに居候しようかなあ。」
「シンは意味がないだろ? 」
「そうだな、シンでは、ほとんど、寺に居られないからな。まあ、それなら、八戒さんたちに留守番してもらえばいいだろう。」
本来のおかんが、こちらにいれば、問題はない。朝だけは、アレルヤたちで、どうにかしてもらわなければならないが、それ以外の時間は、今のシフトなら悟空とも顔を会わせられる。
「おまえ、今日から、俺と同じ部屋で寝ろよ、ロックオン。わざわざ病原菌満載のとこで寝るな。」
「そうもいかないんだ。」
病気の時は、心細いものだ。それに、夜中に具合が悪くなったりしたら、大変だ。だから、客間で寝るつもりをしている。
「ロックオン、それは、僕が看るよ。ハイネさんのところで休んで。」
「そうだよ、ロックオンくん、アレルヤくんがいるんだから、そうしたほうがいい。」
余計に具合が悪くなるようなことはしないほうがいい、と、トダカに言われると、ロックオンも大人しく頷く。
「こんにちは。」
その騒ぎも落ち着いたところへ、レイが顔を出した。こちらも、手にコンビニの袋を持参している。
「遅いぞ、レイ。」
「すまない。キラさんから連絡が入って、パシっていたんだ。・・・ロックオンさん、これ、キラさんからの差し入れです。プリンとかチューブパックのヨーグルトとか、喉に優しいものを選んであります。」
すでに、キラには医者からの連絡が入っているらしい。それで、レイに、熱があっても食べやすいものを用意させてくれた。
「助かるよ、レイ。まあ、ケーキでも食ってくれ。って言っても、トダカさんからの差し入れなんだけどさ。」
「ありがとうございます。・・・たぶん、八戒さんたちが、後から顔を出すみたいです。」
キラさんは、アスランが止めました、と、軽く笑って、レイが言う。天然電波なんてものは、病人には毒だ。そこいらは、アスランもわかっている。だから、キラは自分が行けないから、と、それを用意させたらしい。そういう気遣いはできるのに大人しくできないのが、電波天然だ。
「アレルヤ、ママニャンがぐったりしたら、店に連絡してくれな。俺、ヘリのスタンバイするから。」
「はい、よろしくお願いします。」
いや、そんなことはないから、と、ロックオンは否定したが、他のものは、いつぐらいにダウンするかなーと予想していたりする。
おかしな予想をしている寺の時間から遡ること数時間、アスランの携帯端末に医者からメールが入った。マイスター関連の情報は、アスランと八戒のところへ連絡が入る。
「キラ、刹那が風邪だって。」
「えええええええ? ママも? 」
「それは、まだだけど時間の問題だろうな。でも、ちょうどよかったかもしれないよ。『あれ』は撃退したところだから、刹那も安全だしね。」
お見舞いに行かなくちゃっっ、と、キラは外出の準備を始めているが、アスランは、それを遮った。このハイテンションで、風邪で寝込んだ刹那に会わせたら、確実に親猫に拳骨お説教だ。
「今日はやめておこう。刹那とティエリアも寝込んでるから、あっちも忙しいだろうからね。」
「でもっっ、お見舞いしたいっっ。」
「明日か明後日くらいにしよう。その代わり、今日は、俺と、ちょっとお洒落なランチをしないか? 」
昨日まで、マイスター組と、さんざんに外出していたから、ふたりで、ゆっくりしている時間はなかった。たまには、デートみたいなお出かけをしたいと、アスランは思っていたし、キラを寺へ近づけないのにも有効だ。
「うーーーどんな?」
「まずは、スカイリストランテで、優雅なブランチ。」
「うん。」
「それから、観覧車で空中散歩。」
「うん。」
「それで、ちょっとドライブしてから、お仕事。どう?」
「うん、行くっっ。あ、でも、やっぱり、お見舞いだけ届けてもらおう。」
自分が行けなくても、キラには優秀なパシリがいる。携帯端末を取り出して、そのパシリそのいちに連絡を取る。熱があっても口当たりのいいプリンとかヨーグルトとかゼリーを運んで、と、お願いすると、今度は、ウキウキしてアスランの顔を眺めた。
「ちょっとお子様デートだよね、アスラン?」
「しょうがないだろ? 仕事があるんだからさ。」
「観覧車で、キスくらいはして欲しいな。」
「それぐらいなら、全然オッケー。ドライブの時も、いいよ。」
「でも、なんか物足りない。」
「まあ、それは、お仕事が終わってからのお楽しみだな。それまで、熱が醒めないくらいのキスを贈るよ。」
「うふふふ・・・期待してるね。」
とろりと蕩けそうな笑みで、アスランに笑いかけて、キラは抱きつく。もう、このまま雪崩れ込んだほうがよくないか? と、キラのダーリンは抱きしめ返して提案したが、アスランのハニーは、「やだっっ、観覧車がいい。」 と、抵抗した。
作品名:こらぼでほすと 留守番5 作家名:篠義