悪戯はほどほどに
2月14日。日本のうら若き乙女達のビッグイベント。同じく若い男子達にもチョコを貰えるか貰えないか運命の日でもある。
その前日、13日に男子高校生が自分で買ってきたチョコ片手に慣れぬお菓子作りに四苦八苦している様は見る人が見れば相当無様であろう。
そうは思いつつも心躍る。勿論今作っているチョコレートケーキは自分で食べる訳ではない。所謂見得チョコと呼ばれるものでもない。同じ部活に所属する男子高校生にプレゼントするためのものだ。
……男子高校生が同じ男子高校生にバレンタインにチョコをプレゼントするためににやにやしながらケーキを手作りしている、と表現すると余計に痛々しさが増す。が、僕は気にすることなく泡立て器で卵を泡立て続ける。
どうせ一人暮らしで誰が見ているわけでもないのだ。にやにや笑っていようが鼻歌を歌おうがそれを気味悪がる人なんていやしない。
「彼、喜んでくれるかなぁ……」
わざと声を出して独り言を呟く。我ながらぞっとするほど恋する乙女だ。こんな独り言呟きながらチョコを手作りする人間、男子高校生どころか女子高生でも漫画かアニメの中にしかいやしない。
が、それでいいのだ。こういったイベントは心の底から乗りに乗り切ることが重要だ。楽しめるうちに思う存分楽しむのがモットーである。
それに。チョコを受け渡した時の彼の顔を思い浮かべるだけで胸が弾む。彼は、それはもう、とんでもなく。いやぁな顔をしてくれるだろう。
明日、SOS団の女性陣から僕達へチョコの贈与があるのは間違いない。涼宮さんが企画するのだからそれはもう盛大なイベントになるだろう。すんなりチョコを受け取ってはいおしまい、となる訳がない。一体どんな趣向を凝らしてくれるのか。うん、今からとても楽しみだ。
彼だっていつも通りぐちぐち言いながら、それでも満更でもない様子でそれを受け取るのだろう。
自分の計画ではその浮かれきった彼に今作っているチョコレートケーキを手渡しする予定である。涼宮ハルヒは関係なく。あくまで二人っきりの時間を作って。
頬をちょっと染めて、手作り感溢れるケーキをプレゼント。性別さえ無視すれば甘酸っぱい青春の一ページ、告白シーンだ。それを僕が彼に対してするのだからそりゃもう嫌がってくれるだろう。盛大に。十中八九突っ返されて自分で食べる羽目になると予想しているのでチョコは高価なものを使用している。
……別に彼のことが嫌いでこんなことをやっているわけではない。ただ、まあ、……彼はからかうのには絶好の相手だった。
古泉一樹のキャラクターを気にする必要もなく、この程度の悪ふざけをしてもそれで関係悪化することはないだろう相手。こちらの反応にいちいち真面目に対応してくれるから余計に楽しい。
だからそう、これは友チョコを呼ぶに相応しい代物なのだ。ちょっと過剰な演出をするだけで。
肌を粟立てて拒絶反応を示す彼を一通り満喫したらちゃんと種明かしもする予定だ。怒鳴られたあと数日は冷たい対応を取られるだろうがまあ想定の範囲内だ。
出来たケーキ生地を使い捨ての紙製のケーキ型に移し予熱をしておいたオーブンに放りこむ。
「楽しみ、だなぁ」
机の上に用意しておいたレースをあしらったリボンをくるりと指にからませて明日のことを夢想した。
その前日、13日に男子高校生が自分で買ってきたチョコ片手に慣れぬお菓子作りに四苦八苦している様は見る人が見れば相当無様であろう。
そうは思いつつも心躍る。勿論今作っているチョコレートケーキは自分で食べる訳ではない。所謂見得チョコと呼ばれるものでもない。同じ部活に所属する男子高校生にプレゼントするためのものだ。
……男子高校生が同じ男子高校生にバレンタインにチョコをプレゼントするためににやにやしながらケーキを手作りしている、と表現すると余計に痛々しさが増す。が、僕は気にすることなく泡立て器で卵を泡立て続ける。
どうせ一人暮らしで誰が見ているわけでもないのだ。にやにや笑っていようが鼻歌を歌おうがそれを気味悪がる人なんていやしない。
「彼、喜んでくれるかなぁ……」
わざと声を出して独り言を呟く。我ながらぞっとするほど恋する乙女だ。こんな独り言呟きながらチョコを手作りする人間、男子高校生どころか女子高生でも漫画かアニメの中にしかいやしない。
が、それでいいのだ。こういったイベントは心の底から乗りに乗り切ることが重要だ。楽しめるうちに思う存分楽しむのがモットーである。
それに。チョコを受け渡した時の彼の顔を思い浮かべるだけで胸が弾む。彼は、それはもう、とんでもなく。いやぁな顔をしてくれるだろう。
明日、SOS団の女性陣から僕達へチョコの贈与があるのは間違いない。涼宮さんが企画するのだからそれはもう盛大なイベントになるだろう。すんなりチョコを受け取ってはいおしまい、となる訳がない。一体どんな趣向を凝らしてくれるのか。うん、今からとても楽しみだ。
彼だっていつも通りぐちぐち言いながら、それでも満更でもない様子でそれを受け取るのだろう。
自分の計画ではその浮かれきった彼に今作っているチョコレートケーキを手渡しする予定である。涼宮ハルヒは関係なく。あくまで二人っきりの時間を作って。
頬をちょっと染めて、手作り感溢れるケーキをプレゼント。性別さえ無視すれば甘酸っぱい青春の一ページ、告白シーンだ。それを僕が彼に対してするのだからそりゃもう嫌がってくれるだろう。盛大に。十中八九突っ返されて自分で食べる羽目になると予想しているのでチョコは高価なものを使用している。
……別に彼のことが嫌いでこんなことをやっているわけではない。ただ、まあ、……彼はからかうのには絶好の相手だった。
古泉一樹のキャラクターを気にする必要もなく、この程度の悪ふざけをしてもそれで関係悪化することはないだろう相手。こちらの反応にいちいち真面目に対応してくれるから余計に楽しい。
だからそう、これは友チョコを呼ぶに相応しい代物なのだ。ちょっと過剰な演出をするだけで。
肌を粟立てて拒絶反応を示す彼を一通り満喫したらちゃんと種明かしもする予定だ。怒鳴られたあと数日は冷たい対応を取られるだろうがまあ想定の範囲内だ。
出来たケーキ生地を使い捨ての紙製のケーキ型に移し予熱をしておいたオーブンに放りこむ。
「楽しみ、だなぁ」
机の上に用意しておいたレースをあしらったリボンをくるりと指にからませて明日のことを夢想した。