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こらぼでほすと 留守番6

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 メニューリストを差し出したレイは、女性に対するのと同じくらいに王子様然とした姿で対応している。
「そうだね、何かカクテルを。ベースはジンあたりで頼むよ。」
「承知しました。」
 内心で腹を抱えて笑っていようとも、レイは顔には出ない。ポーカーフェイスも、ここまで来ると立派だ。
「キラさんに御用ですか? カタギリ様。」
「うん、僕の友人のことでお願いがあったんだ。それに、僕もご尊顔を拝したいと思ってね。」
 友人? それは、『あれ』か? やはり、『それ』は、『あれ』の関係者か? と、傍耳を立てているスタッフたちは、内心でツッコミつつ、視線だけで会話する。アスランがエスコートする形でキラを案内してくる。その背後からカクテルを運んでいるのはトダカだ。バックヤード担当のダコスタは、虎と共にエターナルのほうへ遠征しているので、トダカが、お運びさんもやっている。グラスは四つ。同じ色のブルーのショートグラスを机に置く。
「はじめまして、ご指名ありがとうございます。僕がキラです。ブルーへヴンで、乾杯しましょう? カタギリ様。」
「本当に菫色の瞳に亜麻色の髪の美少年だねぇーキラくん。グラハムの美辞麗句そのままの人なんて、今までお目にかかったことはなかったよ。」
 すとっと、カタギリの横に座ったキラは、その言葉を逃さなかった。
「グラハム様の知り合い? 」
「ああ、親友なんだ。ちょっと、きみにお願いしたいことがあってね。バジルールさんに無理して連れて来てもらったんだ。」
「お願い? 」
「ああ、まずは乾杯だね。」
 グラスを手にしたカタギリは、それなりに紳士的ではあるらしい。ただし、そのカクテルは只者だと思っている辺りは、迂闊だ。キラたちのは、ただのブルーソーダだが、カタギリのはウォッカベースだ。
「はい、ようこそ、『吉祥富貴』へカタギリ様。」
 シンの音頭で全員が乾杯して飲み干した。それから、ジントニックという本来、カタギリがオーダーしたものが運ばれてくる。
「ああ、きみたちも好きなものを飲んでね。」
 もちろん、ジントニックもドライジンというアルコール度数の高いもので作られている、見た目には、まったくわからないのが、ミソだ。カタギリの言葉に、キラたちにもフルートグラスのカクテルが運ばれてくるが、こちらもノンアルコール。キラにいたっては、オレンジジュースとパイナップルジュース、グレープフルーツジュースのミックスされたお子様カクテルである。
 二杯目を飲みながら、ようやく本題に入る。
「僕の親友が、この間、ちょっとした怪我をしてね。入院するほどじゃないんだけど、あまり動き回れないんだ。それで、こちらには友人も少ないし、できたら、キラくんにお見舞いに来てもらえないか、と、お願いしたくて。」
「ええ? それは災難でしたね。」
 いけしゃあしゃあと心配した表情を作り出せるキラは天才だと、シンは感心する。それらの事前情報も、事後情報もちゃんと耳に入れているのに、びっくりしてみせられるからだ。
「そうなんだよ。駅の階段で転んだらしいんだけど、派手にやっちゃって肋骨まで折ったみたいでね。」
「うわぁー痛そう。」
「歩いたりはできるんだけど長時間は無理みたいでね。それで、できたら、『運命の女神』様の顔を見せてあげたら、その無聊も慰められるかと思ったんだ。どうだろう? 」
 うーうーん、と、キラは悩むフリはする。その答えは、どうしたらいいか、わからなくて、背後に控えていたアスランに目配せした。
「申し訳ありません、カタギリ様。当店では、店外でのデートは店の決まりでお断りさせていただいております。」
「もちろん、それはわかっているよ。ただ、僕としては個人的に『お願い』させていただいてるんだ。」
「そちらもお断りさせていただきます。個人的にも、お客様と店外で会うことは禁じられておりますので。」
 アフターも店外デートも同伴出勤も全て、『吉祥富貴』では禁止事項だ。個人的に会うことまでは制限はされていないが、この場合は、こう言うほうが無難だと、アスランは付け足した。
 完全な拒否に、カタギリは怒るのかと思ったら、ヘラヘラと笑った。
「まあ、そうだよねぇ。自分の親友のことを悪く言うのも、どうかとは思うけど、グラハムの猛攻は激しすぎて退くからね。・・・わかった、それについては、もういいよ。ただ、キラくんと、ゆっくりお話させていただこうかな。」
「はい、ゆっくりしていってくださいね、カタギリさん。」
 ニパッと笑ってキラが小首を傾げる。その気のないものでも、この大明神様の攻撃は効く。
「かわいいねぇーキラくん。」
「やだなあーカタギリさん。僕、男なんだから、それおかしいですよ? 」
 割と常識的ではあるんだな、と、『それ』についての評価は訂正する。センスがおかしい人ぐらいのところで落ち着いた。
作品名:こらぼでほすと 留守番6 作家名:篠義