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異様に煌めくこの足を 海へ

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「おぬしに限らず、私の部下は優秀な者たちばかりだから言う必要は無いのだろうが、気をつけて行って来い。無事に帰ってまた旅の話を聞かせてくれ」
「喜んで。陛下の御為に、お耳を退屈させぬ数多の逸話を持ち帰りましょう」
恭しく一礼し、ギーヴは柔らかく笑んだ国王の聡明な面差しを見返した。次にまみえる頃、その容貌は様々なものに彩られて、瞳は一層深い色合いを宿しているのだろう。日々変化を間近に見守るダリューンやナルサスなどはいざ知らず、それはギーヴにとっても楽しみとするに足る王の成長だった。
ではルーシャンが待ちくたびれているだろうから、と言って去っていく背を見送り、ギーヴも踵を返した。

厩舎では当直の兵士がギーヴの姿を見つけて礼をとる。軽く手を挙げて応じると、一人の兵士がギーヴが出立の準備を整えた状態で預けておいた馬の手綱を引いて来て、お気をつけてという言葉とともに手綱を差し出した。どうもと軽い調子で答え、受け取った手綱を引いてギーヴはエクバターナの城門を目指した。
王都の外から乾いた風が駆け抜けて赤紫の髪を巻き上げる。城門近くで馬に跨り、馬上で振り返ると街の中心にはしかつめらしい王宮が聳えている。だがその王宮がどこか鷹揚に構えて見えるのは気のせいだろうか。前王が未だ存命していた頃に訪れた時よりも随分と印象が違って見えた。玉座に座る人物如何によってこうも違ってくるものか、あるいはそれはギーヴがその人物を知っている所為か、と苦笑がギーヴの口元を掠めていく。
反発心や利用価値以外の何も見出す気のなかったものに、意味を持たせたのは紛れもなくアルスラーンであり、そして巣を持たないギーヴが無事帰れという言葉に反意を催さないのは相手がアルスラーンであるからに他ならない。
自由にならない尊い身の為に、降り積もるような話の種を持って帰ろうとギーヴは思うのである。


作品名:異様に煌めくこの足を 海へ 作家名:ao