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ただのものかき
ただのものかき
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最高の親友(ライバル)

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「きゃあっ!!」


ドサッ、ザザザッ…。


「ふう…」

檜作りの道場、まだ誰もいない時間。
この国(アメリカ)には不似合いとも言える純和風…。
そんな神聖さすら感じられる道場の中、響く声。


――――――――響いた声は、まだ女性というには若い、大人になりかけの女の子の声――――――――


その正面に、両の腕を美しい直角に折り曲げ、腰に揃えての息吹を行うは今まさにその女の子が戦っていた相手。
乱れらしい乱れなどなく、過ぎたほどに純粋とも、愚直とも言える不器用さに満ち溢れ…


――――――――それでいて神秘的な真っ直ぐさに満ち溢れた構え――――――――


男の名はリョウ・サカザキ。
このサウスタウンにてその名を馳せた流派、『極限流空手』の二代目であり…


――――――――同時に『無敵の龍』とも呼ばれる、世界でも屈指の格闘家だ――――――――


「…いったあ……」

その『無敵の龍』に倒された女の子が起き上がる。
恨みがましさを含んだ顔でリョウを睨んで半身を起こす彼女は、ユリ・サカザキ。
目の前にいるリョウの実の妹であり、また女性でありながら世界に名を馳せている極限流の格闘家でもある。

ユリ「むうう~…また勝てなかった…」

年齢よりも幼さを感じさせる膨れた顔で兄を睨みつけるユリ。
道場の床に腰を下ろし、半身を起こしただけの状態だ。
『綺麗』よりは『可愛い』の方に偏ってはいるが、作りそのものは美しいその顔は、見るものが見れば心奪われるものとなっている。

リョウ「まだまだだな、ユリ」

そんな妹に対し、男の魅力に溢れた精悍な顔に爽やかな笑みを浮かべながらの酷評。
だが実際には実力の差などほぼないに等しく、いつ自身が敗れることになってもおかしくなどない。
この笑顔は、そういった妹の目覚しい成長からも来るものである。
もちろん、リョウ本人はそれを伝えることもすることはなく、ただユリの不機嫌を煽るだけとなるのだが。

ユリ「ふんだ!!もうすぐお兄ちゃんなんか、一捻りにしてやるんだからね!!」

案の定、そんな余裕しゃくしゃくのリョウの笑顔に可愛らしい負け惜しみが飛び出すユリ。
しかし、父・タクマから受け継がれた彼女の格闘才能(センス)は間違いなく兄を上回るものであることに疑いはない。


――――――――極限流の稽古に取り組み始めてからわずか一年で、先を進んでいた兄とまともに戦えるほどの――――――――


無論、その過程には彼女自身のたゆまぬ努力もあってのこと。
だが、それを差し引いても恐ろしいといえるほどの才能(センス)だと言えよう。

リョウ「(間違いなく才能(センス)でいえば俺より遥かに上だ…我が妹ながら大したもんだよ…)」

自身がその身にどれほどの傷を負うことになろうとも臆することなく前に進み、護り続けてきた大切な存在。
その大切な存在の類まれなる才能(センス)に気づいた時の複雑な思い。


――――――――自身をも上回る格闘家になれると確信したときの喜びと――――――――


――――――――もはや自身が護る必要などないと確信したときの空虚な想い――――――――


相反し、矛盾するその想いを自覚した時の心境。
あれは、今でも忘れられない。

リョウ「ははは、その時を気長に待ってるよ」

一時はどんなことをしてでも極限流(このみち)に関わらせない…。
だが、それすらも押し切ってこの妹は自分で歩み始めた。
どんな想いで歩み始めたのかは分からない。
今でも。
だが、この大切な存在がそうすることを願うなら…。
自らが高い目標となって…。
同時に道標となってこの妹を導いていこう。
この孤高の龍は、自らに厳しく修行を課しながらも。
そう想い、そして、そう取り組むことにした。

ユリ「む~~~~っ!!!!」

そして、この妹は、誰にも譲れない想いの元に極限流(このみち)を歩み始めた。


――――――――今までたった独りで自分を護り続けてきてくれた兄のため――――――――


自分のために傷つき。
自分のために苦労し。
自分のために自身の幸福まで捨てて。


――――――――それでも笑って自分のためにしてきてくれた兄のため――――――――


だからこそ、強くなりたい。
だからこそ、戦えるようになりたい。
だからこそ、超えたい。
この兄を。
もう護られるだけの存在になりたくない。
これからは、自分がこの兄を護り、支えていきたい。
今までもらい続けてきたものを、少しでも返したい。


――――――――だからこそ、今目の前にいる『無敵の龍』を、超える自分になりたい――――――――


言葉にできない、誰にも伝えられない。
それほどにまで、膨れ上がった想い。
その一途な想いのために、彼女は戦うことを始めたのだ。

ユリ「(こんなんじゃだめ!!こんなんじゃ、お兄ちゃんを護るどころか、護られるだけじゃない!!もう護られるだけなんて嫌!!)」
リョウ「(何を想っているのかは分からないが…随分と真摯な顔をするようになったな…)」

本来が天真爛漫で快活なため、礼節を重んじるといった部分に欠けるところが多いユリだが…。
そんなユリがこれほどに真剣そのものな表情を見せるのは嬉しくもあり、寂しくもあるリョウだった。
そんな中…


パチパチパチ…


ユリ「!?」

閑散とした…それでいて神聖とも言えるであろう雰囲気を壊す拍手。
そこにいるのは…。

「二人とも、いいファイトだったぜ」

夏の快晴の時の太陽のように陽気さに満ちた表情をその端整な顔に貼り付け。
煌くような腰の下まである長い金色の髪を軽く揺らし。
重厚で屈強な…それでいて無駄のないモデルのようにシャープな体。

ユリ「テリーさん!!」

テリー・ボガード。
このサウスタウンの帝王とまで呼ばれたギース・ハワードを倒した英雄。
そして、『伝説の狼』とまで呼ばれるほどの流浪の格闘家だ。

リョウ「なんだ。人様の稽古を覗き見だなんて趣味が悪いな」
テリー「よく言うぜ。俺が見ているの知ってて無視してたくせによ」

気さくに笑いながら語り合う二人。
出会ってからの時間はそれほどでもない二人だが…。
まるで何十年も付き合ってきたかのような自然な語らいとやりとり。

ユリ「え?テリーさん…ずっと見てたの?」

しかし、ユリはある一点のことに思考を奪われていた。
そう――――


――――――――この兄との稽古…いや、戦いをずっと見られていたということに――――――――


テリー「おう、見てたぜ。ユリちゃんすげえ上達したな」

思考が定まりきらないところに自分に向けられた言葉。
『伝説の狼』から、一人の格闘家への。

ユリ「え?…ホントですか?」
テリー「ああ、ホントホント。こりゃあ、この『無敵の龍』を超える日も近いんじゃねえかな?」
リョウ「何を言ってる。ユリなんぞまだまだだ」

相変わらず武骨で辛口な兄の評価。
でも、その兄と並ぶほどの『伝説の狼』からの高評価に、自然とユリの顔が緩む。

ユリ「そっか…上達してたんだ。私。よーし!もっと頑張るぞー!!」
テリー「そうそう、その意気だぜ……(フッ)」
リョウ「………(フッ)」