二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
ただのものかき
ただのものかき
novelistID. 23333
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

マリーの想い、テリーの本質

INDEX|1ページ/5ページ|

次のページ
 
「……いつまで、ついてくるんだ?……」

煌く太陽の光に照らされる、ひたすら広大な景色の中の一本の道路。
周囲は山と森に囲まれ、歩く先には地平線。
文明開化されて利便性に満ちた都心から離れ、そんなものとはまるで縁のない風景。
自動車すらほとんど通らない道をひたすら歩く二人の人影。
そのうちの一人が、その口を開き、言葉を音にする。

「べ、別にいいでしょ?私の勝手じゃない」

声かけられたもう一人のつっけんどんな返し。
肩口までの美しく煌く真っ直ぐな金髪(ブロンド)。
今この空を染めている澄んだ蒼を思わせる深蒼の瞳。
顔立ちは若作りだが、非常に整っている。
スタイルも非常によく、街中を歩いていれば誰もが振り向くであろう美しい容姿。
そんな女性として極上の容姿だが、実際には危険と戦い続ける一介のエージェント。
ブルー・マリー。
とある格闘大会の常連でもあり、屈指の強さを誇る凄腕のエージェントだ。

マリー「そういうあなたこそ、一体どこに行くつもり?」

今度は逆に目の前を歩く青年に問う。
その背中に垂れ下がった腰の下まで真っ直ぐに伸びる長い金髪。
人工物でのトレーニングではおそらく身につかないであろう、がっちりとしてそれでいてしなやかな肉体。
その豪腕から繰り出される攻撃の凄まじさは、彼女自身も何度も目の当たりにしてきている。
しかし、それでいて決して膨れ上がった感じはなく、非常にバランスのいい、モデルとしても一級品であろうスタイル。
マリー同様、澄んだ蒼に染まる瞳。
若作りだが整った顔立ち。
テリー・ボガード。
マリー同様、とある格闘大会の常連であり、毎回の優勝候補としてもあげられる孤高の格闘家。

テリー「俺?俺はアテもなく旅してるだけだぜ?そういうマリーはいいのか?」
マリー「何が?」
テリー「だってお前、いつも仕事仕事って感じするからさ。俺についてきていいのか?」

マリーのエージェントぶりを普段から見ていて知っているテリーとしては当然の疑問。
実際、その手のリスキーな依頼が途切れることはなく、彼女は常にエージェントとして陽の当たらない闇の中で戦い続けている。
人間、誰しも己の手は汚したくはないもの。
そうすることで己が身に危険が迫ることになるのならなおさら。
皮肉にも、そういった人間の醜い部分によって彼女は生活の糧を得ることとなってはいるのだが。

マリー「おあいにく様。今は仕事の方も落ち着いてて、依頼の方もさっぱりなの」
テリー「ふーん、そっか。ってことは世の中も少しは平和なんだな」
マリー「私から見れば、あなたの方が平和に見えるけどね」

言葉ではそうは言えるが、実際にはそんなことはない。
マリーもそれを嫌というほどよく分かっている。
彼は常に孤高を貫き通し、常に厳然とした世界の中に身を投じている。


――――――――弱肉強食という、厳然とした世界の中に――――――――


それだけではない。
常連として参加している大会のいざこざにも巻き込まれている。


――――――――かつて、自分が受けた依頼が元となったことも――――――――


そう、自分が原因で二度も彼は命を落とすことになりかけている。
いや、命を落としていて当然のところまで…。
その時もこれまでも表に出すことはなかったが、彼女はそのことを悔やんでいる。
それだけではない。
かつて最愛の父と恋人を失った瞬間。


――――――――あの時の絶望が、再び自分の前に甦ってきたのだ――――――――


何事もなかったかのように戻ってきたこの屈強な青年の姿。
それを目にしたとき、実感してしまった。


――――――――私は、もうこの人なしでは生きられない――――――――


表面上ではいつも通りのニュートラル(あいまい)な付き合いのままだが、あれ以来気が付けばいつでも自分の目が彼を追っている。
自分がどれほど彼に恋焦がれているか。
自分がどれほど彼を求めているか。
自分がどれほど彼を縛り付けてしまいたいのか。
日に日にドス黒い独占欲が膨れ上がっていく。
そうして膨れ上がっていく独占欲と歪んだ愛情は、もうどうしようもないところまで来ている。

テリー「そうだな…俺は、こうして旅に出てる時が一番平和だなって、実感できるよ」
マリー「え?…」
テリー「やっぱ俺って、ひとっところにじっとしてるのがすっごい苦手なんだよな。こんな風に旅していろんな世界を見に行って、その道中で強いヤツと戦って、そしてお互いに認め合って…ってのが、一番俺の性に合ってんだよな」

ハハハ、と軽く笑いながら語るテリー。
この青年は誰にでも温かく、そして優しい。


――――――――それこそ、残酷なほどに――――――――


人に優しくできても、愛することはできない。
そして、人に愛されることもできない。
彼の周りには、常に誰かがいて、常に人に囲まれている。


――――――――そう、見える――――――――


でも実際には、今の彼女と同じように、常にニュートラルを保とうとしている。
まるで、そうするのが当然というかのように。
「友人」というラインまでは気さくに、気軽に踏み込んでくる。
でも、そこまで止まりなのだ。
それ以上の関係を求めることをせず、また、踏み込まれることを許さない。
だからこそ、人から向けられる愛情に、残酷なほどに鈍感なのだ。


――――――――今の自分も、そう――――――――


今彼が軽い感じで語ったことは、全て真実。
でもその真実は、同時に特定の人間を作らないことを意味している。
彼は、自分で自覚することのないまま、生涯をニュートラルで終えることになるだろう。
彼に愛情を抱いているのは、決して自分だけではない。
以前までなら、そんな彼の生き様がとても輝いて見えた。
でも、今はそういう彼の本質が疎ましい以外の何者でもなくなっている。
もう自分は、彼の翼をもぎ取ってでも、自分のそばに縛り付けていたい。
歪んだ愛情は、もう歯止めの利かないところにまで来ている。

マリー「あなたねえ…そんな生き方してて、本当に大切な人が現れた時どうするのよ?その人にまで、こんな生活させる気なの?」

これは自分の本心から出た言葉。
彼の生き方は、おそらく彼以外には真似できない。


――――――――なぜなら、それが「テリー・ボガード」という個性であり、人となりだから――――――――


だからこそ、人が彼に合わせることなどできない。
彼に、自分のところまで降りてきてもらうしかないのだ。
それを、彼は分かっているのか。
そんな想いから出たさりげない疑問。
しかし、彼は―――――――

テリー「う~ん…俺には、自分が腰を落ち着けて誰かと暮らす、ってのが想像すらできねえんだな」
マリー「はあ?」
テリー「なんていうか…俺は一生このままなんだろうなって…俺にとっての大切な人ってのは、もういねえんだろうな…って」

一途な想いから現れたマリーの疑問に対するテリーの答え。
それは、想像を絶するほどに残酷なものだった。
なぜ彼がこれほどまでに孤独であろうとし続けるのか。
マリーは知らない。