懐柔しようとしてみてよ
甘く見られるのはいい気分ではない。あからさまに弄ぼうとされるのも。僕が何をしようが(たとえ彼の言うとおり露骨な誘惑をしかけようが!)この男はそれに心を乱されるなんてことはないはずだ。籠絡される気もないくせに、自分を落とすために手管を遣って見せろだなんて巫山戯ている。
撥ね除けられた手を振って、やっぱり君は潔癖だね、と鏡君は笑った。僕はそういうことではないと言いかけて止めた。これ以上彼と話していたら、こちらまでおかしくなりそうだったからだ。
作品名:懐柔しようとしてみてよ 作家名:蜜虫