こらぼでほすと 留守番9
えぐえぐと誰かの泣いている声が、耳に聞こえて、慌てて目を開けたら、あんまり見たくない映像だった。
「・・・え・・・」
「あっ、起きちゃダメっっ。アスランっっ、アスランっっ、ドクターはっっ。」
「まだ、だ。キラ。・・・・ロックオンさん、起きないでください。まだ顔色が良くない。」
えぐえぐ泣いてたのは、天然電波の大明神様で、その傍にはアスランも居る。えーっと、なんで、こんなことになったっけ? と、ぼんやり考えて目を閉じたら、また、えぐえぐと泣く声がする。
「・・・僕・・・刹那に約束したのにぃぃぃ・・・・まだ帰ってすぐなのにぃぃぃ・・・・どうしよう? アスラン。ロックオンさんが寝込んだら、僕のせいだ。」
「・・・キラ・・・自分を責めないで。大丈夫だからね。・・・俺が、二度と来れない様にしてしまうから安心して。」
アスランの言葉に、ようやく、事態を把握した。起き上がろうとしたら、キラに飛びつかれた。
「ダメだってばっっ。」
「・・・あのさ、キラ。」
「うん。」
「・・刹那には内緒な?・・・」
「うん。」
「あいつらは? 」
「境内で転がってた。たぶん生きてるよ。・・・僕、破壊して来ようか? 」
「・・はあ・・・」
破壊って、MSじゃあるまいし・・と、ロックオンは電波な言葉に笑ってしまう。どうやら、自分は無事に回収してもらえたらしいし、ストーカーとイっちゃってる人も、半殺しになった様子だ。
「ロックオンさん、すぐにドクターが来てくれますから、そのまま横になっててください。」
「・・・悪い・・・手間かけた・・」
「とんでもない。まさか、あなたにまで手を出すとは、俺たちも予想してなくて、すいませんでした。」
「・・いや・・俺もびっくりした・・・」
まさか、自分が拉致対象になるとは思わなかった。どんなことになってたんですか? というアスランの問いかけに記憶していることは、ぶちまけたのだが、喋っている言葉で自分が余計に弱る気がする内容だ。
「クジョーさんって人にに間違われたわけですか? 」
「・・うん・・・たぶんな・・・でも、その人、どう考えても女性だと思うんだけどさ。」
「まあ、『あれ』の親友ですから。」
「・・うん・・・あの、CBには絶対に連絡しないでくれ。」
「ええ、わかってます。」
「もう喋らないでっっ。」
キラが、口元を塞いでいる。それから、顔を覗かせて、刹那みたいに、じっと睨んでくる。その手を退けて、ちょっと微笑む。
「・・ごめん・・・キラ。大丈夫だ。ちょっと貧血してるだけだから。」
「もういいってばっっ。・・・僕こそ、ごめんなさい。やっぱり、あの時、日本海溝辺りに沈めるべきだった。刹那のママにまで、ひどいことするなんて、グラハムさんを見損なった。」
ぷんぷんと怒っているキラに、ちょっと気持ちが落ち着いた。こちらの側に来たのだと理解しているつもりだったが、どこかで、まだ、あちらの気分であったらしい。キラが、泣くほど心配してくれると思わなくて、そういう意味では感動ものだ。キラにとって、自分は刹那のための部品みたいなものだと認識していたからだ。そうではなくて、キラは、手元にいるスタッフについての責任は感じているのだとわかった。天然電波なので、普段の行いに、それらは現れていないが、ここでようやく理解できた。
「・・・キラ・・腹減ったら、台所に弁当があるから・・食えよ。俺の分やる。」
「う? お弁当? 」
「ああ、悟空のを作るのに、ついでに、作ったから。」
「えーーーーずるいっっ。悟空、そんないいもの作ってもらってるの? ねーねー、ロックオンさん、僕んちにも住んでくれない? 」
えぐえぐと泣いていたキラは、すぐに、ウキウキとした様子で、おねだりする。それが、おかしくて、チョンと、その額を指で押した。
「・・・おまえさん、欲張りだな? アスランがいるだろ?」
「アスランは恋人でママじゃないもん。」
「キラ、そういうの食べたいなら、実家に帰省すればいいだろ? カリダさんのお弁当もおいしいじゃないか。」
実家があって両親が健在のくせに、キラは、そんな我侭を言う。
「だって、刹那のママは、僕のママでもあるんだよ? アスラン。それなのに、僕だけ食べられないなんておかしいよ。」
「そういうもんかなあ。・・・ロックオンさん、ここの留守番が終わったら、うちにもいらしてください。」
「なんでいちゃいちゃ新婚さんのとこへ居候せにゃならんのだ。・・・おい、ドクターがいらっしゃったから出て来い。」
外から、虎がやってきた。背後には、ドクターもいる。御願いします、と、虎は案内して部屋に入ってくる。医者にも、ここまでの説明を求められて、同じ話をする。二度目も、なんていうか、気が滅入る。
「あの表に転がしてるのに拉致られそうになったわけか? ロックオンくん。」
「はあ。」
「あれ、一服盛ってあげようか? 何がいい? 」
「はい? 」
「なんなら、ウイルスとかでもいいよ。研究所から持ってこさせよう。大腸菌の強力なやつでも飲ませてやろうかな。」
「・・・ドクター・・・」
ドクターは本気だ。そりゃそうだろう。やっと風邪が治って体調も回復させたのに、すぐにダウンさせられて、成果を台無しにされたから怒っている。
「ドクター、その話は後で、じっくりとやりましょう。とりあえず、ママのほうを。」
わかっているよ、と、ドクターも簡易の検査キットを取り出して、診察する。血圧は低下しているが、それほど悪い数値ではない。ナマケモノモードで二日はいなさい、と、診断結果を口にする。
「後でクスリを届けさせるから、それは、きちんと飲みなさい。今夜あたり、熱発するかもしれないが、それ位で済むはずだ。」
持ってきていた安定剤だけ先に飲ませてしまうと、診察は終わりだ。無理は禁物だ、と、もう一度、釘をさして部屋を出る。虎のほうは、そのまま居座るように、布団の横に座り込んだ。
「酷い目に遭ったな? 」
「・・はあ・・・」
「まさか、ママに横恋慕するヤツがいるとは思わなかった。」
「俺も、ですよ。」
「おまえ、しばらく、トダカさんとこへ行くか? 」
寺は、とてもオープンな場所だ。ある意味、出入り自由であるから、侵入も容易い。それなら、トダカのところのほうが襲撃される心配はないだろう、と、虎は言う。ここで寝込んでいると、悟空に迷惑がかかるだろうが、あまり動きたくないとも思っている。今のところ、トダカの静かな家より、ここにいるほうが気分が楽なような気がするのだ。
「・・ここがいいな・・」
虎が問うことに、素直に自分の意見を述べた。じじいーずには、思うことを素直に吐き出せる。
「わかった。ここで、ぐだぐだしていろ。」
虎のほうも、わかっていたのか、頷いた。
「・・・すいません・・・なんか、静かなとこだと・・気が滅入りそうで・・」
「そうだな。今のお前には、ここのほうがいいかもしれない。」
とりあえず、休め、と、虎が無言になると、ロックオンのほうも目を閉じる。効き目の早い安定剤を投与されたから、すぐに寝息に変った。それを確認してから、虎も部屋を出た。
「・・・え・・・」
「あっ、起きちゃダメっっ。アスランっっ、アスランっっ、ドクターはっっ。」
「まだ、だ。キラ。・・・・ロックオンさん、起きないでください。まだ顔色が良くない。」
えぐえぐ泣いてたのは、天然電波の大明神様で、その傍にはアスランも居る。えーっと、なんで、こんなことになったっけ? と、ぼんやり考えて目を閉じたら、また、えぐえぐと泣く声がする。
「・・・僕・・・刹那に約束したのにぃぃぃ・・・・まだ帰ってすぐなのにぃぃぃ・・・・どうしよう? アスラン。ロックオンさんが寝込んだら、僕のせいだ。」
「・・・キラ・・・自分を責めないで。大丈夫だからね。・・・俺が、二度と来れない様にしてしまうから安心して。」
アスランの言葉に、ようやく、事態を把握した。起き上がろうとしたら、キラに飛びつかれた。
「ダメだってばっっ。」
「・・・あのさ、キラ。」
「うん。」
「・・刹那には内緒な?・・・」
「うん。」
「あいつらは? 」
「境内で転がってた。たぶん生きてるよ。・・・僕、破壊して来ようか? 」
「・・はあ・・・」
破壊って、MSじゃあるまいし・・と、ロックオンは電波な言葉に笑ってしまう。どうやら、自分は無事に回収してもらえたらしいし、ストーカーとイっちゃってる人も、半殺しになった様子だ。
「ロックオンさん、すぐにドクターが来てくれますから、そのまま横になっててください。」
「・・・悪い・・・手間かけた・・」
「とんでもない。まさか、あなたにまで手を出すとは、俺たちも予想してなくて、すいませんでした。」
「・・いや・・俺もびっくりした・・・」
まさか、自分が拉致対象になるとは思わなかった。どんなことになってたんですか? というアスランの問いかけに記憶していることは、ぶちまけたのだが、喋っている言葉で自分が余計に弱る気がする内容だ。
「クジョーさんって人にに間違われたわけですか? 」
「・・うん・・・たぶんな・・・でも、その人、どう考えても女性だと思うんだけどさ。」
「まあ、『あれ』の親友ですから。」
「・・うん・・・あの、CBには絶対に連絡しないでくれ。」
「ええ、わかってます。」
「もう喋らないでっっ。」
キラが、口元を塞いでいる。それから、顔を覗かせて、刹那みたいに、じっと睨んでくる。その手を退けて、ちょっと微笑む。
「・・ごめん・・・キラ。大丈夫だ。ちょっと貧血してるだけだから。」
「もういいってばっっ。・・・僕こそ、ごめんなさい。やっぱり、あの時、日本海溝辺りに沈めるべきだった。刹那のママにまで、ひどいことするなんて、グラハムさんを見損なった。」
ぷんぷんと怒っているキラに、ちょっと気持ちが落ち着いた。こちらの側に来たのだと理解しているつもりだったが、どこかで、まだ、あちらの気分であったらしい。キラが、泣くほど心配してくれると思わなくて、そういう意味では感動ものだ。キラにとって、自分は刹那のための部品みたいなものだと認識していたからだ。そうではなくて、キラは、手元にいるスタッフについての責任は感じているのだとわかった。天然電波なので、普段の行いに、それらは現れていないが、ここでようやく理解できた。
「・・・キラ・・腹減ったら、台所に弁当があるから・・食えよ。俺の分やる。」
「う? お弁当? 」
「ああ、悟空のを作るのに、ついでに、作ったから。」
「えーーーーずるいっっ。悟空、そんないいもの作ってもらってるの? ねーねー、ロックオンさん、僕んちにも住んでくれない? 」
えぐえぐと泣いていたキラは、すぐに、ウキウキとした様子で、おねだりする。それが、おかしくて、チョンと、その額を指で押した。
「・・・おまえさん、欲張りだな? アスランがいるだろ?」
「アスランは恋人でママじゃないもん。」
「キラ、そういうの食べたいなら、実家に帰省すればいいだろ? カリダさんのお弁当もおいしいじゃないか。」
実家があって両親が健在のくせに、キラは、そんな我侭を言う。
「だって、刹那のママは、僕のママでもあるんだよ? アスラン。それなのに、僕だけ食べられないなんておかしいよ。」
「そういうもんかなあ。・・・ロックオンさん、ここの留守番が終わったら、うちにもいらしてください。」
「なんでいちゃいちゃ新婚さんのとこへ居候せにゃならんのだ。・・・おい、ドクターがいらっしゃったから出て来い。」
外から、虎がやってきた。背後には、ドクターもいる。御願いします、と、虎は案内して部屋に入ってくる。医者にも、ここまでの説明を求められて、同じ話をする。二度目も、なんていうか、気が滅入る。
「あの表に転がしてるのに拉致られそうになったわけか? ロックオンくん。」
「はあ。」
「あれ、一服盛ってあげようか? 何がいい? 」
「はい? 」
「なんなら、ウイルスとかでもいいよ。研究所から持ってこさせよう。大腸菌の強力なやつでも飲ませてやろうかな。」
「・・・ドクター・・・」
ドクターは本気だ。そりゃそうだろう。やっと風邪が治って体調も回復させたのに、すぐにダウンさせられて、成果を台無しにされたから怒っている。
「ドクター、その話は後で、じっくりとやりましょう。とりあえず、ママのほうを。」
わかっているよ、と、ドクターも簡易の検査キットを取り出して、診察する。血圧は低下しているが、それほど悪い数値ではない。ナマケモノモードで二日はいなさい、と、診断結果を口にする。
「後でクスリを届けさせるから、それは、きちんと飲みなさい。今夜あたり、熱発するかもしれないが、それ位で済むはずだ。」
持ってきていた安定剤だけ先に飲ませてしまうと、診察は終わりだ。無理は禁物だ、と、もう一度、釘をさして部屋を出る。虎のほうは、そのまま居座るように、布団の横に座り込んだ。
「酷い目に遭ったな? 」
「・・はあ・・・」
「まさか、ママに横恋慕するヤツがいるとは思わなかった。」
「俺も、ですよ。」
「おまえ、しばらく、トダカさんとこへ行くか? 」
寺は、とてもオープンな場所だ。ある意味、出入り自由であるから、侵入も容易い。それなら、トダカのところのほうが襲撃される心配はないだろう、と、虎は言う。ここで寝込んでいると、悟空に迷惑がかかるだろうが、あまり動きたくないとも思っている。今のところ、トダカの静かな家より、ここにいるほうが気分が楽なような気がするのだ。
「・・ここがいいな・・」
虎が問うことに、素直に自分の意見を述べた。じじいーずには、思うことを素直に吐き出せる。
「わかった。ここで、ぐだぐだしていろ。」
虎のほうも、わかっていたのか、頷いた。
「・・・すいません・・・なんか、静かなとこだと・・気が滅入りそうで・・」
「そうだな。今のお前には、ここのほうがいいかもしれない。」
とりあえず、休め、と、虎が無言になると、ロックオンのほうも目を閉じる。効き目の早い安定剤を投与されたから、すぐに寝息に変った。それを確認してから、虎も部屋を出た。
作品名:こらぼでほすと 留守番9 作家名:篠義